すべての始まり
雨の降りしきる街、人通りのない道には雨の音が鳴り響く。
そんな街の入り組んだ路地で身をひそめる様に、うずくまっている女が一人いた。
髪は腰当たりまで伸びており、動きやすさを重視した薄めのレザーアーマーを着用し、腰には剣、ポーチを着けている。髪は白くその綺麗でみずみずしさも感じる肌は、
雨で濡れてよりその魅力を際立たせている。
その女は上をみながらぼそりと呟く。
「このまま私、死んじゃうのかな・・」
「今までの人生辛いことばかりだったな・・」
その女の両親は彼女が幼少期の頃、金がないため奴隷として売りに出された。
馬車に乗せられ奴隷市場まで連れていかれている時だった・
男の悲鳴が聞こえたと思ったら
キィン!キィン!と金属同士がぶつかり合う音。私は恐怖で目をつぶり耳を聞こえないように手で押さえ、
時が過ぎるのを待った。
しばらくして音が消え、代わりに話し声がよく聞こえるようになった。どうなったか、確認しようと
布でできたシートをもちあげようとした時だった。
勢いよくシートが持ち上がり荷台の上に金属の鎧を纏った男が目の前にいた。私が怯えているとその男は、優しく微笑みながら、
「そんなに怯えることはないよ、お嬢ちゃん。俺はアレスっていう。とある国の騎士団の団長をやっていてな。
おっと、それよりも嬢ちゃんどこか怪我してないか?」
男の人は心配するように声をかけてきてくれました。
私が大丈夫です。というと、男は、ほっと、息を吐き出して
「いやぁ~、それは良かった。俺たちがいままで見てきた子達には怪我してるのがほとんどだったからお嬢ちゃんも怪我してないかと思ってな」
そういうと男の人は、急にこちらを見ると、こう言ってきました。
「いやお前さんおそらく親に売られたんだろう?誘拐されたならまだしも親に売られてまた会うのは嫌だろう?そこで提案なんだが、お嬢ちゃん、俺の家で暮らさないか?
だがずっとって訳にはいかねぇ。そうだなぁ~お嬢ちゃんが一人で生きてようになるまでってのはどうだ?」
一人で生きていけるまでは暮らせる。でもそこからは一人で生きていかなくてはいけない。でも親の元に戻るのは嫌だしこれで嫌といったら死ぬだけ。
結果として私はその男の人の提案を受け入れ家に住まわせてもらうことができた。
―数年後―
私が大きくなるまでアレスさんは私にいきる術をたくさん教えてくれました。アレスさんは剣がうまいので剣を重視して教えてもらいました。その時アレスさんはよく私に向かってこう言っていました。
「いいか、剣っていうのは人の命さえも奪ってしまうものであり、同時に人を守るための武器でもある。お前さんがどこまで理解しているのかは知らんが、選択を誤るなよ。一つの狂いができちまったらそこから崩れていくもんだ。」
その度に私は人を守るために剣をとりますといってきましたが、
その時の言葉は結果として裏切られることになりました。
ポチャン…ポチャン…
ふと気がつくとそこは雨の降りしきる路地でした。どうやら少し夢を見ていたようです。
「そうだ、アレスさんにああ言ったんだ。ここでは死ねないわ」
そう思い動きだそうとした時でした。
「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!来るなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ハッとして声のした方に向かうと路地の壁にもたれかかっている腹の突きでた男の人がいました。
よくその男を観察すると、豪華そうな服を着ていることから貴族のような感じですが、その服は雨で濡れ、どこかで転んだりもしたのか、泥がズボンに付いています。
助けにいこうと物陰からでていこうとしたとき、もう一人の別の声が聞こえてきました。
「もうこれで終わりですよ、カロイ伯爵。」
もう一人の男は執事のようなスーツに手袋。そして手には光輝く短剣を持っていました。その男は黒髪で黒の目、そしてその鋭い目はさきほどの男にじっとそそがれていました。
「わ、悪かった。頼むから、頼むから頃殺さないでくれ頼む…
罪は認める。だからぁ……」
「残念ですがあなたの行った奴隷の案件に関しては同情のしようがありません。それに依頼主からも殺しても構わんとのことです。ですのでさっさと死んでいただきます。」
そういうと目で追えない程の速さで距離を詰めて私があわてて見た時にはすでに胸へと短剣が刺されていました。
そして男の短剣が光ったかと思うと、
「執行」
とその二人の周りが闇に包まれたかと思うと闇がとけ、
その時にはさきほどの貴族の男はおらず、執事姿の男しかませんでした。
すると、男が急に消えたかと思うと気づけば私の首に短剣をつきつけていました。