一話「乙女ゲームの全ルートで断罪される悪役令息に転生しちゃいました!」
【短編】「双子の兄が『ここは乙女ゲームの世界で自分は卒業パーティで断罪される悪役令息だ』と騒ぐので、妹の私が男装して学園に入学しました」のヒロインの兄視点です。先に短編を読むことをおすすめします。
ーーアルビー・レーヴィット視点ーー
僕が「タチアオイの蕾」という乙女ゲームの「アルビー・レーヴィット」というキャラクターに、転生したことに気づいたのは十五歳のとき。
王立学園への入学を三カ月後に控えた満月の夜だった。
「うわぁァァァァ!!」
それは映画の映像を強制的に頭の中に流されたような気持ち悪さだった。
目が覚めても頭の中がぐるぐるしている。
「ここは乙女ゲーム『タチアオイの蕾』の世界で、僕は悪役令息のアルビー・レーヴィット!!」
どうしよう! どうしよう!
こんな大切なことなんで今まで忘れていたんだろう!!
アルビー・レーヴィットは、ヒロインがハッピーエンドを迎えるためのフラグ。
アルビーがヒロインを襲うことで、ヒロインを助けに来た攻略対象の好感度が上がる。
故にアルビーは全てのストーリーでヒロインを性的に襲う。そのほとんどが失敗。アルビーは攻略対象の好感度を上げるためだけに存在するやられ役兼かませ犬的な存在なのだ。
アルビー・レーヴィットは、卒業パーティで王太子のギャレンとギャレンの側近の貴族によって断罪される。
ハーレムエンドだけは、未遂ではなくヒロインを実際に犯し子供まで作っている。
全エンディングでアルビー・レーヴィットがたどる末路は同じ。アルビー本人は国外追放、レーヴィット公爵家はお取り潰し……!
ふぎゃゃぁぁぁぁぁあ! なんでこんな最低のキャラに転生してしまったんだ!
でも大人しくしていれば、破滅エンドを避けられるかも。
妹以外の若い女の子と話したことはほとんどないし。
妹以外で話せた女の子は、はとこのエミリア王女(十二歳)だけだし。王女と話せたのも王女が幼いからで、王女が年頃になったら話をするどころか、目も合わせられないよ。
家で働いてるメイドさんとも話したことないし、目をあわせたこともない。
唯一話せるのは七十過ぎのベテランのメイドさんだけ。
そんな僕に嫌がる女の子に無理やり性行為を迫るなんて、難易度の高い事ができるわけがない。無理だよ〜〜、手を握っただけで失神しちゃうよ〜。
ヒロインに関わらないようにおとなしくしていれば大丈夫だよね?
破滅フラグは立たないよね?
そう言えば前世で主人公がゲームの中に転生する小説や漫画を読んだことがある。
その場合主人公は何もしなくても、ゲームの強制力が働き悪いことをさせられたり、ヒロインの自作自演で被害をでっち上げられたり、周りの人にはめられたり、いろんな理由でゲームのシナリオ通りの悪評を立てられ、卒業パーティーで断罪されちゃう……。
うわーん、ゲームの強制力で、なんの罪もない女の子に乱暴するなんて嫌だよ〜。
冤罪を着せられて断罪されるのも嫌だよ〜〜。
……めそめそ、僕はどうすればいいんだ。
☆
幼い頃から僕には、前世の日本で暮らした記憶があった。
前世の僕は、引きこもりオタクで部屋で乙女ゲームばかりしていた。
一番気に入っていた乙女ゲームがあるんだけど……そのタイトルも内容もなぜだか思い出せない。
前世の僕は黒髪黒目でヒョロヒョロ痩せ瓶底眼鏡をかけていて、冴えないオタクを絵に描いたような男だった。
そんな僕が、現世では茶色の髪に翡翠色の瞳の美少年になっていたのには驚いた。
スマホもゲームも冷蔵庫もない。納豆や梅干しや味噌汁やたくあんや白米や寿司や天ぷらもない生活に、初めは慣れずにホームシックならぬ前世シックになっていた。
だけど家族がとても優しくしてくれたので、しだいに現世の生活にも慣れていった。たまに梅干しを食べたくなることはあるけどね。
僕はレーヴィット公爵家という裕福な家の長男として生まれた。
優しくて頼りになるお父様とお母様、おてんばなところもあるけど可愛い双子の妹。
何不自由のない生活。おまけに前世で大好きだった絵が好きなだけ描けて、僕は幸せだった。
僕が良く描くのは前世の絵本で見た、精霊や妖精の絵。彼らの絵を描いてると癒されるんだよね。
あとはときどき前世で読んだ本に書いてあったルーン文字を、妹の持ち物に描いたり。リーナはおてんばで幼い頃よく怪我をして帰ってきたからおまじないの代わり。気休めだけどね。
いつの間にか絵がなくなっていたり、妹のリーナが「お兄様の周りを精霊が飛んでいるのを見ましたわ」と言ったり、お母様が「絵は精霊が気に入って持っていってしまったみたいね」と言うぐらいで、特別変わったことはなく穏やかにくらしている。
リーナってば精霊や妖精が本当にいると信じているんだ。しっかりしているように見えてまだまだ子供だなぁ。お母様もリーナの話に付き合って、精霊が絵を持って行ったなんて言って。僕は精霊や妖精の絵を描くのは好きだけど、精霊や妖精を信じるほど子供じゃないよ。
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【中編】「第一王子に婚約破棄されましたが平気です。私を大切にしてくださる男爵様に一途に愛されて幸せに暮らしますので」
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2022/03/17、新作中編の連載を開始しました!
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2022/03/17、新作を投稿しました!
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