「なんだって」突発性難聴になったので片耳が聞こえない人の世界を解説する
片耳が聞こえなくなった。耳鼻科では突発性難聴と言われた。
難聴というが聞こえない。あと耳鳴りもある。
まあ、そういう人の解説だ。
片耳が聞こえない、聴き取り難いなどの症状では次の3つがある。
1.死角あり、片耳しか聞こえない
2.方向不明、距離感はある
3.音源の分離・抽出が出来ない
1.は当然。聞こえない方は死角になる。私の例では左耳が全く聞こえない。
室内であれば、反響があるので死角側からの音も聞こえたりする。
だが、外では音が拡散するためによく聞こえないのだ。
この状態で初めて外を歩いたとき、聞こえない左後方から車が来たが、通り過ぎて驚くまで気付くことがなかった。
また聞こえる耳を下にして寝ると起きれない。目覚ましに気付かない。
私の場合、右を下にして寝たときに最初家族に起こされるまで気付かなかった。
電話も聞こえる方が塞がるために、他と同時には行動できない。
蚊に煩わされることが半減したが、聞こえない側に刺されることが増えた。
私は耳が寝ているので、後方もそこまで死角というわけではない。
聞こえなくなった当初は、頬と鼻を結んだところを境に聴き易さが変わっていた。
音の回折現象があるため耳の前方を境にするわけではない。
慣れてくると聞こえない左側の頬辺りであっても、右の耳で聞こえたりするようになった。
音源が分かっているからという認識も手伝っているのかもしれない。
しかし聞こえない左の耳付近の音は本当に聞こえない。
最初、耳かきを耳に入れたとき、鼓膜突き破らないか、恐怖した。
音が聞こえないというのはそういうことだ。
2.室内で、電子音などの発生源を探そうとすると音の反響で分かり難い。連続で音が発生していれば、まだ頭を動かして音の強弱を聴き比べることも出来る。しかし、大きな音が一回だけとかだとどこから聞こえたのかが分からない。
周期的な音、エンジンとかモーターとか、あと高音もどこに音源があるのか判断することが困難だ。
診察室からの呼び出しの声もどこから聞こえたのか、分からなかった。
外だと拡散して聞こえにくいために反応が遅れたりもするだろう。
音を聞く際、周波数毎に空気中での速さが違うらしく、距離というものをなんとなく理解していた。
他の人も普通に音の大きさだけでなく、音の音色なんだろうか、で判断しているはずだ。
私の場合、聞こえる方からの音が――脳を経由でもしたのかよく分からないが――聞こえない方でノイズの音量が増加して聞こえたりする。状況によって変化したりもするし、再現性も怪しいために正しいとは言えないが、遠くの大きな音が聞こえないはずの左の耳でノイズとして発生したときに耳元で聞こえたように感じた。周波数などで分解して音を聞こえない耳の耳鳴りとして発生させたわけではないために、高音低音など全て一緒に大きく聞こえたために近くだと判断したのだろう。またこのとき、右耳で聞こえた音よりも左耳での音に早く反応した。振り返って思い返しても右耳に先に聞こえたと認識はしていた。その音は遠くの音として認識していた。左を先に反応したのは、大きい音に早く反応するという効果に近いものと推測される。大きい音=危険で、より近い音=より危険、と判断される音に反応するようになっているのかもしれない。
3.両耳が聞こえる人にこのことを理解してもらうのは難しい。
例えば立体視するために黒い丸を二つ離して置かれているのを、(● ●)、一つに見えるようにすると図形などが浮き上がって見える物がある。両眼視差で一致する図形を僅かにずらしているからだ。
このとき片目で見ても、または二つの黒い丸を一つに見える様にしていない状態でも、立体には見えない。
これが片耳で音を聞いているような物だと思われる。音がのっぺりとした一様な感じで、誰かの声などを集中して聞く、というようなことが出来ないのだ。
両方の耳から聞こえる音のズレを利用して、音を立体的にし、それで個別の音を抽出も可能にしているのではないかと考えている。人の脳なのか、動物の脳なのかは不明だが。
そのため片耳で同じような大きさの音が雑音として存在している状況では、相手が何を話しているのかが、聞き取れない。多分普通の人が、周囲の雑音がある状況で聞き取れる大きさを大分下回る。
「え、なんだって」というような難聴になるわけだ。
立体視出来ていない時の図形を見ても、それがどんな図形なのかを、その状態で見極めろと言っているようなことを言われても、出来ないものは出来ないのだ。
少しは聞こえる、とか補聴器などで聞こえる人がどのように聞こえるのかまでは経験していないので分かり兼ねる。
片方が全く聞こえない場合は、単一のスピーカーからの音で左右の方向を聞き分けろ、という無茶振りを言っているようなもの。その状況で話し声と雑音が同じ大きさで聞き取れと言われても困難さが分かるだろうか。
単一のスピーカーで録音した音を、他者が聞き分けられる程度ではないと、音を聴き取れないということを認識してほしい。
例えば電話で相手側の音がノイズ混じりで聴き取り難いというようなもの。
周囲がうるさいと相手の話声を聴き取り辛い。電話ならマイクに一番近いのが相手の声だろうけども、それでも同じぐらい周囲がうるさければ、聴き取り難いことは分かるでしょう。そういう状態が常だということを理解していただきたい。
ついでに突発性難聴とかは耳鳴り、耳鳴、という症状もついてくる。
どういう理屈なのか知らないが、聞こえない、もしくは聞こえにくくなった耳側に、ノイズが聞こえる様になる。いわゆる耳鳴りだ。
耳鳴りは非常に静かな部屋などでキーンというような感じのようなものが聞こえるアレもそうである。他にもあるけども。
音が聞こえないから、脳が作り出しているのか、何なのか。
私の場合は、ホワイトノイズ、というような感じの音が常に聞こえ、それと、電子音、風鈴のような甲高い音、澄んだ金属音、などが聞こえたり聞こえなかったり。
また拍動性耳鳴もある。たまに血流の音が聞こえる。ドクッドクッというより、ズクッズクッというようなノイズ混じりの音だ。
拍動性耳鳴は脳の腫瘍なども懸念されるような危険なものらしいが、元が別の病気がたぶん原因だから私は仕方がない。
医者はそんなこと訊いて来なかったけど。調べるまで知らなかった。
ところで片耳が聞こえない程度では障碍者などではない。
運転免許とかもいいとか。私はとても怖いんです、運転が。予想している方向からの音などではまだよいですけど、クラクションやら電子音やらの高音の純音のようなものでは、どこから音がするのか、視界などの補足がないと確認が不可能です。運転中にいきなり後ろを振り向くとか、危険極まりない。
車のエンジン音や換気扇や扇風機のモーター音など、どこから音が来るのか方向が分かりずらい。周期的な音であるために向きを認識し難いんです。
自動車の運転免許証、資格として便利で手放せない。でも世の中にこういう人がいると思うと普通の道なども恐怖の対象です。
今の所、運転する機会は回避してます。家族の運転する車に乗っているときに後ろから来た車の音の左右での違いから、心臓が跳ねて困りましたから、自分で運転する状況はハンドル操作を誤りそうでしたくない。
片耳の場合は自分の声が普通に聞こえるので、耳が遠い人のようには声が大きくなることはない。
カクテルパーティー効果なども、もしかしたら、片耳だと分からないかもしれない。本文の3.の理由から。