六話「王宮での生活」
僕は王宮にある離宮でのんびりと暮らしていた。
離宮ですることは、本を読んだり、大好きな絵を描いたり。
前世の僕も絵が好きで、絵をたくさん描いていた。描いた絵は妹に頼んでネットで売ってもらった。少しでも生活費の足しにしてもらいたくて。
ニートな僕にはそれくらいしかできないから。
僕の絵がいくらで売れたのかは分からない、多分小銭程度だろう。
妹は嫌な顔一つしないで僕の描いた絵を売ってくれた。絵が売れたお金でちょっと高いポテトチップスを買ってくれる優しい妹だった。
そう言えば妹はなんの仕事をしてたんだろ?
「どこそこのブランドの新作が〜〜」と言って、香水やバッグやアクセサリーをたくさん買ってたから、僕と違ってちゃんとしたお仕事に就いていたんだろう。
妹がブランド品を持つようになったのは、妹が僕の絵を売るようになった時期と重なる。だけどそんなのただの偶然だよね。
乙女ゲームをしている最中に家に雷が落ちて、それで感電して死んだんだった。そのせいでゲームの世界に転生したのかな?
前世の妹には死ぬ前に挨拶もできなかったな。元気にしてるかな?
☆
現世の家族はとっても優しくて、僕がお茶にも誕生日会にも出席しなくても咎めない。
僕の趣味を理解してくれて、僕の描いた絵をとても褒めてくれるし。日頃の感謝を込めて僕の描いた絵を贈ったら、すごく喜んでくれた。
王様や王妃様にも、僕が描いた絵を贈ったことがある。独学で描いた絵なのにとても喜んでくれたな。
昔は絵の先生が着いてたけど、途中から来なくなってしまった。きっと僕の絵が下手くそすぎて、見限られてしまったんだ。
陛下も王妃様も優しいんだよ。陛下は僕の描いた絵を貰ってから賢くなったっていうし、王妃様は若さが保てるというんだ。
お父様とお母様は僕が描いた絵を飾った途端、公爵家が運営する商会の商いが前より上手く言って、領地の作物がよく育つようになったって言うんだよ。
僕の描いた絵が「知恵の神ミーミル」と「若返りのりんごを管理する女神イズンと若返りのりんご」と「豊穣と富を司るフレイ神」だからって、そんな効果が得られるはずないのに。
皆心が温かいなぁ、弱虫で役立たずを慰めるためにそんな風に言ってくれるなんて。