Episode.26 退職社畜の【山城砦】防衛
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「人多いなぁ…」
転送先は城の中…と分かったが人が多すぎて全貌が見えない。
天井を見上げると木造の造りで、土臭い匂いもしている。
人の波を掻き分けて、近くの格子が嵌められた窓を見ると…高度まあまあ。
俺が転送された城は【山城砦】で間違いない。木々が切れている地表とを見るに、標高は‥‥二百メートルぐらいかな?
木の生え具合は、上から見て視界が塞がれる程。高さは五メートルほど。こちら側の斜面は射角が結構あるように思える。やはり【山城砦】ということ。
視線を感じる。周囲の人間が俺を見ていることに気づく。
自分の格好は、和服。噂によると高レベルの街でしか手に入らないらしい。
俺は高レベルのプレイヤーと思われてる?
悪い冗談だ。
インベントリから外套を取り出して羽織る。
付属されたフードを被る。
エマキナで手に入れた装飾装備。
多少の迷彩効果の装備スキルが付いている。
黒の外套羽織った男にしか見えない。
やがて視線は遠のいていく。良かった。注目されんのはあまり好きでは無い。
何故なら―――
「おい!皆聞いてくれ!リーダーを決めないか!」
こうなるからだ。
声を出した男性は見るからに高額・高レベルの装備。
トッププレイヤー、またはそれに準ずるプレイヤーだろう。
このような、確実にリーダーが設定されていない事柄では、まず中心核となる頭から決めていくものだ。
しかもLFOは完全に実力がレベルに追随する。トッププレイヤーが弱モンスターを狩った所で入る経験値は1%にも満たないから。
攻城戦でこの決め方は据えかねるがな。
レベルが高いの一言で決めてしまっては、指揮系統が成り立たないと思われる。
ソロプレイヤーがこんな数百人から数千人から成る、軍勢を指揮するのは無理があるだろう?
当たり前だが、現代で軍団指揮なんてできようもない。
俺自身も【侍大将】なんて職に就いているがやりたくもない。
そんでもって、頭を決めたら組頭…中間管理職を決める。
お次に、職ごとに選別、歩兵部隊や、遠距離攻撃部隊などを作ってくのが定石。
もっと言えば、選別したプレイヤーを数人で組ませて、小隊を形成。防衛地点や箇所、攻勢部隊などを組むと、グッド。
申し出るつもりは毛頭ないけど。
せめて、信用できる奴…とまではいかないくても、クランの経営やパーティーリーダーをしているものがなってくれれば。
正直、この間にも他の所属プレイヤーはおんなじことをしているか、すでに攻めてきている可能性もなきにしもあらず。
ソロプレイ、パーティープレイしてるプレイヤーなら既に攻めて来ていても可笑しくない。決定権は自身か、仲間たちで独自決定できるから。同じ陣営になってればな。
俺も指示されるより、好きに動いて戦いたい。
いわば、独立遊撃兵。
「オレ様が仕切らせてもらってもいいか?」
考えに耽ていた俺の鼓膜に震動する聞きなれた声。
ハッとして向くと、ジャケットに身を包んだ、男が台座に上っている。ライダー。
親友とは悉く縁があるようだ。
台座に上って、一段と高い視界から見下ろしたライダーは迷わず俺のいる方を見る。目が合う。ニヤリと笑って顎をしゃくった。
眼が語っている。
―――行けよ。相棒!
ああ、そうかよ…カッコいいじゃねえかよ、オイ!
俺は人混みを抜けて、戸から外に飛び出る。
出たその時に、上の方に簡易的な地図が現れる。
俺を中心起点としたマップ。【西洋城】と【和城】
ちょうどいい。地形を確認。
振り返ると、本陣となる三階建ての屋敷。
そして本陣を囲むように門と外壁がそびえている。
外壁の高さは、俺三人分ほど。五.四メートルほどか。上には更に積まれた物見櫓と矢倉が数棟。弓士台や矢避けもある。
外壁に飛び乗って、【山城砦】付近を見る。
木で作った杭の障害物、落とし穴、泥水、罠の数々に妨害物は勿論、この城の一番の特徴はその斜角。斜角が高いから射線は俺達陣営に有利。しかも木々が生い茂り、視界は悪質。罠の相乗効果も見られ、そう簡単に上れない。
守りやすいが、攻めづらいと評したところか。
俺は外壁から木の上に跳び乗る。
木の上に居れば、罠に掛からないし、敵勢力による逆襲撃の可能性が低下。俺側からの遊撃も掛けやすい。
枝の間を縫って飛び移る。
外套とボーパル侍の効果が相まって、見つかることは早々ない。
お団子ちゃんみたいな索敵系スキル持ちでも簡単には見抜けない。
山頂の本陣から離れてく。が、本陣を中心に置いて、山外周をぐるぐると見回っている。
索敵ミスには気を付けなければ。足場が安定しない泥が所々にあって、小枝や枯れ葉も大量。見逃しはあっても聞き逃しは無いと思う。
山中エリアだから小回りが利く、餓狼刀を装備。他の武器はインベントリで睡眠中。
「発見」
陣地に入って数十メートルの場所。四人組の男女。
罠に気を付けている辺り、一回は掛かったのかな?
周囲も警戒しているとこは評価点上がるわ。
容赦はしないけど。
手始めに、索敵系スキルが手に入りやすいと聞き及んでいる弓使いの彼から。
「……空破斬」
角度を調整した斬撃は斜め上から音も無く飛び、弓使いのうなじに当たって…
「え…?」
首を落とした。首狩りとボーパル侍の重ね掛け。刀剣術も地味に効いてる。
間抜けな声を漏らした弓使いは消えて、残された三人も放心状態。
素早く納刀して、木の幹を蹴る。
近くの木を更に蹴って加速。数回繰り返し、接近。
生い茂った葉で山木は光を通さない。様相はまるで森。
薄暗く、スキルの効果を合わせたら視認は困難。
火力持ちの厄介そうな【魔法師】の女性を跳び通り過ぎ様に一閃。
首が落ちる。
進行方向の木に着地。空下駄はやりすぎ公式チートだと思います。
体を捻って、足場の木からして垂直跳躍。
刀を突き出して剣士男の心臓を一突き。回転が加わった凶悪な突きは剣士男を一撃死させる。
残りは一瞬の出来事に困惑している盗賊風の女子。
「悪いねえ。こんなことしたくないけど敵なら仕方ないし」
「みんなの仇っ!」
逆上した女子が短剣を振りかぶる。
お兄さんが悪役みたいじゃないか。相手からしたら普通に悪役か。
「両断」
頭から一刀両断。
左右に割れてくモーションがグロい。断面がポリゴン構成なのが尚更。
納刀。
一息ついて、木に登る。急がねばならぬ。パーティーが一つあるだけで他のプレイヤーが攻めて来ている確率が急上昇する。
俺は防衛のために森の中へと消えた。
………ラノベっぽくね?このセリフ。




