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退職社畜の抜刀記  作者: 陸神
第二章 機械の街【エマキナ】
18/64

Episode.17 退職社畜のイベント記事

現実回です。

色々と設定を変更致しました。

大太刀を腰に差すのでは無く、本来の剣帯の感じにしました。

疑問点や、おかしい点がありましたら感想にお寄せ下さい。

【ログアウト中】


 朝になったのかカーテンの隙間から木漏れ日が差し込み、俺の顔を照らす。眩しさに意識がだんだんと浮上してゆき、重い瞼を開ける。

 昨日は色々あったからぐっすり寝てしまった。最高の友人にも出会えたし。

 俺は現在、マンションでの一人暮らしをしている。

 食材も一昨日に買い込んである。

 朝飯、何にしようかな?

 トーストにマーガリンを塗って、ハムとチーズを乗せて焼いても良い。焦し目に焼くのが俺のこだわり。

 とはいえ、まずは起きなければ。


「あ~…よくねぐはぁっ!?」

「おっはよーっ!!」


 ベッドから起き上がろうとした瞬間に腹部にヤバいレベルの重量が乗っかる。

 この、軽快な声に、アホみたいな行動をする奴で、このマンションの合い鍵を持っている知り合いと言えば…!―――。


「まーた、お前かぁ?!(かえで)ぇ!」

「つれない事言わないでよ()()()()()!」

「お前最近重いんだよ!続けられたら俺が死ぬわ!」

「死ねば?」

「死ねるかぁ!」

「朝から元気いっぱいだね!」

「お陰さまでな!?」


 頭を抱える俺をケラケラ笑っているのは刀抜(とぬき)楓。俺の妹だ。

 この鳥頭のアホは俺を心配して、LFOを渡すぐらいには優しいのだが、昔からのこの天然馬鹿で突拍子もないことをする。

 …合い鍵を没収するべきだろうか。


「はぁ…それで。用件は?」

「いやぁ、イサ(にい)が元気になったかなーって」


 イサ兄ってのは楓が俺を呼ぶ時のあだ名だ。

 そして、心配してくれるのは良い。

 だがよ、我が妹…


「普通に来いやぁ!!」

「ぎゃああ!」


 頭が残念な妹へ、拳骨をお見舞いする。これで頭が良くなればいいのだが。


「ま、ありがとよ」

「くぅ~~~。男のツンデレなんか誰が得するのさ、イサ兄!」

「やかましいわ!」


 このポンコツがよくLFO作ってる会社に入れたな…あ、こいつ中二病だった。そういうゲーム会社に入れるなら努力するな。我ながら納得。


「イサ兄よ。何か失礼なことを考えてないかい?」

「いや、何も?(ニコッ)」

「くっ!なんというアルカイックスマイル!?」


 こんな妹だが一応。そう!一応運営側の人間なのだ。聞きたいことが何個かある。

 聞ける範囲で聞いてみようじゃないか。

 この頭の出来だし、おだてりゃ豚もなんとやらだ。


「お前に聞きたいことがあるんだけどさ。LFOのことで」

「えーでも。設定担当の人と室長にダメって言われてるし」

「そこを何とか。あとで焼肉奢ってやるから」

「そい来た!なんでも聞いてくれ!」


 うん。やっぱアホだ。


「モンスターが落とす装備の餓狼の大太刀って知ってるか?」

「うー…ちょっと待って。どっかで聞いたことがあるような…」


 楓は唸りながら悩む。

 アイテムと一口にいっても無数にあるから無理かと思ったが覚えがあるよう。

 数秒悩んでからぱっと顔を瞬かせる。


「アイテム製作班の木村さんが室長に怒られてた!」

「ほう。その木村というやつは知らんが室長は誰だ?」

「ゲーム設定の総責任者のあだ名」

「ふーん。それでそいつらは何と言っていたんだ?」

「太刀なのに刃の向きがなんとやらとか抜刀の浪漫がなんとかって」

「あ~…それで」


 太刀なのに刃の向きが上向きになってた理由はそれか。

 もともと、太刀は剣帯に吊るすから刃が下に向いているから抜刀は出来ない。なのに上向きに向いているのは何か意図があるのかと思ったがそんなしょうもないことだったのか。

 まあ、浪漫どうこうの前にきちんと設定は作った方が良いと思うが。俺はその方が楽だけども。今は大太刀が主力の武器になってるからな。


「でもでも、木村さんが大太刀をドロップするモンスターの上の犬歯を削って出来たとかいう裏設定があるからって」

「きちんとした裏設定あったー」

「それだったら普通に打刀にしろって室長が言ってた」

「普通に正論だな」


 お兄ちゃんはこんな職場で働いている妹が心配ですっ。


「でもさ、それなら大太刀のダメージ判定を刀の両面に付ければいいのにね」

「…お前って偶に頭いいよな」

「ていうかさぁ。わざわざさ、抜刀の為だけに抜刀の瞬間、鞘の判定をなくさなくてもいいと思うのよね。スキルの補助はあるとしても」

「…道理で出来るわけだよ」

「さっ、イサ兄。焼肉奢り!」

「チッ!覚えてやがったか。…ほいっ、これで食って来い」

「わーい!ありがと!行ってくる―!」


 適当に一万円札を渡すと楓は騒音を立てて部屋を出てった。

 …騒がしい奴だ。

と思っていると、ガチャリとドアが開く。

楓は顔を覗かせて、


「木村さんに設定の変更言ってみるね」


バタン(ドアの閉まる音)


「職場が楽しそうで良かったよ…」


 俺は腹が減っていたことを思いだして、台所へと向かった。

 食い終わったらゲームにログインしなければならない。






 ………

 ……

 …






 飯を作った。

 トーストは止めて、普通にベーコンエッグを作った。

 テーブルに座って、食い始める。

 半熟の卵を噛みしめながら携帯を手に取る。

 検索アプリでLFOと検索して、公式運営のゲーム内の出来事を見る。


『機械の聖地【エマキナ】付近で大規模な爆発が発生!原因は何?』『<ブレイヴァー>のパーティーメンバー、ガイチが首だけになった画像が放出された!』『ダンジョン【惨酷峠】がクリアされた。クリア者は誰だ!真相を追う』『近日、公式イベントの開催を発表』


 …。

 む?イベント、だと?

 他にも気になる記事はいくつかあるが一旦置いて、イベントの記事へと進める。


『先日、公式発表されたイベント名は、【トライアングル・ガード】。総プレイヤーをレベル別に平均に三組に分けて、与えられる城のエリアを防衛するイベント。開催は残り:一週間後』


「マジすか…」


 これは参加しなければ。

 と、なれば俺はイベントに向けてレベル上げだ。

 食っていた途中だが一気に搔き込んで飲み込む。

 ベッド横に安置したヘルメットを被って、布団の上に横たわる。

 電源を入れる。


「ログイン」

『目を閉じてリラックスして下さい。ログインします』

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