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退職社畜の抜刀記  作者: 陸神
第六章 旅館楽事【従魔契約】
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Episode.55 退職社畜のレイド会談

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「サッ!」


 ゆったりとした浴衣では動き辛いが、さほど問題にもならないだろう。

 台に体を添えるようにして、左手で卓球ボールを(てのひら)に乗せる。

 右腕は体の後ろに隠すようにしている。持ったラケットを軽く握って、ボールを中空に飛ばす。程よい高さで、一瞬止まったボールは落下を始める。


 ―――右手を動かす


 ラケットを体の後ろで反転させて、面を入れ替える。

 柔らかいラバーから、硬めの面に変えたのだ。そのために、わざわざ面を見せてから構えたのだ。この時点で、フェイク。

 手元の動きはボールに対して引くようにして横回転を掛けている。

 更に、ラケットを下に動かして、フェイクモーションを入れる―――これによって、二重のサービスフェイク。姿勢を低くして打ったことによって、ギリギリの高さでネットを超えている。しかも、ラインぎりぎりのストレート。


「甘いぜッ!相棒!」


 読まれていたのか、台上ドライブで返される。

 フォア側に来たボールをブロック。相手ネットの手前に落として、台の外へと!


「チッ!?だがなぁ!まだまだだ!」

「何ッ!体勢の持ち直しが早すぎる!なんて、体幹だ!」


 外へと落ちてしまったボールを更にドライブで返すライダー。

 何て速さだ。逆サイドへといたはずのアイツが、戻っていたとは。

 落ちる間際のボールは、翻って俺の台へと舞い戻る。

 横入れ、上手すぎだろ!?


 ※これはVRMMOのSFファンタジー作品です。スポーツ作品ではありません


「くっ!」


 辛うじて取ったが、ボールは天高く舞っている。

 マズイ!こんな隙、奴が逃すはずが―――ッ。


「ぬかったなァ!死ねえ!」

「うわぁっ!!?」


 横から入って振る、決め球(スマッシュ)

 美しいフォームで放たれたボールは、豪速で台上を弾かれていった。

 くっ……しまった。決められた。

 正直、油断していたことを認めよう。だって、こんなにも早く体勢を立て直すとは思っていなかったのだ。


「ゲームセット!11‐9でライダー選手の勝利です!」

「しゃあああああああああ!!」

「くそおおおおおおおおお!!」


 ルナレナが、ライダーの勝利宣言をした。

 天高く腕を突き上げるライダー。

 俺は思わず、膝をついてしまう。


「勝者は―――お前だよ、ライダー。但し、次はそうもいかないぞ!」

「ああ。いつでも、再挑戦待ってるぜ。相棒!」


 がっしりと、握手を交わす俺とライダー。


 ※これはVRMMOのSFファンタジー作品です。スポーツ作品ではありません


「いや、いい勝負でしたね。四セット目にデュースが20点までいったときは、どうなるかと思いました」

「いやはや、アレは俺も焦ったわ。緊張感ヤバかったし」

「オレ様もだぜ。緊張に負けて、セット取られたのは、痛かったなあ」


 我ながら謎の感想戦が始まる。

 しかし、存外にも面白くて、話こむ。


 それから、数十分後。


「って、そうじゃねえええええええええええ!!」

「お、おう。どうした?」「どうしたんですか?」

「俺は!休みに来たの!青春しに来たわけじゃねえ!」

「ああ、うん、まあ、そうだったな」


 思い出した。みたいな顔で頷くライダー。

 ………コイツ、忘れてやがったな。

 ルナレナは、「わかってました」感の表情をしているが、圧倒的なまでに眼が泳いでいる。


「まあ、いいわ。それで、話ってのは?」


 そもそも、何でこんな遊び(ガチ)をやっていたかというと、それには訳がある。

 ちなみに、俺は高校時代に、卓球で関東大会に行ったことがある。余談だが。

 で、話を戻そう。


 俺は風呂を上がった後に、ライダーとルナレナに呼び出されたのだ。

 一〇〇メニーを使用して遊ぶ、ゲームセンターで赤いオーバーホールのおっさんのゲームで遊んでいた頃に呼び出された。

 顔が未だに紅潮していたライダーが印象的だったが…。

 結構、マジな顔だったから、さぞかし真剣な内容かと思っていた。

 と、その時!優良卓球台が!


「―――で、現在に至るってね」

「ん?相棒、誰に向かって言ってるんだ?」

「あ?んん。大丈夫だ、問題ない」


 先を促すように顎をくいっ、とやる。

 すると、思い出したかのように喋りだすライダー。


「さっきも思ってたが、相棒。かなりレベル上がったか、ステータス強化系のイベントあっただろ?」

「ん、まあな」


 詳しくは言わない。

 もう一度、あのイベントに行けるかどうかはわからないが、剣聖の為にも言わない。それに……えっと、あの、まあ、その、誰だっけ?あの剣聖の付き人のー……パッとしない感じのーー……うざいアイツ。

 か、か、か、か。か、なんとか。カムイだっけ。カノン?カス?カスガ?

 あっ、そうだ。カミヤだ。そうそう、カミヤ。

 カミヤをボコボコにするために、プレイヤーを送り込むのも良いが、プレイヤーの質にもよるからなあ。一応、止めておこう。

 とりま、頷いておく。


「続きをどうぞ」

「アッ、ハイ。それでだなー、強くなったからというわけじゃあないんだが、相棒に依頼があってな」

「依頼?頼みじゃなくて、依頼?」


 突然の言葉に、思わず聞き返す。

 俺の眼は白黒していることだろうな。


「ああ、依頼だ。前から頼もうとは思ってたんだが、いかんせん仲間との連携的に、な」

「それでかー…。少なからず、ライダーんとこのクランメンバーと親睦を持った状態になったから、頼もうってことか」

「そうだ。それに、相棒は実力をマリモとの一件で知らされているし、おまけ的にも実力は思わぬレベルまで上がっている。だが、オレ様は対等な関係を築きたいからの依頼だ」


 ま、レベルは本当にオマケだと思っているみたいだな。別にいいけど。

 だけど、“対等”か。どういう意味だ?


「依頼内容は、レイドクエストへの参加だ」

「レイド…ってマジかよ」


 レイドは、大規模集団戦闘のことだ。

 例えばだが、レイドレベルが20で、中級規模だとしたら、レベル20のプレイヤーが二十五人集まらないと倒せない難度だ。

 経験値やドロップアイテムも、通常のモンスターとは比べ物にならないクラス。


「俺って…いいのか?」

「大丈夫だ。というか、相棒にしか頼めない依頼だ。うちのクランは大規模だが、オレ様やルナレナのレベルのプレイヤーとなると少数になる。だけど、信用できるトッププレイヤーってのも少なくてな。あ、言っとくがマリモは論外だ」

「で、報酬は?決戦日は?」


 仲間だから、友達だから。

 という下らない理由で、俺は易優しくない。大人同士だからこその、対等な関係。ライダーは、それがわかっていたのだろう。


「報酬は、レイドモンスターのドロップからの指定入手で良い。ゲストだから、選択権は相棒にあるから、争いごとは心配しなくていい。決戦日は、今日からちょうど三日後だ」

「うんうん…」


 脳内で、スケジュール確認。

 うん。問題無し。

 三日後、というのもいい。丁度いい日程。準備がしやすい。


「おけ。いいだろう」

「そうか。じゃあ頼んだぜ、相棒」

「よろしくお願いします」


 予定も決まったことだし、今日は休もうかな。

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