Episode.32 退職社畜の旅行計画?
【100万PV突破!】
やっとこさ、ここで一区切りつきます。
ほかの作品で言う、一章終了とかそんな感じでしょうか?
【ログイン中】
『勝者の【山城砦】陣営には報酬として一〇〇万メニーが与えられます』
やった!これでしばらく金策に困らないな。
『そして、運営班一同から勝者プレイヤーへお言葉があります。えーっと…「これじゃ、【山城砦】じゃなくて【山賊砦】じゃね?(笑)」…だそうです。では、これにてLegend・Fantasy・On-line内公式イベントを終了致します。これからもLFOの世界をお楽しみ下さい』
は?誰が山賊だよ。
他のプレイヤーなら、どうあれ俺は違うだろ!?
ライダー?あいつは元凶だっから。うん。知らない。
BOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!
周辺のプレイヤーからブーイングが飛んでいる。
チラホラ、見たことがあるプレイヤー達。同じ【山城砦】だった人達だ。
俺が山賊呼ばわりされんのはまことに遺憾だが、あいつらなら良いや。
メニュー画面を開いて、一〇〇万メニーが振り込まれていることを確認して、エイラのマイホーム兼工房へ向かう。
イベントに参加していたと思われるプレイヤーはそれぞれの表情を浮かべ、体現している。ガッツポーズをしている人や嘆いている人、打ち上げに行くとかそんな話をしているパーティー。
元気だなー。
最近は忙しくて、過労で倒れそうだよ。楽しいけど。
「っと。到着」
販売を行っている工房から中に入り、以前顔見知りになったクラン員に話を通して中に入る。地下の広い工房を先導してもらい、エイラを含めて数人が作業している場所へ着く。
熱中してるし、終わるまで待つことにしよう。
………。
待つこと二十数分。
作業を終えた一行が息ついて休憩している。
造っていたのは、俺が持っている改造刀に類似した銃。
「もしかしてだが、もう注文が来たのか?」
「その通りさね。バツのお陰で注文がバンバン来てね!ホント嬉しい限りだよ!」
「良かったな。でも、そんなに注目するもんかねー」
「そりゃ当たり前だよ。アンタのは特別製で威力も桁違いだけど、劣化版でも十分強力。しかもこの武器のお陰で一部の【魔法師】系の職業なら前線で戦えることも証明できた。需要は大量、供給はいまアタシ等にある。値段も吊り上がって、注文も殺到。懐からあふれ出しそうなくらいだよ」
男勝りに笑いながらエイラは言う。
俺が改造刀のアイデアを提供して、エイラのクランが作製。
事前にエイラが情報を回す。滅多に武器を作らないエイラが手掛けた武器として、注目を受けて、出来上がった改造刀を俺がイベントで存分に使い、広告塔の役割を果たす。
お分かりの通り、エイラに注文が来るってなわけ。
「さっきは劣化版の作製か?」
「うん?いいや、違う。さっきのは新しいシリーズの作成と造り方をほかのヤツラに教えてたんだ。新しい型は、レイピア型の小型拳銃弾発射できる改造剣さ」
「すでに新しいモンを造り始めていたとは」
エイラは鼻をフン、と鳴らし、豊かな胸を張る。
目は向けないようにしてるよ?
向けたら潰されそうだったんだもの。
「商売ってのは常に新しいものを取り入れ、需要を与えることで成り立つ。古いままだと進化できないからね」
クランの人がお茶を持ってきてくれたので、会釈して一口啜る。
…美味いな。良い茶葉使ってるのかな?
ゲームの世界でも味覚を楽しめるのは凄いことだ。
前にニュースで、味覚が無い人がVRで味を知って、号泣したとかいう記事を見た。
そうなると五感があるこのゲームは凄いんだな。
もう一口啜って、口を開く。
「殊勝なこって。…話を変えるが、教えてたってのは?」
「そンことねえ…誰にも言ってくれるなよ?バツ」
凄みを効かせて、エイラは顔を詰め寄る。
逆に顔を引いて頷いた。
「改造した剣、刀が造れるといっても、それはアタシの【銃匠】のスキルと自慢じゃあないが、アタシ自身の技術のお陰でね。アタシの補助無しだと造れるプレイヤーはうちのクランにいないんだよ。だから教えて作らせようってな話だ」
「へー…え?客って皆、エイラが造ってくれるから依頼してるんじゃ―――」
「言わなきゃバレないって!どうせ劣化版って言ってあるから大丈夫大丈夫!」
笑い続けるエイラ。
はあ…こんなんで良くクランマスターが務まるな。それも人望ゆえか。
茶菓子を齧る。…甘美味い。
最近、戦ってばかり。戦いに耽ると現実での生活が疎かになりがちになるから、
「……息抜きしたいなあ」
思わず口に出る。
でも、思い返せば、巨狼と戦って、屑のプレイヤーを降して、ハリネズミの首飛ばして、トッププレイヤーの首飛ばして、イベントの準備のためモンスターの首飛ばして、プロゲーマーと戦って、城ふっ飛ばして…。
大変だったなあ。もちろん楽しかったけど。
偶には、ゲームっぽい、ファンタジーなことしたいな。
「なにさね?ボーパル侍様は休暇をご所望かい?」
「ん?ああ…悪いな、最近戦いぱなしでな。少し疲れが溜まっているんだ」
「そうさねぇ…」
エイラは顎に手を当てて、悩む素振りを見せる。
秒で閃き、にかっと笑って俺に案を言う。
「じゃあ、和国に行って来たらどうさね?」
「和国?」
「そうさ。正式名称は【ルーシェ】なんだが、まあ、ざっくり言って和風の街だ。和国はプレイヤーから呼ばれているあだ名だ」
「和風の街…」
「あそこは、良い景色とか食い物もあるし、休息にはちょうど良い。イメージ的には京都だ」
良い景色と、美味い食い物…。
迷う余地なし!
「あんがとよ。行ってみるわ」
「これぐらいなんのその、さ。楽しんできたらいいさ」
俺はルーシェの情報を調べるために工房を出た。
さあ、冒険の始まりだ。
「これって冒険って言うのか?どっちかというと旅行計画?」




