七話「陛下とのティータイム」
王宮の離宮で絵を描いていると、ときどき陛下が訪ねてきてくださる。
陛下とティータイムをご一緒するのは楽しい。外の世界の事を知れる唯一の時間だから。
陛下はお忙しいのに、ティータイムに付き合わせてすみません。
陛下の口からはよくエミリア王女の話が出る。「エミリアの背が伸びて大人っぽくなった」とか「淑女らしくなってきた」とか「綺麗になった」とか。
僕が妹のリーナが可愛いように、陛下はエミリア王女が可愛くて仕方ないんだね。
でも「エミリア王女の結婚相手は芸術家で少し年上で温厚な人物がいい」と言われても、僕に心当たりはないですよ。
僕はコミュ障だから、貴族にも芸術家にも知り合いなんていませんよ。
僕が小首をかしげていると、陛下はため息をついて「まだ早かったかなぁ、いつかエミリアの良さに気づくだろう」とおっしゃる。
そして家族やリーナの近況を話してくれる。
僕はリーナが学校でいじめられたり、泣かされたり、女だとバレて脅迫されたりしてないか心配で、最初の頃は夜も眠れなかった。
だけど僕の不安をよそにリーナは王立学園で上手くやっているようだった。
剣術、魔術、馬術、学業、全ての科目で優秀なリーナは学園で大人気。
女性に優しく紳士的な態度が高く評価され、レーヴィット公爵家にはリーナ(アルビー)へのお見合いの話が殺到しているらしい。
お父様が全て断っているようだけど。リーナの勇ましさに惚れて求婚して、結婚相手がひ弱な僕じゃ相手ががっかりしちゃうからね。お父様が断ってくれてよかった。
リーナはすごいな、リーナが男の子だったら女の子にモテモテだったね。
リーナが学園で上手くやっている話が聞けて安心した。