Episode.20 退職社畜のエマキナ来街
読者の皆様!報告がございます!
なんと、今作品。退職社畜の抜刀記の総ポイント数が10000を超えました!ものすごく嬉しいです!
呼んでくれてありがとうございます!そしてこれからも読んで頂けることを願っており居ます!
【ログイン中】
「やっと、こっちの方にも来たか。なんなら【エマキナ】を紹介するぞ?」
「おっ、マジで?できれば頼むわ」
「応!」
「んんーっ!?ちょっと待ってっ―――いや、待って下さいっ。あなたとクランマスターっ。け、経緯を…」
にこやかにライダーとエマキナに向かおうとすると、女性に呼び止められる。
動転しすぎて口調が素に戻ったのか、少し口調が柔らかくなった気がする。問い詰めらていた時の高圧的な言葉遣いは、PKの対応などと使い分けている様だな。
公務官とかあんな感じなのかなぁ。
兎も角、今はその話題は置いておこう。
俺とライダーは振り向いて、
「「何だよ?」」
「何ですか!その協調性は!?」
「何って言われてもな?」
「そうだよな」
「「俺(オレ様)たち、友人だが?」」
「だ!か!ら!経緯を!」
そんなピリピリしてると、お肌荒れちゃうよ?
むー…。俺とライダーの仲の良い経緯、ねえ…。
俺が、ダンジョンに行こうとして、それで心配したライダーが着いて来て―――
「って感じだな」
「そうですか…。クランマスター。なにやってんですか?」
「え。ん、な、まぁ、何をしてたかと言うと、こいつとダンジョン攻略し」
そこで、ライダーの顔が凍りついた。視線の先を追って俺もそちらを見ると…。
般若がいた。
否、阿修羅像が見える。
女性の後ろに阿修羅像が見える。
お、おっかねえ。
「ダンジョン攻略。素晴らしいですね?公式ニュースになってたのはアナタ方でしたか。良かったですね?特典アイテムを貰えて。私たちがプレイヤーの摘発に基づき、PKクランの一斉検挙を行っていたのに。わざわざあなたの指示でエマキナの統治者に許可を取ったというのに。良かったですねえ?く・ら・ん・ま・す・たー?」
「わ、悪かったって。でもよ、運営のミスで惨酷峠でのデスペナルティ率が上昇してたし、初心者のアイテム喪失はマズいだろ?それでさぁ」
「もちろん認めますとも。栄えあるクラン、<リィーブラァー>の設立目的は初心者の救済とあなた様への恩返しでありますから。クランの運営を完全に放置しているくせに命令だけはするあなたに文句など一つもございませんとも…!」
お、おう…。
なんか、嫁に尻に敷かれている夫を想像してしまった。ビジュアル的にも絵面的にも。
ライダー、運営を委任してると言っていたが本当になにもやっていなかったのか。しかも命令だけしてくって、凄え嫌な上司じゃん。
「本当に悪かった」
「仕方ないですね…。で!それは良いのですがマスター、そちらの方は信用しても?」
「当り前だ!バツはオレ様の親友だからな!」
「「「「「おおー」」」」」
説教が終わったのか。
俺はめっちゃ周りの人に見られている。
ライダーに褒められることは中々ないのか?
居心地悪いことこの上ない。
そうしていると、俺の内情を察したのか女性が話を切り出す。
「では、バツ様」
「様とか固いのはいいって」
「そうか、ではバツ殿。うちのクランマスターが失礼しました。ダンジョン攻略などお世話になったようで」
殿。いつの時代だよ…とも思わんでもないがこの人にとってはこれが普通なのではないかと思われる。
「いえいえ、こっちこそ高レベルのライダーに手伝ってもらえて助かったし」
「なら、重畳です。私とマスターがエマキナを紹介したいのですが」
「ああ、それは助かる」
「時は金なり。とも言葉がありますし、行きましょうか。遅れました。私はルナレナと申します」
「俺の名前はバツだ。よろしく頼む。…ライダー。行こうぜ!」
「相棒早く行くぞ!エマキナには良い工房がいくつもあってだな―――」
「はいはい」
いつもより、テンション高めのライダーに押されて俺は機械の街【エマキナ】に入った。
俺とライダーとルナレナを先頭に町に入る。
住民やプレイヤーから、様々な視線が送られるが<リィーブラァー>のクランメンバーが一睨みすればすぐに引っ込み、視線を逸らす。
…これ、ヤクザチックだな。
ジャケット着たやつと、和服着た侍。銃火器を持った軍団。威圧感は二重丸。俺だったら近づかないね。
「それで、あっちが重武装の店でな」
「うんうん」
「それでそれで、あそこが防弾チョッキとかのな」
「ふむふむ」
見かける店やアイテムを逐一報告するライダー。
大の大人がはしゃいでると思うとあれだが、友人が楽しければ良い。まあ、逐一言ってくれるお陰で街中の店や街並みが明細に分かるから助かるんだが。
「マスター。一方的に紹介してもなんでしょう。我々のマイホームに案内してはどうでしょう」
「む。確かにそうだな。オレ様達が資金を出し合って、作ったマイホームへ案内しよう」
「ふーん」
楽しみな行事が出来たな。
マイホームは別名クランハウスとも言われていて、クランの拠点や復活地点にもなるから重要な場所。そのマイホームをこの人数のクランメンバーが作ったとなれば、楽しみでもある。
注視して町を歩くと気づくことは多々ある。
スプリンクラーや街灯があるが、歯車やピストン式の仕掛けもある為に、機械の街というよりはファンタジーを出来る限り近代的に近づけた雰囲気がする。
街内を進むこと数十分。
エマキナでも一等地的な立ち位置らしい場所へ到着。立地は町の中央部分。
気のせいかもしれんが目の前には、高さが三十メートル近くはあるビルがそびえている。
「私達のマイホームはこのエマキナ一等地にそびえる、高さ三十五メートル、地上十一階、地下二階のビルです。中にはアイテム作成用の施設を始めに、鍛冶屋、調薬店、工房なども存在します。地下には、戦闘訓練用の可変仮設型自由の闘技場と地下金庫が在ります」
「さあ、オレ様達が作り上げた城へようこそ。相棒」
口を開けて呆然としている俺を見て、ライダーは歯を見せて笑った。




