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退職社畜の抜刀記  作者: 陸神
第一章 首狩り侍
5/64

Episode.5 退職社畜の抜刀道

【ログイン中】


 《レベルが7上がりました!ステータスポイントを70振り分けてください》

 《新スキル『剣術』を取得しました》

 《新スキル『抜剣』を取得しました》


「どあー!疲れたーっ!」


 叫びながら後ろに倒れ込む。終わった瞬間汗が噴き出してきた。

 ギリギリ俺の方が早く攻撃を当てられたから良かったけど次は負ける自信があるぞ。


 体が横になりながら視線をインベントリに移す。

 インベントリの欄の一つに刀のマークがある。タップすると[餓狼(がろう)大太刀(おおだち)]と名前が出てくる。

 これはいいな。

 狼との戦いで抜剣はクリティカルでダメージがデカいのが分かったから、これからは抜剣を中心にダメージを稼いでいこうと思っている。

 いや、装備をこっちに変えるし抜刀の練習をしなければならんな。

 取り敢えず、装備とかスキルの説明見ない事には始まらんな。


 ♦剣術

 剣で与えるダメージが10%上昇

 ♦抜剣

 抜剣速度を俊敏量に依存してダメージを二倍にする

 ♦[餓狼の大太刀]/属性:闇/装備スキル:『狂狼・犬走』

 九十センチ弱ある大太刀。とある山の山頂に坐する飢えた大狼の魔物の魂が宿った大太刀

 ♦狂狼・犬走

 発動後10秒間だけ超強化状態になる。『餓狼・犬走の太刀道』の使用権を得る。クールタイムは1時間


「おおー」


 パッシブは常時発動のことだからクールタイムを気にしなくていいし、剣術は剣とかの刃物全てに使えるから応用効くし、抜剣も俊敏力を上げた俺にはピッタリだし、攻撃力も大量に得たステータスポイントを振り分ければ良いし、装備もスキルとマッチしていて強い。なにより見た目がカッコいい!

 大太刀という日本男児がみんな憧れる刀に刃の部分が黒っぽく、柄があの狼の毛で編まれたガラ。剣帯には牙のガラが編まれている。

 カッコよ過ぎるだろ。

 ただ少し分からないのが太刀ってのは刃が下向きのはずなのに、これは上向きになっていることと狂狼・犬走の超強化状態になるってのが分からん。


「そろそろ町に戻らんと」


 疑問もそろそろ、いい時間だし、ログアウトもしなければならん。

 起き上がって、周辺を見渡す。


「綺麗、だな」


 出口を探していると視界に絶景が映る。

 山頂から眺める景色は遠くの街や小川、プレイヤーまで見渡せる。

 冷たい風が吹きつけるが、今の俺には涼しく感じる。

 流れていく雲を眺めて一息つく。


「行きますか」


 俺はログアウトを目指して街を目指して下山を始めた。






 ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦






 ―――次の日


「換金お願いしまーす」


 ギルドという場所の受付に行ってメニュー画面から売却を選択する。

 このゲームの世界での単価は「メニー」らしく、ここはモンスターを倒して獲た素材を売却してメニーに換金できる場所だ。


「んー、合計で五万三〇〇〇メニー。まあまあだな」


 メニューに振り込まれたのを確認して噴水広場を目指す。

 これから大太刀での戦闘練習しなければならない。

 大太刀なんて九十センチ近くもある刀を練習なしに振り回すとか無理に等しいし、まず抜くの普通は無理。

 第一に、大太刀は腰に佩くもので、腰に帯刀するものですらない。

地面に付かないでいるのはゲームの設定だと思われる。なにがどうなってかは知らんが刃が上向きになっているから抜刀も出来る。

 そして抜剣スキルにも合わせないといけない。

 スキルのお陰でどうにか抜刀できると思うし、速度が上がるのは良いけどその速度に引っ張られちゃ戦闘にならん。

 …抜刀じゃなくて抜剣だけど刀にも適用されるよね。一応剣だし。


「とうちゃーく」


 周りでは色んな恰好したプレイヤーが案山子に向かって武器を振り下ろしている。

 俺も早速、剣帯を体に吊るす。そうして大太刀で抜刀の練習を始める。


「ふっ!」


 抜けたは抜けたけど抜くまでの時間がクソ長いし、引っかかる。

 そもそも大太刀は刃渡りが長くて抜くまでスキル補正があっても引っかかってしまう。というか抜刀用のやつじゃないだろ。それでも抜刀できるのはスキルの補正か、ゲームの仕様かもしれん。

 これでは、戦闘中に抜刀できなくて隙が出来てしまう、なんてクソダサいことになってしまう。

 効率プレイを目指している俺にはきついかもしれない。


「む?待てよ」


 わざわざ大太刀だからって斬り合う必要ないな。

 剣術や抜剣スキルがあるんだし、ダメージは十分に稼げるし、まだ振ってないステータスポイントもあるからダメージも速度はどうにでもなる。

 要するに斬り合って倒すんじゃなくて抜刀した時の一撃目で倒せればいいじゃないか!

 そうとなったら練習だ。

 俺は案山子と向かい合って練習を再開する…と思ったが抜刀なんて技術、見掛け倒しで出来てるがここはしっかり知識だけでも学んで来るべきだろう。


「ログアウト」

 《ログアウトします》





 ………

 ……

 …





「はい戻ってきました」


 一応ある程度の知識だけはネットで調べて来た。

 動画も見たし完璧だね。

 そしてどう考えても大太刀で抜刀はしないらしいね。ハハッ(やけくそ)

 …別に良いし。出来るならそれでよし。


 ではでは練習再開。

 まずは右手で吊るしてある大太刀の柄を掴んで鞘を左手で支える。

 そもそも抜刀の技術は居合術とも言って手足の動きが制限されている状態で体幹を生かして戦う技。俺は今立っているわけであるからして本来より簡単。

 動画も見たしできるはずだ。


 抜刀術は間合いが大事。

 大太刀の間合いはもっと後ろ。

 三歩後ろに下がって再び同じ姿勢を取る。


 (まぶた)を閉じて動画で見た光景を思い浮かべる。

 和装の爺さんが鞘を抜く方向に合わせて真っ直ぐ持って、引っかからないようにする。


 眼を開ける。

 姿勢を低くして、斬る場所を定める。

 息を深く吸って吸って…吐いて…吸って…今!


 シュ…


 軽い音がして次に何かが落ちる音がする。眼を開ける。

 そこには斜めから切断された案山子がいた。


「よっしゃ、成功」


 上手くいったが反復しないとすぐにこの感覚を忘れてしまう。

 抜刀術もとい居合術は一撃目で相手の攻撃をいなして反撃か一撃後に切り返しの二連撃の連撃で構築される。

 一撃後に普通に戦闘しても良いが効率プレイでスタイリッシュに行くなら二連撃で仕留めた方がいいだろう。


「案山子、直らないんだけど戻るよね。コレ」


 抜刀で斬り倒した案山子が戻らないんだが戻る奴だよな?

 と、思っていると落ちた案山子の部分が粒子になって消えて、無くなった部分に光が集合して元に戻る。練習再開だな。


 間合いを測り直して抜刀練習を再開した。

 …一応、大太刀での戦闘も練習した。





 《スキル『抜剣』が『抜刀』スキルに変異した》

 《スキル『剣術』が『刀剣術』に変化しました》

 《新スキル『間合い』を取得しました》

 《新スキル『居合』を取得しました》

 《特殊条件をクリアしました。職業:【戦士】が【武士】に転職されました》

 《インベントリに【武士】用装備が送られます。ご確認ください》

運営其の一:おい嘘だろ!?耐久力1500ある案山子が壊れただと!?



――――――――――――――――――――――――――――――


 ♦名称:剣術/種類:パッシブ/クールタイム:なし/取得条件:一定量の剣の熟練度/効果:剣系統の武器装備時にダメージ10%上昇

 ♦名称:抜剣/種類:パッシブ/クールタイム:なし/取得条件:剣系統の武器の抜剣を三回成功させる/効果:抜剣速度を俊敏力に依存する・抜剣ダメージ二倍

 ♦名称:[餓狼の大太刀]/属性:闇/種類:両手装備/系統:刀剣・大太刀/装備スキル:『狂狼(きょうろう)犬走(いぬばしり)』/備考:とある山の山頂に坐する飢えた大狼の魔物の魂が宿った大太刀

 ♦名称:狂狼・犬走/種類:アクティブ/クールタイム:1h/取得条件:[餓狼の大太刀]の装備/効果:十秒間だけ超強化状態になる・『餓狼・犬走の太刀道』の使用権/攻撃範囲:[餓狼の大太刀]の刃渡り分


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