花ちゃんの雪だるま
ちょっと不思議で、せつない話。大人は大人の目線で、子供は子供の目線で読める作品です。
ある朝のこと。目覚めると枕元に小さな雪の結晶がありました。
「わぁ。雪だぁ。」
花ちゃんは嬉しくなって窓の外を見ました。しかし雪は降っていません。霜に朝陽が反射してキラキラ光っています。
「あれ?雪は?」
花ちゃんは不思議に思って結晶を手に取ってみました。すると結晶は花ちゃんの手の中で解けて水になってしまいました。
「お母さん、雪は?」
花ちゃんは朝ごはんを作っていたお母さんに聞きました。雪が解けて濡れてしまった手も見せました。
「雪なんか降ってないわよ?着替えておいで。」
花ちゃんは不思議に思いましたが、お母さんに言われたとおりに着替えてきました。そして朝ごはんを食べて幼稚園に行きました。花ちゃんは幼稚園が楽しくて、帰るころには雪の事などすっかり忘れていました。
次の日の朝、また枕元に雪の結晶がありました。花ちゃんは昨日と同じように窓の外を見ましたが、やはり雪は降っていません。
「雪ふってない。なんで?」
雪の結晶は花ちゃんの手で解けてしまいました。手が少し冷たくなりました。
次の日も、その次の日も、朝になると花ちゃんの枕元には雪の結晶が1つだけありました。雪の結晶は毎日少しずつ大きくなっていきました。しかし、どの結晶も花ちゃんの手で解けて消えてしまいました。
「わぁ!今日のは大きい!」
ある朝の結晶は花ちゃんの手と同じくらい大きくなっていました。これならお母さんに見せられるかもと思って手に取りましたが、すぐに花ちゃんの手の中で水になってしまいました。
「とけちゃった。」
花ちゃんは少し悲しくなりました。すぐに解けてしまうので、お母さんに見せられません。お友達にも見せてあげたいのに幼稚園にも持って行けません。
それからも朝になると枕元に雪の結晶がありました。雪の結晶はお母さんの手よりも、お父さんの手よりも大きくなりました。
そしてある朝、花ちゃんが大きくなった雪の結晶を手に乗せると、それはモニョモニョと動きだし小さな丸い雪の玉になりました。
「お母さん!まるくなった!」
花ちゃんはビックリしてお母さんに雪の玉を見せました。
「あら。雪なんか降ってないのに。どこから持ってきたの?」
お母さんも驚いています。
「毎日あるの。花ちゃんのマクラに。」
花ちゃんは今までの雪の結晶のことをお母さんに話しました。お母さんは目をまん丸にして聞いていました。花ちゃんが話し終わるとお母さんが言いました。
「ステキなプレゼントね。」
花ちゃんは雪の玉を冷凍庫にしまって幼稚園に行きました。
次の日の朝、枕元にあったのは雪の結晶ではなく雪の玉でした。昨日より少し大きな玉でした。花ちゃんはまた冷凍庫に雪の玉をしまいました。
そして次の日、クリスマスの朝になりました。花ちゃんが目を覚ますと枕元には雪の玉が2つありました。それは花ちゃんが冷凍庫にしまった雪の玉でした。
「2つ。なんで?」
花ちゃんは雪の玉を両手に1つずつ乗せました。じっくり見ましたが、やっぱり冷凍庫にしまったはずの雪の玉でした。
「なんで?」
花ちゃんは手が冷たくなってしまって、雪の玉を枕元に戻しました。すると雪の玉はコロコロ転がって小さな雪だるまになりました。
「わぁ!雪だるま!」
花ちゃんは目をキラキラさせて雪だるまを見ていました。
「花ちゃん。やっと会えたね。」
どこからか声が聞こえました。花ちゃんは部屋の中を見回しましたが誰もいません。
「花ちゃん。ボクだよ。こっち見て!」
花ちゃんは声のするほうを見ました。すると花ちゃんの目の前で雪だるまがピョンピョン跳ねています。花ちゃんは気づきました。
「わぁ!サンタさん!サンタさんだぁ!」
花ちゃんはサンタさんにクリスマスプレゼントをお願いしていました。覚えたばかりのひらがなで手紙を書いたのです。
「さんたさんへ
ゆきだるまの おともだち
ください。 はな。」
花ちゃんの手紙はサンタさんに届いていました。花ちゃんは嬉しくて雪だるまを抱きしめました。ほっぺが冷たくなっても花ちゃんは抱きしめ続けました。
「花ちゃん、解けちゃうよ。」
「あっ、ごめんね。」
雪だるまの顔は少しだけ小さくなってしまいました。
「大丈夫だよ。やっと会えたね、花ちゃん。」
それから毎日、花ちゃんは雪だるまと遊びました。幼稚園に行く時は解けないように冷凍庫に入れてあげました。毎日が楽しくて花ちゃんは幸せでした。
ある春の日、雪だるまと遊んでいた花ちゃんは疲れて眠ってしまいました。おひさまがポカポカして気持ちの良い日でした。花ちゃんが目覚めると雪だるまは解けて水になっていました。
「雪だるま、とけちゃった。いなくなっちゃった。」
花ちゃんは悲しくて泣きました。いつまでも、いつまでも泣きました。
「ごめんね。ごめんね。」
その日の夜、花ちゃんは夢の中で雪だるまと遊びました。とても楽しくて、ずっと遊んでいたいと思いました。
「雪がいっぱい!楽しいね。」
すると雪だるまが言いました。
「花ちゃんさようなら。ボクは冬の街に帰るよ。」
「帰っちゃうの?また会える?」
「花ちゃんの街に冬がきて雪が降ったら、ボクを作ってね。そしたら、また会えるよ。」
「うん。作るよ。ぜったい作るよ。また遊ぼうね。」
花ちゃんは目に涙をいっぱい浮かべながら笑って言いました。雪だるまは花ちゃんのほっぺに顔をピタッとくっつけてから冬の街に帰って行きました。