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強くなるために

「・・・ここは?」

「先生! アリスさんが起きました!」

 真っ白な天井、腕には点滴などの管が付いており、ただ事ではないのが見て分かる。医師から何が起きたのか聞かされる。

「あなたは生死の境をさまよっていました。彼女の助けがあと一歩遅かったら命は無かったでしょうな」

「彼女?」

「確か、あなたの弟子とか言っておりましたな」

「弟子・・・そうか、私はまた彼女に救われたのか」

 アリスの頬を一筋の涙が流れる。


「アリスさん!? もういいんですか?」

「心配をかけた。もう大丈夫だ。1ヶ月も休んでしまったからな」

「いえ、アリスさんが無事ならそれでいいんです」

「翼、世界を狙う気は無いか?」

「世界・・・ですか?」

「そうだ。私が負けたレヴィアタンは世界で権威ある七大大会の一つの覇者だ。日本の四大大会は確かに素晴らしいが、世界が相手となると事情が変わる。

 世界相手に勝った日本人は多くはいない。ましてや七大大会の制覇となると偉業だ。過去誰一人として為せなかったのだからな。それに翼は挑んで欲しい」

 突然のことに翼は驚いて言葉を失う。世界を狙う。それは日本人では誰もが出来なかったことである。女帝と呼ばれたアリスでも四大大会制覇後に七大大会に挑んで3位という成績で終わっている。

 それほどまでに世界の壁は厚いものとなっているのだ。

「アリスさんでも勝てなかった世界に私が勝てるとは思えません・・・」

「私に2度も勝った人間が言うセリフじゃないと思うがね」

 アリスは笑いながら翼の頭を撫でる。翼は顔を上げてアリスの顔を見る。その顔は自信に満ち溢れており、翼が勝つことを信じてやまないといった感じだ。

「正直、先の試合後のことが無ければ厳しいと思っていたが、会場に張り巡らされたバリアをぶち壊しレヴィアタンを退けたのを聞いて確信に変わった。翼なら世界を獲れると」

「どうしてそこまで・・・」

「翼を信じてるからだ」

 そこまで言われて翼も断り切れないといった表情でアリスを見る。そして、決意と覚悟を新たにマジックアーツに向き合う。

「あ、そうだ。前の試合でレヴィアタンは卑怯な手を使い私を瀕死にまで追い込んだ。恨むなと言う方が難しいだろう。だが、レヴィアタンとの試合では私怨を持ち込むな。

 あくまでスポーツの試合だ。戦争などではないからな。それに、私自身の手でやり返すならやりたいからな」

「分かりました。もっともっと強くなって勝ちます!」

 アリスと翼のやり取りを朱里は見守る。病弱で運動をすることが出来ず、暗かった翼はもういない。自らが憧れた人物に教えを受けて世界へ挑戦するために羽ばたき始めたのだ。

「私はお役御免かな。翼、頑張りなさい」

「師匠! どこへ行くんですか?」

「翼にはもう立派な師匠がいるでしょ。私なんかが教えるよりもずっと強くなれるわよ」

「師匠にはもっと教わりたいです」

「だから―――!」

「師匠は師匠です。アリスさんは・・・コーチって感じです。私が何もできずに沈んでいたのを助けてくれました。手を差し伸べてくれました。私の師匠は世界でたった一人です」

「翼・・・」

「私も朱里さんには翼の傍にいた方がいいと思います。彼女にとっての心の支えになる」

「アリスさん、翼・・・。ありがとう」

 そうして世界を見据えた翼の新たな戦いが始まった。まずは国内の四大大会制覇を目指す。


「魔力は自然界に存在するエナと自身の中に存在するマナが合わさることで生まれる物です。自然界のエナの相対数は変わることが無く、魔力の総量は自身のマナ量に由来します。マナが多ければ多いほど魔力は多いとされていますが、魔法の使用で空間内のエナが増えることで魔力変換に使えるエナも増えるため、魔力総量は増えるとされています。

 つまり、魔力=エナ+マナの式が成り立ち、マナが少なくともエナの増加によって魔力は増えるということですね。

 マジックアーツではそれらの駆け引きも込みで大事とされており、試合を見る際にそのことを注目しても面白いかもしれませんね」

 魔法が生まれてから学校の授業は大きく変化した。魔法を学校の授業の一環として取り入れられるようになったのだ。詳しいことは大きく知られていないが、基礎知識だけでもと学校で教えるようにしている。一歩間違えれば凶器となる魔法の危険性と可能性を教えるのが授業となっている。

「魔法は四大元素だけとされてきましたが、研究が進む過程で他にも多数の元素が発見されました。それにより区別が困難とされていた魔法が判明されるようになってきました。

 そして、元素と区別するよりも簡単に分かるように属性と呼ばれるようになりました」

 例えば、アリスは火属性。翼は雷属性というように様々な属性に分けられるようになった。それによりどの属性がどの属性に有利か不利かも発見される。

「正直、難しいことは気にする必要ありません。ゲームのRPGみたいな要素だと考えれば分かりやすいでしょう」

 授業が淡々と進み、放課後となり翼は帰宅準備をすぐにして帰ろうとする。

「翼~! 今日もトレーニング?」

「うん。ごめんね」

「そっかー。急にマジックアーツに打ち込んだと思ったら、四大大会に出たいって言った時は驚いたけど本気なんだもん。頑張って!」

「ありがとう、茜。今度、駅前のクレープ奢るね」

「約束だよ?」

 茜に別れを告げて翼は家に帰る。そして、家に設置してある移動魔法でトレーニングをしている場所へと一瞬で移動する。

「遅くなりました!」

「時間は気にしなくていい。学生なんだからもっと友達と遊んでからでもいいんだぞ」

「いえ、もっと強くなりたいので」

「・・・そうか。それじゃ、基礎訓練から」

「はい!」

 魔力には流れがある。その流れをつかみ取り、空間のエナと合わさった時に最高の魔力が生まれる。それを読み取ることと魔力を練り上げて魔力の総量を上げることが基礎訓練となるのだ。

「魔力は生き物のようなものだ。毎秒性質が変わる。属性の根幹は変わらないがご機嫌取りは大事だ。そう女性のようにな」

「何でいちいち例えが変なんですか」

「そう言うな。・・・魔力が乱れてるぞ」

 目を閉じ、集中して魔力を留まらせる。荒々しくなっていた魔力は落ち着き、体の周りで綺麗に留まっている。この状態を続けることで魔力総量を向上させることが出来る。

「普段は垂れ流しの魔力をとどまらせることで自然と魔力総量が増える。筋トレで筋肉痛になるようなもので、慣れない魔力を留まらせるということをするため、容量が勝手に増えるといった感じだ」

「ふぅ・・・私の魔法は燃費が悪いから魔力総量を増やす必要があるんですよね」

「その通り。各魔法によって消費魔力が違う。それは人によっても変わり、魔力コントロールが上手い人ならば同じ魔法でも魔力の消費が違う。

 例えば、私の魔法であるフェニックスは消費魔力が100だが、翼の魔法は消費魔力が500~600ほどとなっている。およそ5倍以上の差がある以上、魔力がいかに多く必要かというのが分かる。

 まぁ、私が翼の魔法を使用したら消費魔力は1000以上になるだろうが」

「元々、器用じゃない方なので魔力コントロールを身につけろって言われるよりも助かりました」

「まだ14歳なのに小手先の技術なんて身に着ける必要はない。成長し続けるのであれば、更に伸ばすトレーニングをしてあげればいい。圧倒的な魔力でねじ伏せる方が面白いだろ?」

 翼とアリスがトレーニングを続けていると来訪者が現れる。

「その子が貴方の未来を賭してもいいと思える子ですか」

「高円さん。いらっしゃるのなら言ってもらえれば出迎えたのに」

「気にせずともいいですよ。トレーニングの邪魔をする訳にはいきませんので」

「アリスさん。この方は?」

「徳川 高円さん。日本のマジックアーツ協会の理事長だ」

「そんな偉い方が!? 立花 翼です」

「立花 翼・・・ふぅむ。彼女の大切な存在であるにも関わらず女帝に預けているとなると、よほど信用したのかはたまた・・・」

「どうかしましたか?」

「いや、何でもないよ。女帝の弟子も見れたことだし私はこれで失礼するよ。大会で会えるのを楽しみにしているよ」

「ありがとうございます!」

 徳川 高円はその場を後にして立ち去る。意味深なことを口にしていた高円をアリスは気にしつつもトレーニングを再開する。

「アリスさん、そういえば四大大会に出て勝つことが最初の目標になるんですよね」

「そうだ。国内で最高峰の大会である四大大会で勝つことすら出来ないなら世界トップの大会で勝つことなんて出来ない。まずは四大大会の制覇が目標だ」

「四大大会の制覇・・・」

「まぁ、その前に前哨戦である大会に勝たないとだがな」

 目標を新たにして翼とアリスはトレーニングに熱を込める。四大大会への前哨戦の大会が目前へと迫る。

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