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魔女の館  作者: 夢島 空
6/7

どっちが悪い?  前編


生贄ナンバー3


名前 : 本庄 綾

性別 : 女性

年齢 : 17歳

悩み : 学校・メンタル




魔女


トミー





私の名前は綾、本当だったら毎日学校に通っている普通の高校生だけど、今は訳あって自宅にいる。

簡単にいうと私はいじめの対象になってるってこと。

入学当時は仲のいい友達もいたし、1年生のときは彼氏だっていた。

同じクラスで名前はつよし。ちょっと不良だったけど、いつも一緒にいたし結構周りの女の子達にやきもちをやかれるくらい仲良かった。

しかし1年の終わりの頃、強が隣りのクラスの女(芳江)と浮気をし、私は2年になったと同時にいじめられるようになった。

なぜなら芳江は学校一のわがまま女で、全てが自分の思い通りにならなければ気が済まないタイプだったから、以前に強と付き合っていた私を煙たく思っていたのだ。

他の友達も皆、芳江を怖がって私に近づかなくなり今ではクラス、ううん、学年全体が芳江様という状態だった。

一方強は芳江にぞっこんで、今でも二人は付き合っていた。

私が学校に行かなくなって早3ヶ月が過ぎようとしている頃だった。家でいつものようにぐうたら過ごしながらパソコンをいじっているとどこかのサイトにたどり着いた。

それは前から耳にはしていた『魔女の館』という奇妙な占いの館の話だ。

なんともそこには魔女と名乗る女が3人いて、いきたい人が誰でも行ける訳ではないという不思議な館だった。

私は多少興味を持ち、噂のとおりのだいたいの場所に出向くことにした。

正直、何を占ってもらうとかそんな事は考えてなかった。ただなんとなく家にいるのも疲れたし、ちょうどいい機会だからっていう軽い気持ちで出向いたのだ。

そして簡単には見つからないといわれている『魔女の館』をまるで以前から知っていたかのようにスムーズにたどり着くことができたのだ。

なんとも奇妙な大きな目玉のついた扉を抜けると、中は暗く数々のアクセサリー立ちが私を迎えた。


「何・・・ここ?」


奇妙は部屋の奥から一人の金髪のカール髪の背の低い女性が顔だけひょこりと出して私に笑いかけた。


「こちらへどうぞ。」


私は突然現れた彼女に一瞬どきっとしたが、いわれるまま奥の部屋へ入った。

そこには古く木でできたテーブルと椅子が2つ相向かいに置かれ、彼女は置くの椅子へと座った。

綺麗に巻かれたカール髪は方まで無造作に伸び、前髪の隙間から隠れていた目がちらりとこちらを見たが、見たこともないような青と緑と灰色が混ざった目をしていた。


「さぁ座ってください。綾さん。」


「え?何で私の名前知ってるの?」


彼女は私の質問には答えず、机の下から大きな古びたノートを一冊取り出した。

私はいわれるまま彼女に相向かいになって座ると彼女はその大きな本を目の前で広げた。そこには何も書かれていない。


「私の名前はトミー。あなたがここに来るのを待っていましたよ。」


私は口をあんぐり開けたままトミーを見つめた。

年は同じくらいだろうか。まだ若く見えたが周りの子にはない奇妙なそして恐しい雰囲気が漂っていた。


「あなたはかなりその子を嫌っているのね。いなくなっちゃえばいいとおもってるの?」


「あの、話が見えないんですけど・・・。」


「あなたをいじめている頭の女よ。彼氏も取られたんでしょ。」


「な、なんでそれを・・・」


「この本が何でも映し出すのよ。」


トミーが広げている本に目をやると、さっきまで白紙だった本に何かしら奇妙な文字がびっしりと本に書かれていた。

私には全く何を書かれているのか分からなかったが、トミーはその文字を指でなぞりながら読み出した。


「ふふ、私あなたのその恨みの念が心地よくて好きだわ。

 その子を殺したいの?」


「芳江を?そんな殺すなんて考えたことないです。

 ただ、頭にはくるし大嫌いだけど殺人はしたくない。」


「ふふふ。じゃあどうしたい?いじめ返したい?そして彼氏を取り戻したいの?」


きっとそうだと思った。私は芳江から強を取り戻したかったし、芳江にいじめられる気持ちを思い知らせたいと思っていた。

するとトミーはまた本の次のページを開いた、するとそこにはまた奇妙な文字が次々と浮き出て文字の内容は分からないが、突然壷の絵がページの中心に描かれ周りに薬草や人の目とその下に涙のマークが描かれた。

目の前で起きている不思議な出来事がまだ受け止められずにぽかんと口を開けていると、トミーは笑って私に言った。


「ふふ。大丈夫よ。私はあなたを助けてあげるんだから、そんなに怖がらないで。」


私の考えを読み取ったようにトミーはいい、また浮き出た文字を指でなぞりながら読み始めた。


「なるほどね。

 あなたの家に何か花を挿す花瓶か壷がある?」


私は家の中を思い出した。確かにおばあちゃんが以前使っていた青い花瓶が玄関に置いてあった。


「そう、それでいいわ。」


トミーは私がまだ何も言っていないのに、思い出したと同時にそう言った。


「そしたら今夜、その花瓶の半分くらいに水を張りなさい。

 そして帰り道に川辺に咲く白い小さな花があるから、それを摘んで夜中の12時5分前に必ずその花を手でちぎって

 花瓶に入れてちょうだい。

 その時嫌いな彼女のことを思いながらね。

 あなたの念が強ければ強いほど、効果を発揮することを忘れないでね。

 そしてそのあとに12時ぴったりにあなたの涙を一滴花瓶に入れてちょうだい。

 泣けないとか心配しなくて平気よ。自然と花をちぎっている間に涙が出てくるから、一滴でいいの。

 必ず涙を一滴入れてちょうだい。

 そして次の日普通に学校に行ってみてちょうだい。全てが変わっているから。」


私はトミーの言葉を忘れるまいと頭の中で何度も何度もやり方を繰り返した。

そして一つの疑問が湧き出た。


「あの・・・芳江は死んじゃうんですか・・・?」


聞くと同時にトミーは高々に大笑いをした。


「あははははは。大丈夫よ。ふふ。

 恨んでるわりには優しい人なのね。」


「一体どうなっちゃうんですか?」


「あなたは彼女を強く恨んでいて、彼氏も取り戻したい。そうでしょ?」


「はい。」


「彼女にいじめられる辛さを味あわせたいでしょ?」


「・・・はい。すごく。」


トミーの質問に答える度に私の中で沸々と怒りがまたこみ上げてきた。


「いなくなってほしいんでしょ?」


「・・・・・・・はい。」


「それが聞けてよかったわ。ふふ。

 大丈夫死なせないから。これはただのマジナイに過ぎないわ。」


「全てが、前のように戻るんですか?」


私が聞くと、トミーは前髪で隠れていた美しい目をまた私に向け、にやりと口角をあげた。

その時ぞくっと背中に汗が通ったのが分かった。


「あなたの望むようになりますよ。全てがあなたの思ったとおりにね。

 もしそれであなたが満足したならば、御代を頂戴いたします。

 もしあなたがこれは望んだことではないと思ったならば、全ては今の通りに戻ります。

 その時は花瓶を割りなさい。全てが夢のだったかのように消えてなくなるわ。

 でもあなたのその恨みを忘れないでね。ふふふ。」


「御代って・・・御代って何ですか?」


するとまたトミーは前髪で目を隠し、下を向いて言った。見えるのは口元だけだったが、その口元はまたもにやりと笑って言った。


「取るに足らない物ですよ。ふふ。」


そしてトミーは部屋を出た。

私は固まった体を無理やり動かし、トミーの背中を追って部屋を飛び出すとなんとそこは既に入ってきた目玉のある大きな扉の前だった。

一体何が起きているのか、何が飽きたのか分からないまま、この奇妙な体験を半信半疑で思い出した。

そして何か怖さを感じながらも、家に着くまでの道のりでトミーに言われた通りの白い花を摘み取り(この花も何故か目立つように一輪、私の歩く場所を知っていたかのように咲いていたのだ)、家の玄関に飾られてた青い花瓶を部屋に持ち込み、そして私は静かに夜を待った。

それはとても静かな夜で、とても奇妙な夜だった。

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