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五話「協力者、リーナの決意」



僕が前世の記憶があることや、ここが乙女ゲームの世界であることは、家族だけの秘密にすることにした。


普通はこんな話は誰も信じない。言わない方が賢明だ。


お父様が「協力者にいとこのエカード陛下を選んだ」と言ったときには心臓が止まるかと思った。どんどん大ごとになっていく。


断罪イベントは王太子のギャレン様がメインで行われる。「協力者には王太子以上の力を持った人間が必要」だとお父様が話していた。


確かに王太子のギャレン様を止められる人は、陛下か王妃様しかいない。


協力者には僕が繰り返し悪夢を見て家族がそれを予知夢と判断し、万が一に備え悪い未来を避けることにしたと伝えたらしい。


いとこで友人のお父様の頼みとはいえ、エカード陛下はよくこんな荒唐無稽な話に協力してくださったなぁ。



リーナが長かった髪をバッサリと切り「私が今日からアルビー・レーヴィットになります!」と言ったときには驚いて声も出なかった。


リーナ・レーヴィットは馬車の事故で死んだことににし、リーナが僕の振りをして学園に通うらしい。


確かにストーリーを大きく変えないで、断罪イベントで逆にざまぁするのが、転生ものの小説や漫画のセオリーだけど……。


「リーナの身に危険が及ばない?」


破滅フラグは壊したいけど、そのために可愛い妹を危険な目に合わせたのでは本末転倒だ。


「大丈夫です、お兄様! 私……いえ僕がうまくやり、お兄様を守ります!」


王立学園の制服を着たリーナは、僕より勇ましく、凛々しく、強そうに見えた。


実際リーナは僕より強い。絵と手芸が趣味の僕とは違い、リーナの趣味は剣術に馬術に魔術、しかもどれもかなりな腕前だ。剣術に至っては先生を負かしてしまうほど。


「お兄様は私が学園に通っている間、王宮にある離宮でお過ごしください。陛下がかくまってくださる手はずになっております」


「えっ? 王宮の離宮? 僕そんなすごい所に住むの??」


王様の迷惑がかからないかな? 家族と離れて暮らすのは寂しいな。


「お父様とお母様と陛下と協議した結果、お兄様が王宮で暮らすのが一番安全という結論に達しました!」


僕が知らないところでそんな会議をしていたの?


「お兄様と離れて暮らすのは辛いですが、お兄様の身の安全には替えられません!」


リーナに僕の振りをさせリーナを危険な目に遭わせ、僕だけ安全な所で暮らすなんて……。


「やっぱり僕が学園に……」


「それは駄目です! お兄様を学園に通わせるなど、狼の群れに子羊を送り込むようなものです!」


リーナの中で僕ってそんなイメージ? そこまでひ弱?


「絶対にお兄様をお守りします! お兄様の童貞を狙う女ぎつねをギュッと言う目に合わせてやります! お兄様は王宮に隠れていてください! あそこが一番安全です!」


リーナの目は力強く、リーナの後ろでメラメラと焔が燃えているように見えた。


「うん、分かったよリーナ。あとのことは任せるね」


「お任せくださいお兄様!」


乙女ゲームの悪役令息である僕は学園に通わないのは良い判断かもしれない。


リーナが僕の振りをして学園に通えば、ゲームのストーリーは大きく破綻しないだろうし。


「えっとゲームのストーリーはなるべく大きく変えないで、相手を追い詰めるのは卒業パーティのときに」


卒業パーティの断罪イベントで相手が「婚約破棄する!」とか「国外追放する!」と言ってきたら、証拠を突き付けてざまぁするのが小説や漫画のお決まりだ。


断罪イベントが起こらなければ、それはそれでOKだし。


「心得ています! 男爵令嬢だけでなく王太子や取り巻きにもひと泡ふかせてやりますわ!」


リーナは頼もしいな。


「リーナの婚期が遅れるのが唯一の心配かな……」


リーナ・レーヴィットは書類上死んだことになってる。その上僕の振りをして三年も男装して過ごす。事が上手くいったとしても、リーナの婚期は遅れてしまう。


「そんなことお気になさらないでください。お兄様の身の安全を守ることに比べたら、私の婚期が遅れることなどささいなことです」


リーナは優しいから、僕が落ち込まないように言ってくれてるんだね。


「リーナ、断罪イベントは新しい婚約者が現れるチャンスでもあるんだよ」


「えっ?」


「断罪イベントでざまぁに成功したら、貴公子に求婚されるのが物語のセオリーだからね」


気休めかもしれないけど、リーナに希望を持って欲しかった。実際にそうなればいいなという僕の願望も入っていた。


「そうなるといいですね」


リーナがふわりと笑う。


今の僕には願うことしかできないけど、破滅フラグを壊せたら、リーナには幸せになってもらいたい。

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