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やがて魔女へ至る  作者: あいおお
第一章「幼年期編」
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1

  魔国歴425年


 初夏の日差しが降り注いでいる。

 涼やかなアレスフォート領において、夏は過ごしやすい季節だ。

 

「まだかな~?」

 朝からソワソワと落ち着かなかった。

 今日は私の5歳の誕生日。

 しかも、今日は待ちに待った約束の日だ。

 そう、なんと今日からついに実際に魔法の杖に触って、魔法を練習していいと言われていた日なんだ!

 ものごころ付いた時には魔力を感じることが出来た。

 すぐに体の中にある魔力を動かせるようになった。

 父様や母様はとっても驚いて喜んでくれた。

 そして初めて父様に魔法を見せてもらった時の衝撃は今も忘れられない。

 ただただ圧倒的で綺麗だった。

 自分も早く魔法を使いたい。

 もちろんすぐさま父様にお願いしたけど、危ないから基礎が出来るまではダメだと言われた。

 その日から必死になった。

 魔力をより感じる練習。

 体の中の魔力を自由に動かす練習。

 そして家庭教師の先生に文字を教えて貰っていろんな魔法の本を読んだ。

 同じくらいの年の子供は「遊び」という物をするらしいけど、そんな物には一欠片の興味も抱けなかった。

 魔法のことを考えるのが、何より楽しかったから。

 そしてついに父様の許可が下りたのがつい先日。

 とうとうこの日がやって来たんだ!


「ヴィラ、これが練習用の杖だよ」

 庭の演習場に出た父様は大きな杖を渡してくれる。

 魔力を通しやすい木で出来た杖の先に丸い魔結晶が埋め込まれた子供用の魔法杖だ。

 5歳の私にはちょっと大きい。

 子供用とはいえ、普通は7~8歳位から使い始める物らしいので、背の高さと同じくらいある。

「わっとっと」

 少しふらついたけど、両手でしっかりと持って構える。

「じゃぁまずは父様が見本を見せるからね。最も簡単で、そして最も必要とされる魔術師の基礎魔法、発光の魔法だ」

 父様は両手で杖を構えた。いつもは片手で持っているので私に合わせてくれているのだろう。

「まずは魔力を手に集め杖に流す。この木はとても魔力を通しやすい木だから、手の延長のような感じで魔力が流れていくのが分かると思う。そして魔力が魔結晶に到達すると結晶が触媒として作用し現象に変えることが出来る。それを言霊で補助することによってより思い通りの魔法を発生させられる。難しかったり強力な魔法は結晶を適した物にしたり、杖に補助細工をする必要があるが、初歩の魔法なら特に無くても大丈夫だ」

 そういうと魔力を杖に流し、

「ルミリア!」

 父様が呪文を唱えると魔法結晶が光り輝いた。

「わぁ!」思わず拍手する。

「これが光の基礎魔法だよ、ヴィラ。

 ちなみにルミリアは光を意味する古代魔法言語だけど、お勉強をちゃんとしたヴィラは知っているね?」

「もちろんです、父様!」

 胸を張って答える。

「じゃぁヴィラ、やってごらん」

「はい!」

 ついに、ついに魔法が使える・・・

 心臓がバクバクして止まらないけど、ゆっくり深呼吸する。

「まず、杖に魔力を流して・・・」

 自分を落ち着かせるように言い・・・

 

 魔力が杖に吸い込まれるような感覚があった。

 ピキッ

 魔結晶が音を立てた。

 そして


 結晶は塵となって崩れ落ちた・・・

 



「・・・えっ?」

 言葉が続かない。

 頭は真っ白になっている。

 それは周りも同じようで、誰もが呆然としているようだ。


 一番に我に返ったのは父様だった。

「どうやら壊れかけていたようだな。代わりの物を用意しよう」

 そう言うと自ら杖を選んできてくれた。

「この杖なら大丈夫だ、もう一度試してごらん」

 恐る恐る手を伸ばす。

「深呼吸して・・・

 そう、ゆっくり魔力を込めるんだ」

 今度こそ失敗したくない、慎重に魔力を込める。


 ピキッ


 パリンッ


 また砕け散る。


 ガクガクと体中が震える、冷や汗がだくだくと流れる。

 目眩がしたかと思うと、一筋の涙と共に意識を手放していた。



 そこから先は激動だった。

 目を覚まし大泣きする私を慰めてくれた両親。

 大人用の練習杖や果ては本番用の実戦杖まで色々試したりしたけど結果は同じ。

 高名な魔法医にも見てもらった。

 しかし原因は不明、こんな症状は聞いたことも無いという。

 果ては、魔結晶を壊してしまう呪いじゃないかとさえ言われた。

 これには流石に父様が怒ってくれたけど、自分でもそう思い込みたくなってしまう。

 しかし、魔力の扱いが下手くそなせいだと自分に言い聞かせ、より一層魔力を感じ操作する練習にのめり込んだ。


 だって、どうしても魔法を使いたいんだもん!

 


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