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本当の世界  作者: N
4/7

コロナウィルス

その日、Nは目覚ましよりも早く目が覚めた。


食事を済ませ、身支度を整え

リビングの椅子に座り少し考えるN。


本当に妄想なのかを考えようとしたのだが

Nの無意識はすでに妄想だと決めつけているようで

もし手術とかになったらお金がかかるな、とか

仕事で迷惑をかけてしまうな、とか

現実的な不安ばかりが頭の中を駆け巡った。


時間になり出かけようとして

玄関においたはずのマスクがないことに気がついた。


しまった、と思った。


昨日バタバタして帰ってきたから

会社に忘れたに違いない。


買い置きがちょうど切れている。


コンビニまでは少し歩くが

そこまではマスクなしで行かざるを得ない。


まあ一人だし、外だし、さすがにいいだろう。


コンビニにも最近はマスクは必ずあるから

そこで手に入らないなんて事はないはずだ。


Nはそう思い、マスクをせずに家を出た。


まだ七時過ぎだが、ちらほら人通りはある。


自分だけでなく、マスクをせずに歩いている人がいる。


ほら、そんなに気にしなくてよかったじゃないか、


結構みんなマスクをしていない。


あの人も、あ、あそこの人も。


あれ、みんなマスクしていないや。


まあ朝だし、外だし、そういう事もある。


マスク生活がもう何年も続いてきたから

そろそろマスクなしにしてもいいかもしれないな、

と思っていたところだったので

Nは少し気が楽になってコンビニに入った。


いつもは山積みのマスクが

最後の一枚になっていた。


おお、ギリギリセーフだ。


マスクがないと、病院に入れないかもしれない。


マスクを買って装着するN。


外に出て最寄りのバス停に向かう。


病院は、会社より近くてバスで十分のところにある。


バス停にはすでに何人か並んでいる。


よく見ると、誰もマスクをしていない。


今からバスに乗るのにマスクしてないのか。


まあ乗るときにすれば問題ないか、

とマスクをしていない人々に対して思うN。


バスが来た。


結構混んでいる。


バスに乗ってNは驚いた。


誰もマスクをしていない。


いや、前の席に座っているおばさんが一人、

そしてN自身の合わせて二人だけがマスクをしていた。


窓から外を観るN。


行き交う人々も誰もマスクをしていない。


背筋が寒くなるN。


まさか。


コロナウィルスも俺の妄想だというのか。


だとしたら、俺の脳は相当やられているに違いない。


一刻の猶予もない。


今日、病院の予約をしておいてよかった。


明日だったら大変なことになっていたかもしれない。


世界の変化に対し、疑問を持つよりも先に


自分の脳の正常さを疑うようになったNは


怯えながらも最寄りの総合病院に着いた。


午前中に脳神経内科、午後は心療内科に行く。


きっと今日で解決するに違いない。


Nは待合室で、

不安と安心が交互に訪れる奇妙な感覚で

自分の名前が呼ばれるのを待った。

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