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退職社畜の抜刀記  作者: 陸神
第三章 【トライアングル・ガード】
29/64

Episode.28 退職社畜の銃刀

【ログイン中】


 《新スキル『厳道歩行』を取得しました》

 《新スキル『兎殺ノ外套(ヴォーパル・コート)』を取得しました》

「妙なスキルを手に入れてしまった」

「相棒が言うのも今更じゃねえか?」


 いつもの如く?ライダーのバイクの後部座席に乗って手に入れたスキルを確認する。スキルは森での首狩り鬼ごっこで手に入れた物で、今の状況はお察しの通りだ。

 城に戻った後にライダーに、後方部隊が迫っていることを説明したら逆に攻めろーってことになって…な訳。

 かなり思い切った決断だが、悪くないと思う。

 先導部隊がやられたことを知らない後方部隊。

 しかもレベルが低い部隊だ。殲滅は容易。

【西洋城】の方では、少なくない数の攻勢部隊を派遣している。

 それについては俺が一番よく分かっている。

 先導部隊は、高レベルのプレイヤーが数十人。二次職から三次職もいた。

 武装もスキルも良い物が揃っていたし、間違いない。

 残るは一次職から二次職の低レベルからなる部隊。

 その兵数、数百。

 城にいるプレイヤーは生産職や初心者、トッププレイヤー。

 前者二つはある程度の非戦闘員。後者は幹部的な戦闘員。

 頭はプロチーム所属したばっかりの人。

 副長に、クラン経営経験者。

 城の防衛力は大体の戦闘員がこちらに来ている訳だから薄い。

 トッププレイヤーがいようとも、ライダーに加えてこちらにもトッププレイヤーがいる。勝算は大いにある。

 敗北条件は城の損傷が一定以上を上回ることと、所属プレイヤー数が一定以上を下回ること。プレイヤーの大半をこっちに持ってくれば完全に負けることはない‥‥と思う。

 だいぶ脳筋な作戦だが、こちとら兄貴ことライダーがいる。

 反対意見も多く出たが、実力でねじ伏せたライダーさん。

 流石っす。


「変なこと考えなかったか?」

「気のせいだろ」

「そうか。話を変えるが、スキルはどんなもんだったんだ?」


 少し首を傾けながら俺に聞いて来るライダー。

 スキルを手に入れたと聞けば、聞きたくなるのもわかる。

 普通のやつだったら教えんがライダーならいっか。

 俺の称号と職業だとなおさらそう思う事だろうし。


「んー。そうだなー。一つは移動に対する技術向上で二つ目は視認されん限りほとんど見つからん隠密スキル」

「また、チート化が進んだな」

「率直に言いやがるな」

「実際そうだから何も言えん」


 味方が誰もいないです。

 空の彼方を見つめると遠くから、声が聞こえて来る。


「相棒。見えて来たぞ」

「わーってる」


 遠方から、足踏み音が聞こえる。

 揃う事はないが、数百もの人間が出す音としては妥当。

 後方部隊の到着でございまする。


「蹂躙じゃああああああ!!」


 味方のバイクを操る人が叫んだ。

 俺達の陣営は、【機構士】が速攻で造りまくった簡易バイクで移動しているのだ。

 まるでイナゴの大移動の様に!

 素材は多くのものを使ったが、これが一番の移動法。


「オレ様たちも突っ込むぞ!」

「あいあい」


 適当に返事して、餓狼刀と鎧通しの柄に手を添える。

 相手方は、見た途端、敵と認識して突進してきた。

 LFOのプレイヤーってIQ低いのかな?

 バーバリアンじゃん。見た途端襲い掛かって来るとか蛮族だよ。


「殺せー!」「ヤれー!」「潰せー!」


 怖いわー。マジ怖い。

 バイクに乗った世紀末な軍団も怖いし、それに突っ込んでく軍勢も怖い。

 巨大バイクで一気に数人ずつ轢き殺してるライダーさんも怖い。

 俺?さっきから首飛ばしまくってるけど?

 怖い…?

 斧持った人が襲って来たら首、飛ばすでしょ?

 え。飛ばさない?遅れてるー。

 はい。ひとつ首が宙を舞いました。

 綺麗ですねー。

 バイクによって轢かれて飛んでく、何故か首がポンポン飛ぶ。

 どちらも何かしらが飛んでますね。

 来年の夏まつりはこれが代名詞になりそうだね!


「抜けるぞ!」


 人々がゴミの様に飛んでく光景を瞼に焼きつけていると敵の波を超える。

 これまでに屠った首の数は数十ぐらい。

 何でも無いように聞こえるけどさ。

 翌々、考えてみ?

 目の前に首が数十個あったら絶叫もんだよ。

 ライダーは俺を優に超える二百と少しぐらいは轢いてる。

 可哀そうだよね。轢かれた人。


「掴まってろよ!」

「ちょっとまてぇぇぇぇ!?」


 抜けた瞬間、Uターンするライダー。

 急にドリフトするもんだからGが掛かってヤバイ。

 内臓系がグッとくるタイプの絶叫マシンに近い。

 ドリフトの衝撃で、吹き飛ばされる敵プレイヤー。

 ついでに、餓狼刀で首を二個ほど刈り取る。

 この刃が入って、スパッと抜ける感触が堪らないんだよな。

 ハマり始めている俺がいる。気を付けなければ。


「あと三百くらいだぞ!押しつぶせ!」

「「「オオオォォォォォ!!」」」


 三百は「あと」って数じゃないよ、ライダーさん。

 心の中で言ってはみたものの後の祭り。

 ライダーの言葉に、煽りを受けて興奮した【山城砦】の兵士達は猛る。

 俺もほんの少しの手助けをするとしよう。


「豪気命令」

「「「「「ウオオォォォォォォ!!」」」」」


 俺達の陣営軍全員に赤いオーラが纏う。

 咆哮を上げて、敵をただ殲滅する味方。

 乗っていたバイクの速度も桁違いに上昇している。


「相棒のスキルのお陰か?サンキュー」

「気にすんなって」


 強化された味方等は暴れまくって、瞬く間に敵を全滅させた。

 豪気命令。このスキルも個人的に禁止指定。危ないスキルだな。

 アドレナリンだか、ドーパミンだかが大量分泌されてそう。

 隊列を組みなおした俺達はミニマップを頼りに、【西洋城】へ侵攻を再開始。

 程なくして見えて来る。

 あからさまなデカイ巨塔がいくつもあって、尖がっている屋根の城。

 うちの城よりも鉄壁な城壁。伊達かどうかは知らんが、大砲もいくつか見える。


「隊列を組みなおす!バイク同士の間隔を開けて、並走、または散開しろ!」


 大砲を見て、警戒したのかライダーは集団被弾を恐れてバイク同士の間隔を開けた。


「突入開始!」


 唸り声にも似た叫びを上げて、城に向かって爆走する【山城砦】軍。

 先頭を走るのは俺が乗ってるライダーのバイク。鋭い三角を描いている。

 何秒後かに、前の地面が爆発する。

 大砲は見掛け倒しじゃなかったようだな。

 ま、所詮は固定砲台。簡単に当たるもんじゃないし。


「速度上げるぞ!」

「了解!」


 問題は、城壁に備えられた強固な門。

 鉄製だと思われる光沢を放っている。

 まあ、あれくらいなら俺でも何とか出来るかも知れない。


「あの門は俺に任せろ」

「応。任せた」


 座席に立つ。

 インベントリから出すのは、エイラから貰った最終兵器。

 新しい、俺の切り札だ。

 それは巨大な大太刀の造形。

 しかし大太刀とは全くの無関係の部品が幾つも付いている。

 大太刀の刃部分をむき出しにして、峰の部分を機械部品で覆い隠して、筒状になっている武器。

 正式名称は、SG式銃刀魔導機構=改造刀・ELA・Ver太刀。

 銃が扱えないなら、刀自体を銃にしてしまえばいいのではないかと言う発想から生み出された武器。

 鞘自体が銃の本体機になっていて、太刀と一体化することによりそのまま武器・兵器に使用出来るシロモノ。

 銃自体が鞘という仰天なアイデアから生み出されたこの武器は、通常の一射でゴリラの頭を吹き飛ばす威力を誇る。なお攻撃力は、魔攻力と割る計算。

 城門まで残り数百メートル。滑らかなゴムで出来た剣帯を回して大太刀の先端を前に向ける。

 城壁までの距離は縮まって、五百メートル圏内。

 それまで準備を終える。

 峰側に添えられたレバーを引く。ガチャンと重い音が鳴る。

 揺れる車上で、太刀に備えられた留め金を外し、グリップを出す。

 柄を右肩に当てて、場所を固定する。

 前使った時は掴まれていたから固定する必要が無かったけど、今回は安定しない足場。しっかりと押し付けて固定する。

 右手でグリップを掴み、備えられた引き金に手を掛ける。

 左手はセーフティー装置を外している。


「そろそろだ!準備は大丈夫か!?」

「丁度終わった所」

「そりゃあ、重畳!」


 目測で三百メートル。

 グリップに内蔵された魔力伝達ケーブルにMPを送り込む。魔攻力が低すぎると攻撃力が高くても弱くなってしまうが、多少ステータスポイントを振ったからマシになったはず。

 それに、この武器はMPを籠めただけその分、威力と射程が上乗せされる。

 俺のMPは今、81。すべて籠めれば百五十メートルもあれば、届く。

 最後にスコープを出して、覗き込み、確認を述べる。


「MP装填完了。対象まで、距離百七十と少し。目標物名、【西洋城】正面城門。発射弾頭名【属性付与弾頭徹甲[火]】発射用意良し!」


 何故かは知らないがエイラにイベントではこれを口に出してからやれと言われた。宣伝効果とロボットロマンが何とか。


「…距離、百六十まで詰まった。準備オールOK!」


 スコープを覗き込み、中心を城門に合わせる。

 不安は残るが、エイラが作った武器だ。信じよう。


「―――発射(ファイヤ)!!」


 大音量の発射音と衝撃を精一杯、踏ん張って耐える。

 射出された弾は、火の属性を持っており、徹甲弾。これもエイラが手掛けた特殊弾頭。だが、普通と違って着弾してからその効果を発揮する。

 紅の軌跡を曳いて飛ぶ弾は城壁に硬い音を立てて着弾。


「た~まや~」


 数秒後、深紅の華が咲く。

 城壁を中心に赤い球体が姿を現し、遅れて弾けて花弁(火花)を散らす。

 百メートル以上離れた地形でも熱が伝わって来る程の熱量。

 咲いたころには砲弾は飛んでこないものだから加速させていたバイク野郎共も失速する。驚いてくれたみたいだ。


「突入ッ!!」


 十秒後、火華が落ち着き、城壁…否、消滅したため只の通路が現れる。

 城壁跡は未だ熱を放ち、溶解し、燃え移っている。

 まさに地獄絵図!

♦名称:厳道歩行/種類:パッシブ/クールタイム:なし/取得条件:険しい道を一定以上移動する/効果:歩行と移動に対して、大幅な技術的上方効果を得る

♦名称:兎殺ノ外套(ヴォーパル・コート)/種類:アクティブ/クールタイム:なし/取得条件:完全な隠密状態での首狩りを成功させる/効果:使用者を視覚以外による認識以外での発見が非常に困難な状態にする・使用者を視認しない限り、発見が困難になる

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