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三話「妹に勘違いされました」



ぐすん……「僕は一人で死ぬことも出来ないのか……」めそめそ……。


僕が部屋の隅で泣いていると。


「お兄様! どうしたのですか!! 今の悲鳴は!!」


悲鳴を聞きつけた妹のリーナが部屋に入って来た。


本棚の前でうずくまる僕を見てリーナが息を呑んだ。


かっこ悪いところをリーナに見られてしまった。


「リーナ、これはね……」 


自殺しようとして失敗して、タンスの角に足をぶつけて悶絶しながら泣いてたら、本棚に背中からぶつかって、落ちてき本が頭にあたってたんこぶができて、一人で死ねないことに凹んでました……とは言いにくいな。


「賊ですか?」


リーナの目がキッと釣り上がる。


「賊が清楚で可憐なお兄様の貞操を奪おうと乱暴を……!」


えーと、僕の記憶が正しければ、貞操って女の子が奪われるものだよね??


「ぞ、賊じゃないよ……」


「では使用人の誰かが?」


えっ? 使用人が疑われてる?


「いつかこんな日が来ると思っていました! お兄様は華奢で色白で愛らしく見目麗しい! 理性が抑えられなくなった使用人が、お兄様を襲う日が来るのではないかと前々から危惧しておりました!」


ええーっ? リーナの中で僕ってそんなイメージなの?


そりゃあ、外で剣術や乗馬や魔法の練習をしてるリーナに比べたら、僕は色白でひ弱かもしれないけど……。


死んだおばあ様が「リーナが男で、アルビーが女だったら良かったのに」ってよく言ってたし。


「いやこれはね、リーナ……」


無実の使用人が捕まらないように、ちゃんと説明しないと。


「お兄様、手に血が!」


リーナが僕の左手にある傷に気づいた。


最大(マクシムム)回復ベッセルング!」


リーナが回復呪文を唱える、傷があっという間にきえた。回復系の最上級魔法を詠唱なしで使えるなんて凄いな。


でも傷と言っても深さ一ミリで、長さ一センチもなかったんだけど。こんな小さな傷で大騒ぎしていたなんて恥ずかしい。


「誰ですか! お兄様の柔らかい肌に傷を負わせたのわ!!」


リーナが僕の肩を掴む! リーナ、目が怖いよ。


「誤解だよ……これは自分でやったんだ。剣の練習をしていて……」


自殺未遂をしたなんて言うと心配をかけてしまうから。ここは剣術の練習をしていて怪我したことにしておこう。


「お兄様は剣術はお嫌いでしたよね? 室内で剣術の練習をして自らの手を傷つけたとは思えません」


「それは……」


鋭いなリーナ。


「ごめん……剣術の練習はしてない、でも自分でやったというのは本当だよ……」


自殺しようとして手首を切って、だけど一センチ切ったたけで、ものすごく痛くて。あまりの痛さに絶叫して悶絶してました。


「ご自分で自分を傷つけた? それも故意に? なぜそのようなことを……? もしや……!」


リーナは何かはっとした顔をして僕から手を離した。


「もうすでにお兄様は汚されてしまった! それでお兄様は一ヶ月部屋に引きこもり、すすり泣いていた! そうですね?」


すすり泣いてる声が外に漏れてたんだ……恥ずかしい。


「それで精神を患い、自殺未遂を……!」


なんかおかしな方向に話がすすんでる。


「おのれ! 犯人許すまじ! 殺す!」


リーナが手をギュッと握りしめる。リーナの目には殺気が宿っていた怖いよ〜。


こうなったら本当の事を話さないと事態の収拾がつかない。


「リーナ本当のことを話すから、ちゃんと聞いて……!」


これ以上誤解されたら大ごとになってしまう。


「アルビー、リーナ、なんの騒ぎだ?」


「アルビー、もう体調は良いの?」


お父様とお母様が騒ぎを聞きつけ部屋にやってきた。


「お父様、お母様、聞いてください! お兄様が……」


今リーナがお父様とお母様に説明したら、もっとややこしいことになっちゃう!


「待ってリーナ! お父様とお母様には僕の口から説明させてっ!」


これ以上、おかしな方向に行く前に真実を話して事態を収拾しなくては!




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