欲深き男 中編
家に着き自分のベットに大の字で横たわりながら横目でメリーからもらった鏡を見ると、なぜだかやけに鏡が輝いて見えた。
『こんな鏡に何が映るんだろう・・・』
おもぐろに鏡に近づき中を覗き込んでみると、鏡は突然黒と白の渦巻きのようなものを映し出した。
まるで吸い込まれてしまうようだ。
すると徐々に人影が現れ始めた。小夜だ。
小夜は学校の帰り道なのか、通学かばんを肩にかけ道を歩いていた。すると突然小夜の携帯が鳴り手に取ると、小夜の顔色が一変したのが分かった。
一体何が起こっているのだろう。小夜は片手で口元を押さえ信じられない、というような顔つきで携帯を見ている。
すると次の瞬間、俺の携帯がなった。
「もしもし?」
「もしもし私。小夜。」
「ああ、今さっき見てたよ。」
「え?」
おとと、俺はぽろっと口から出てしまい慌ててごまかした。
「で、どうしたの?」
「ちょっと話があるんだけど、出てこれる?」
小夜の声はやけに真剣だった。きっと誰かからいたずらメールでもきたのだろう、俺はすぐに小夜の指定した場所に飛んでいった。
もう夕方で夕日が公園一面をオレンジ色に染めている頃、俺はメリーからもらった鏡をジーンズのポケットに入れ、小夜は一人真剣な表情でベンチに座って待っていた。
「小夜。ごめん、待たせた。どうした?」
俺はさっき鏡でみていたため、小夜がきっと携帯のことで何かいってくるのだろうと分かっていた。
すると小夜は思ったとおり携帯を俺に差出し、メールの画面を見せた。
どうせ何か俺が浮気してるだの何だののいたずらメールだろうと半分ふざけながら携帯を覗いた。
俺は心臓が止まりそうになった。
なんとそこには小夜が他の男とSEXしている画像と俺が他の女とSEXしている画像が何枚も貼り付けられていたのだ。
俺は目を疑った。あまりにもリアルすぎて本当に俺たちが他の相手とSEXしているような写真だった。
「なんだよ・・・これ。」
「しらないわ。私は浮気なんかしてないから。
あなたはどうなの?」
小夜の眼には涙が浮かんでいる。
「し、知らないよ。なんでこんな写真送っていたんだ。
てか送り主に返信してみろよ!」
「もうしたわ。だけど送信不可能だったのよ。」
メールアドレスに見覚えはない。しかも画像のみで何もかかれていない。俺はそのときふと洋子の顔がさえぎった。
俺があんぐりと口をあけていると小夜は泣きながらこういった。
「このメールが一度きてから5件連続で同じようなメールがきたわ。
もう私コワイ・・・。」
「ごめん小夜!俺ちょっといくわ!あとで電話する!」
「誠!!」
俺は小夜を残し一目散にその場を後にした。そして走りながら洋子に電話をし、洋子の家に向かった。
洋子は幼馴染で俺の家と目と鼻の先に住んでいた。
俺が洋子の家につきインターホンを押そうとしたが、はっと気づき鏡をもう一度見た。するとまた渦巻きが起こりだし、今度は洋子の姿が見えた。
何をやっているのかはっきりとはわからないが、洋子がパソコンに向かい何かをしている。
そして何かをする度にノートに書き留めているのが見える。
そのまま洋子の机の引き出しの一番上をあけると、なんとそこには数十枚もの俺と小夜の写真が見えたのだ。
『嘘だろ・・・。』
俺は言葉にならないまま鏡を見ていると洋子の家の扉が開いた。
「誠?何してんの?」
洋子は何げない顔で俺の顔を覗き込んだ。
「鏡なんかみちゃって。あはは。ナルシスト~!
んで、用事って何?」
洋子はいつも通りだ。洋子がまさか小夜に嫌がらせをするなんて考えられない。
「あのさ・・・部屋に上がっていい?」
「え?いいけど、どうしたの?彼女が見たら怒るんじゃない?」
「いいんだ。とりあえずあがらせて。」
そして俺はがきの頃よく遊びに来ていた洋子の部屋へと入った。
前と間取りは変わってないが、ベットも大きくなってピンクと白で女らしく部屋中がコーディネイトされている。
ふと机に目をやるとそこには鏡でみた通りのパソコンと机が置いてあった。
「よ、洋子さ。のどか沸いたからなんかくれない?」
「はあ?図々しい。」
そういいながら洋子は一回の台所へ降りていった。
俺は疑う気持ちと、そうでないでほしいと願う気持ちで震えながら洋子のパソコンのキーボードに触れた。
すると画面がぱっと開きそこにはパソコンのメールの画面が映った。
間違いない。
メールの一番最新の送信履歴はなんと小夜のメールアドレスだったのだ。
すると後ろから何かを落とす音が聞こえた。
「な、何見てるのよ!」
洋子は持ってきたジュースを床に落とし、パソコンの画面に飛びついた。
「何これ・・・?」
洋子の顔が一瞬で青ざめた。
「本当にお前だったのかよ・・・。お前・・・俺の幼馴染じゃないか。
なんでこんなことするんだよ・・・。」
「私・・・私。」
洋子は半泣きになりながら俺を見た。
「だって・・・誠が好きだから・・・幸せになってほしくて・・・。」
「何が幸せにだよ!こんな嫌がらせして俺が幸せになれると思ったのかよ!」
「だって・・・だって・・・。」
「見損なったよ。」
俺は泣き出す洋子を置いて部屋を飛び出した。
まるでドラマだ。メリーが行っていたことがどんどん本当になってきた。
洋子の家を飛び出しとぼとぼと現実に起きたことを思い返していると、メリーの行った言葉を思い出した。
『もしあなたが富も名誉もお金も女も全て手に入るような男になったら
御代を頂戴いたします。』
そうだ。この鏡があれば欲しい物が全て手に入るってメリーは行ってた。
今洋子と縁も切り、小夜とも安泰。そしてこれから就職先を洋子に邪魔されることもないんだ。
そう思いさっと鏡をまた取り出すと、そこには全てを手に入れた俺の姿が映っていたのだ。