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王者と少女の出会い

 ―――彼女は英雄となる


 マジックアーツと呼ばれる魔法と格闘技が融合した競技が出現する。その競技は世界で大きな人気を呼び、世界中の人々が参加する巨大な物となった。

 四大大会と呼ばれる格式高い大会も出来、様々な者が挑戦した。歴代の王者には人気から英雄と呼ばれる者まで出てくるほどであるが、現在の絶対的王者は格が違った。

『四大大会の一つであり、年内最後の大会であるガイア。その決勝戦が始まろうとしています! 年の瀬に行われるイベントでも最大級! 視聴率は驚異の100%! それほどまでに人気のマジックアーツの試合の解説をさせて頂くのは、私、アイリス=マスカレードです! よろしくお願いします!』

 解説の女性が挨拶を終えると同時に歓声が沸き起こる。そして、決勝の対戦相手同士が入場すると会場のボルテージは最高潮となる。

『さぁ! マジックアーツが誕生してから長い歴史の中で最強と言われている真紅の女帝 アリス=スカーレットの登場だ! 誰も成し遂げることが出来なかった四大大会の制覇。それだけでも偉業なのですが、今回のガイアで勝つことが出来れば、何と! 四大大会制覇3連続になります!

 あまりにも異常な記録に会場中が優勝を待ち望んでいます!』

 アリスの紹介に会場の熱気は最高潮となる。その歓声に応えるように観客席に向かって手を振るファンサービスをしたことで、歓声に黄色い声援が混じる。

『す、凄い歓声ですね・・・。これが歴代最強と呼ばれる絶対王者の人気なのでしょうか。そして、その王者に相対するは、ななな何と! わずか14歳の少女です! この大会の出場資格は14歳~となっているため最年少での出場者ということになりますが、まさか決勝まで勝ち残ることになるとは思いませんでした。

 しかし、運が良かっただけなどということはありません。四大大会は運だけで勝ち上れるほど生易しい物では無いことは皆さんもご存じだと思います。つまり、この少女は紛れもない天才少女なのです!』

 新たな英雄の誕生に期待する人間もいるが、会場とこの大会を見ている人間の大半は王者であるアリスの3連覇を見届けるのが目的である。

 この場において少女は悪役に近い空気がある。

『おっと忘れていました。少女の名前は、立花 翼。日本からの参戦となっております! さぁ、まもなく試合開始のゴングが鳴らされようとしています!!』

 アリスと翼が歩みを進めてリングの中央へと行く。そして、両者がリング中央へ到着すると目を合わせる。

「やはり何度来てもこの場の空気は良いな。まさか私の相手が少女だと思わなかったが」

「私が相手では本気が出せませんか?」

「まさか。どんな相手であろうと四大大会に出る人間は強いと思って本気で挑んでいるよ。いい試合にしよう」

「こちらこそよろしくお願いします」

 互いの拳を当てて挨拶を交わす。アリスの3連覇に期待している観客が多いアウェーの空気の中で翼は緊張を感じさせない。それどころか落ち着いている。

(14歳の少女だから緊張で体が強張っていると思っていたが杞憂だったか。今までの試合を見返したが、どこか掴み切れないスタイルだった。どんな相手だろうと私の戦闘スタイルは変わらない)

 互いが距離を取り、集中力を高める。その緊張感を感じ取り会場は静まる。そして、開始の合図が鳴る。

「炎よ、私に力を与えよ」

「こ、これが女帝の力・・・」

「さぁ、私と踊ろうか」

 炎がアリスの体に纏わりつく。その姿は伝説上の不死鳥がごとく翼などがある。その姿を見た者は平等に試合に負けている。

『で、出ましたーーー!! これが女帝のフェニックス! あまりにも美しい姿です・・・。これが伝説の魔法』

「すぐに負けるんじゃないぞ」

「そっちこそ」

 絶対王者と天才少女がぶつかる。炎を巧みに操り、翼へと攻撃を仕掛ける。一撃一撃が必殺の攻撃。その攻撃を避ける翼にアリスは驚く。

「まさか私の攻撃を避ける選手がいたとはな! ・・・なるほど。魔法で身体強化しているのか」

「恐ろしい攻撃」

『何と! あの女帝の一撃を悠々と避けています! 今までの対戦相手はあまりの激しい攻撃に避けきれずにダメージを受けていましたが、軽い身のこなしで全ての攻撃を避け続けます!』

 バチバチ・・・という音ともに翼の体が高速で移動し続ける。その移動先を予測して攻撃を繰り出しても避けられる。人間の反射神経を逸脱している。

「なるほど。雷の魔法によって身体強化をしているのか。動体視力も大幅に向上しているから私が予測した攻撃すらも、直前で察知して避けることが出来ると」

「種が分かったところで何も出来ない。こっちから今度は攻撃する」

「そうでもないさ」

 翼が防御から一転して攻撃に移る。雷の魔法によって強化された身体能力。そのスピードで一気に詰めて攻撃を仕掛ける。だが、炎の鎧によって攻撃は防がれてしまう。

「フェニックスは攻防一体の魔法。私への攻撃すらも自動で防いでくれる。さて、どうする?」

「卑怯な魔法」

「確かにそうかもな。私自身も最悪な魔法だと思うよ。いくら身体能力を強化しても体は生身。私の炎に触れればタダでは済まない。・・・拳が焼けるぞ」

 アリスの言う通り、攻撃を仕掛けた翼の拳は炎によって火傷を負っていた。その拳を見て翼は顔をしかめる。一つ息を吐き、翼は何を決意したように構える。その構えに合わせるようにアリスも構えて迎え撃つ態勢を取る。

 そして、翼の猛攻が始まる。

『な、何という攻撃でしょう。常人では見ることが出来ないほどのスピードでアリス選手へ攻撃を仕掛け続けてます。私たちは魔法によってその動きをリアルタイムで映像として捉えることが出来るので安心してください。

 しかしながら、アリス選手のフェニックスは攻防一体の魔法。攻撃すれば一撃必殺の炎。防御すれば相手の攻撃を焼き尽くす炎となります。

 映像でチラチラと見えていますが、翼選手の拳は焼かれて皮膚が剥がれてきています。それでも猛攻を止めない! 拳だけでなく全身が熱にやられて傷を負っている状況でも攻撃の手は緩むことはありません! 何という精神力でしょう。わずか14歳の少女が耐えるにはあまりにも厳し過ぎる状況でも弱さを見せません。これが四大大会を勝ち上がるということなのです!』

「いくら攻撃しても無駄だ。私の鎧は消えることはない」

「それはどうかな」

「・・・分かっている。狙っているのは魔力切れだろ? だが、残念ながらそれは無い。私のフェニックスは超低燃費であるため、攻撃と防御をし続けても魔力はほぼ減ることは無い。

 もう勝ち目は無いんだ」

「王者でありながら挑戦者に対して諦めろという言葉。バカにしないで! 私は勝つためにこの場に立っている。最後に倒れるまで勝負は終わらない!!」

 翼の攻撃が激昂と共に激しさを増す。それと同時に受けるダメージも大きくなっていく。・・・だが、止まらない。その姿にアリスは考えを改める。

(私は相手のためと思って言った一言が逆に相手を傷付けていたのか。それほどまでにこの少女は強い)

「はあああぁぁぁーーー!!」

『繰り返される攻撃・・・。しかし、アリス選手には届きませ―――いや、これは!!』

 実況の言葉と同時に観客席からどよめきが起こる。炎の鎧によって攻撃が防がれていた翼の攻撃。その攻撃がアリスを捉えたのだ。

「がはっ! ば、バカな。私の鎧を突き破るだと」

「はぁ・・・はぁ・・・どうだ!」

『何ということでしょうか! 一方的に思えた試合は突如としてひっくり返りました! それにしてもなぜ翼選手の攻撃はアリス選手の鎧を破ってダメージを与えたのでしょうか』

 アリスは周りを見てその原因を把握する。

「空気に雷が帯電している・・・。なるほど。自身に纏わせた雷が動き回ることで空気中に帯電。その電気を更なる自身の力とすることで私の鎧の自動防御の速度を追い抜いたのか。なんて恐ろしい少女なのだろうか」

『一見、意味が無いかと思われた攻撃でしたが、そのような効果があったとは! 不意の一撃と翼選手の強化された一撃によってアリス選手は大きくダメージを受けました。

 このまま試合はどうなるのでしょうか!』

「いつ以来だろうか。私が本気でマジックアーツを楽しいと思えたのは。感謝するよ。小さき英雄よ」

「まだ勝つ気になるのは早いですよ」

「ふふふ・・・そうだな! 行くぞ!」

「はい!」

『再び両者が激突するー!! 女帝 アリス=スカーレットか!? 期待の新星 立花 翼か!?』

 フェニックスによる防御から攻勢へと転じたアリスの攻撃は凄まじさを増し、会場中が炎に包まれる。その猛攻を雷が如く避け続けて攻撃を仕掛ける。

 どちらが勝ってもおかしくない勝負は長くは続かない。

『・・・勝負がつきました。勝者は立花 翼!! 新たなる大会覇者の誕生です!』

「勝った・・・?」

「実感が湧かないか? だが、私はこれ以上は戦えない。意識ももう・・・」

「アリスさん!?」

「君が勝者だ。勝利を喜び歓喜しなさい」

「ありがとうございます」

『新たな英雄は伝説を打ち破り誕生しました。しかし、これは―――』

 会場は新たな英雄の誕生よりも伝説を目に出来なかったことへの消失の方が勝っていた。そして、会場の観客から出てくる言葉は14歳の少女には耐え難い物であった。

「あーあ、絶対王者の3連覇が見れると思ったのに」

「別に新しい英雄なんて望んでなかったんだけどな」

「あの女帝に勝ったなんてまぐれよ」

「運が良かっただけだろ」

『か、会場が異様な空気に包まれております。あ、翼選手!?』

 翼はその場にいることが出来なくなり、走り出した。過去に例を見ない優勝者のいない大会の閉幕であった。

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