メダルゲーム 〜知能戦デスゲーム〜
地下が発展し地上は金持ちの住む場となった現在、子供が親に捨てられるなんて珍しいことではない。
そう、俺達のように。
教会の手伝いをすることで金をもらう仕事とゆうか面倒を見てもらってるとゆうか、そんな状態が子供達の現在の普通になっている。
妹は体が弱いため、時々でも地上の光を浴びることの出来る家に二人で住んでいる。
俺の名前はラビット、妹はアリスで本から名前を決めた。
もう親からもらった名前なんていらないからな。
「よう、ラビット。今夜もやってくのかい?」
「当然だ」
ギャンブル場『ライフ』、ここが俺の巣穴だ。
いつものようにマスターとの一言の挨拶を交わしテーブル席に座る。
この地下で簡単に金を増やす方法は一つ、ギャンブルをして勝てばいい。
地下は頭の悪い雑魚が多いだからこそここは俺の食事の場所。
「なんでだ! またかよ!」
男はテーブルを叩き、ポーカー用のトランプがバラバラと落ちる。
「これで九連勝か、まだやりたいバカはいるか?」
煽れば何人かは必ず寄ってくる、そして大損して地下深くに行ってさよならだ。
金が無ければ地下に行き肉体労働となる。
「少年、相手してくれないか?」
「いいぜ、相手して──」
全身真っ黒でサングラスをした怪しい男が座った。
「ポーカーにしようか」
相手のイカサマを疑いつつうなずく。
「驚いたな、まさか全試合負けるとは」
サングラスのため、本当に驚いているのか確認出来ない。
「お前のハッタリがバレバレなんだよ」
全試合イカサマなんだから負ける訳ねーだろ。
「じゃ、負けた分とこれ」
男はテーブルに金の入った袋と手紙を置いて行ってしまった。
袋を確認すると地下なら数ヶ月は暮らせるほどの大金が入っていた。
何者なんだ、アイツ──まぁいい、帰るか。
手紙をポケットに入れ、ディーラーに金を渡してその場を後にした。
「おかえり、お兄ちゃん」
「ただいまアリス」
俺の唯一の家族、俺の守るべきたった一人の妹だ。
「ご飯まだだよな、今から何かしよう」
「なら、お兄ちゃんのシチューがいい!」
即答で好物を選択するが、残念ながら材料を買ってない。
「シチューはまた今度な今からだと簡単なのしか──」
アリスが少ししょんぼりする、いつものことだ。
この時、頭をポンポンするとなぜか元気になる。
椅子に座り料理を出されるのを待っているアリス。
朝、昼、晩の食事の用意は俺の仕事、アリスは何もしなくていい。
そう、いてくれるだけでいい。
晩ご飯、風呂を終えてアリスが寝たところで手紙を確認した。
そこにはメダルゲームの招待状とだけ書かれ、裏には勝てば地上に行くほどの金と願いを叶えるとあった。
翌日、ギャンブル場に行きあの男を探すとまたギャンブルをしていた──それに負けている。
「おい、おっさん。腕、どけろよ」
「あ? 邪魔すんなよ、金儲け中だぞ」
昨日は俺の獲物だったものを奪われるのは何よりも腹が立つ。
隣の席でタバコを吸っていたのを奪う──ここは禁煙のため、文句は言えない。
腕に根性焼きをした。
「な、何しやがる! いくらお前でも──」
「はい、お前の負けー」
おっさんの腕の位置から何枚かのカードが見つかった。
この場でのイカサマは賭け以前の問題、すぐにマスターが追放する。
やっと男と話が出来る。
「この手紙だけどよ、やるぜ」
「⋯⋯そうか、なら案内しよう」
「だが、条件がある。俺には妹がいてなそいつの無事を約束するなら、参加しよう」
男はどこかに連絡し、数分後約束すると言ったので住所を教えて男の案内する場所について行った。
男が案内したのは地上だった。
青い空、日の光を浴びる花々どれもが初めて見るものばかりでつい興奮していた。
大きな塔のある方へ歩いている。目的地なのか、ここでゲームが行われるのか? それとも違う目的なのか?
「ここからは一人だ、君が帰ってくることを祈っているよ」
「そんなに危険な場所なのか?」
男はドアを開けるとそれ以降は話さなくなった。
「変なやつ」
最初に会った時もそうだったか。
中に入るとつけてもいないのに電気がついた。
『はーい、挑戦者の登場かな!』
どこからか聞こえる声に戸惑っていると。
『こっちこっち!』
どうやら右側にいたらしい、それに映像のようだ。
「どっちに行けばいい」
『こっちだよー』
そのまま少女は先に進んで行った──映像なのに話せるなんて不思議だ。
そのまま少女について行くと部屋に入った。
部屋はルール以外は真っ白、数日いれば頭がおかしくなるだろう。
『ここがアナタの部屋だよ、私はルール。ゲームのルールを伝えるからルールだよ、アナタの名前は?』
「俺はラビット、特に深い意味なんてない」
『ウサギさんなの? 可愛い〜』
ルールのことはさておき、部屋はベットや冷蔵庫など生活に必要なものは揃っていた。
「ここで生活するとかじゃないよな?」
『うん。もう少ししたらゲームが始まるから待ってね』
ベットはふかふか、冷蔵庫にはいろんなものが入っている──ここは地上の娯楽施設か?
部屋を調べるているとゲームが始まるらしく、違う部屋へルールが案内した。
通路も真っ白、案内が無ければ迷うこと間違いなしだろう。
ドアを開けるとその部屋は真っ白だが数メートル先には何もない、落ちれば奈落だろう。
何もない場所の先にはこっちと同じようなドアがある。
どうにかして渡るのか? 飛び越えるにはさすがに無理がある。
部屋に入るとガラスで右側と左側が分けられているようだ。
今、俺がいるのは左側だ、ガラスの向こうは暗くて見えない。
ガラスには何か貼り付いている──タロットカードだ。
吊るされた男の逆位置、塔と太陽の正位置がある。
向こうにもカードがあるようだがこっちからでは分からない。
その後も調べているとドアが開き、何人かが入って来た。
他にも参加者がいたのか部屋には合計十人が集まった。
『皆さん、ゲームを始めましょう! ルールは簡単、向こうのドアにコインを二枚入れればドアが開き、ゴール!』
参加者がざわつく、当然だ橋すらないのにどうやって渡るのか。
「コインはどこにある? 渡されていないぞ」
参加者の一人がルールに質問した、確かにまだコインとやらは持っていない。
『コインは各自の部屋に置いてるよ、あとこの十人の中に裏切り者がいるよ』
「ゴールに行くだけではないのか?」
『裏切り者は毎晩誰か一人を殺せて殺した分だけボーナス! そしてこのゲームを無条件クリアだ!』
「それは裏切り者に有利すぎないか?」
ルールに質問するメガネの男、やつは裏切り者だから演技しているのかゲームに対して積極的なのかまだ分からない。
『そうだね、だから昼の間に死んだ人が裏切り者かお知らせするよ、それに投票で毎日一人裏切り者か分かるよ』
「まるで人狼じゃないか」
『簡単に言えばそうかもね、では部屋にはコインと役のカードがあるから一度戻ってね』
そう言われて帰って行く参加者達、帰ろうと思ったが何か違和感に気づいた。
ガラスの向こうは星や月があり、月明かりが闇に少しだけ抵抗している。
「気づいたかい、少年」
「あぁ、これはどこかにヒントや謎があるとしか──」
振り向くと、話しかけてきたのはあのメガネの男だった。
「僕はアマノだよろしく、君は?」
「ラビットだ」
「ラビット、君はこの中でも一番頭が良さそうだ。良かったら組んで──」
『お話してないで帰ってよ!』
話を遮ってルールが帰れと言っている。
「仕方ない、話はあとで」
部屋を後にし、自分の部屋に案内してもらうとコインとカードがあった。
カードには独裁者と書かれ、自分の正体を全員に伝えることで一人を殺すことが出来るらしい。
「人狼か。ルール、今日の襲撃はあるのか?」
『ないよ、襲撃は明日からだよ』
人狼は子供達に人気なゲームの一つだ、遊び場がないためテーブルで出来るゲームが自動的に人気になるのだ。
よし、ならもう一度あの部屋を──部屋のドアが開かない?
「部屋のドアが開かない。どうなってる?」
『今はもう一つのチームが説明中だから待ってね。それに投票の時に探したら?』
そうか投票はあるのか、待てよじゃあ裏切り者の始末はどうする? 相手が抵抗すれば分かっても意味がない。
「裏切り者がわかった場合はどうやって殺すんだ?」
『分かった場合は全員の賛成があればこっちが殺すよ』
「裏切り者が複数いる場合は?」
『それは大丈夫、一人だけだよ』
裏切り者に協力者がいる場合は⋯⋯いや、考え過ぎだ。深追いすると逆にもっと深くはまってしまう。
そのまま、投票になるまで静かに待った。
順番になり誰に投票すべきか悩みつつ、部屋を調べていと向こう側に誰がいるようだ。
「誰だ?」
「そっちこそ」
暗闇から声がする、月明かりではシルエットしか分からない。
「俺はラビット、参加者だ」
「私はウルフ、よろしくねうさぎさん」
俺の名前を聞いて言ってるか本当の名前なのか⋯⋯それよりチャンスだ向こうに人がいるなら聞いておこう。
「そっちにカードがあるだろ、なんのカードだ」
「そっちから言ってよ」
取り引きで先に情報を渡すのは良くないのだが仕方ない。
伝えると向こうも答えてくれた。
「吊るされた男、月、星のカード全て正位置よ」
「これに意味はあると思うか?」
「もちろん、それに大体分かったし」
「何が分かったんだ?」
「答えを教えるのは禁止だから、でもうさぎさんが分かればクリア出来るから」
「それはどうゆう──」
『時間だよ! 投票先を言ってね!』
よく話を遮る、時間には厳しいようだ。
ウルフと名乗る女との会話を終わらせ、投票先を自分にして部屋を出た。
次の日、ありえないことが起こった。
集まった参加者は九人、一人は昨日の夜に死んだようだ。
参加者は沈黙する者、慌てる者、冷静な者など様々だ。
『死んだのが夜だから裏切り者かどうかは分からないね』
「裏切り者が死んだら知らせないのか?」
『あくまで昼に死んだ人がどうか知らせるだけだよ』
つまり、夜に死ぬのは裏切り者以外だ。夜に裏切り者が死ぬ理由がない。
「こんなの簡単じゃねーか」
目つきの悪い男が前に出る、そして俺を指差した。
「俺はゲーム開始時、冷静に周りを観察してた、こいつが一番発言も動揺もしてない、ならこいつが裏切り者だ!」
参加者の目線が集中し、疑いの眼差しに変わる。
俺は笑っていた。
「何笑ってんだ! お前!」
この程度、ピンチでもない。「不利な時こそ笑え」それが俺の師匠、マスターの言葉だ。
「いいか、確かに俺はあまり話していないかもしれない。それは認めよう。しかし、その男は明らかなミスをしている!」
参加者の目線が疑いから疑問へと変わる。
「なんだ、そのミスって?」
質問したのはアマノだ、残りの参加者のリーダー的な存在になりつつある。
「お前は言った。冷静に観察してたと、ならお前も裏切り者かもしれないよなぁ?」
男は何も言い返さない、どうやら図星らしい。
「俺も賛成だ、その男が裏切り者でないなら俺を殺してもいい」
アマノが宣言すると参加者の意見はまとまったようだ。
全員が裏切り者は誰か宣言しようとした時だ。
「⋯⋯」
男はゆっくり近づき、俺の首を掴んで奈落の方へと運びだした。
「こいつが裏切り者だ! 皆! 捕まえろ!」
アマノが参加者を使って男を止めようとするが片手で圧倒している。
奈落に落ちる前ギリギリであることを思い出した。
「⋯⋯者だ」
「あ?」
「独裁者だ! 俺は独裁者だ! 聞こえるか!」
最後の力で参加者全員に伝える。
「何言って──」
『独裁者が正体を宣言したよ! 皆動かないでね! それに少年を離してね!』
ルールが出てきた、なんとか間に合ったようだ。
「離してやるよ、ほらよ」
そのまま投げ飛ばされた、足元は闇、手は足場にギリギリ届かない──このまま死ぬのだろうか。
死を覚悟したが、なぜか落ちない。
自分の場所を触ると見えない床があるようだ、でもあるのはここだけのようで他の場所を触るが何もない。
「なんで⋯⋯そこには何もないはず⋯⋯」
小さな声だがしっかり聞き取れた、やはりこいつが裏切り者のようだ。
『独裁者は処刑する人を選んでね』
「当然、こいつだ」
目の前の男を指差す、すると男は部屋から逃げた。
空中に立つ不思議な気分と死の淵に立つ気分を味わい、心臓が鳴り止まないまま、なんとか元の場所に戻った。
「大丈夫か、ダメかと思ったよ」
アマノが手を差し伸べる。
「俺のセリフだ」
手をとり、握手する。参加者にもお礼を言った。皆の時間稼ぎが無ければこの結果にはならなかったかもしれない。
喜びを分かち合い、参加者の結束は強まった。
『はーい、処刑は完了! しかも裏切り者だよ!』
結果にさらに喜ぶ参加者達、しかしアマノは難しい顔をしていた。
「どうした、まだ疑問があるのか」
「気づかないか? 裏切り者が死んだならゴールへはどう行くのか、それともこれとゴールは繋がっていないのか」
参加者が沈黙する。確かに、ゴールと裏切り者は関係がないのかもしれない。
最初にルールが言ったのは『裏切り者は無条件クリア』だった、なら意味なんて無かったのか?
『じゃ、投票の時間だから部屋に戻ってね』
「裏切り者は死んだのに投票はするのか?」
『一日のスケジュールは決まってるから。ほら、戻ってね』
意味は分からないがとにかく戻ることになった。
そして、投票の時間になり戻ってきた。
何度来ても、違和感しかないがあの時の見えない床はなんだったのか。
もう一度触れるが確かに安定した足場だ。
「そろそろ気づいた? うさぎさん」
暗闇から声がする、ウルフの声だ。
「なんのことだ?」
「まだ謎に迷ってるの? 上を見てみなさい」
上に何があるのか見上げるとそこには縄が四つあった。
気づかなかった、いつの間にこんなものが用意されていたのか。
「ほら、カードとか! もう、明日私殺されるかもしれないのに」
カード? あの三枚のカードか。
もう一度、ガラスにあるカードを確認する。
吊るされた男の逆位置、太陽と塔の正位置。
意味は試練に耐える、やるべきことが上手くいく、失敗や崩壊、どれも関係がないし太陽と塔に関しては逆の意味だ。
「はぁ、先に行くから追いかけてよ?」
「それってどうゆう──」
「ルール? 縄を下ろして」
『はーい』
どうなっているのか分からないが同じことをして、ルールに縄を手の届く位置に移動させた。
向こう側を見ると人が逆さ吊りになっているシルエットが見えた。
何をするのか、見ているとそのまま星を月を踏んで移動しはじめた。
「ど、どうゆうことなんだ」
月明かりで横縞靴下と猫さんパンツが見え、それは暗闇を踊るように移動する。
吊られる、星、月? そうか、向こうのカードのことか!
なら、こっちの場合は太陽のある位置、つまり電気の下か!
「これは必要なのか」
手にある縄を一応、足につけて電気の下を歩く。
予想通り、足場があるが見えないものを信用して歩くのはなかなか勇気がいる。
時間はかかったが無事に反対側に辿り着いた。
「遅かったね」
そこにはウルフと名乗っていた人がいた、まだ少女だった。
こんなやつに先に謎を解かれるとは思わなかった。
「はじめましてだな猫さんパンツ」
「な、なんで知ってるの!」
少女はスカートを押さえて距離をとった。
「なんでかな、それよりコインで開けるんだろ」
ドアには二つドアノブがあり、その上にはコインを入れるところがあった。
少女は警戒してなかなか近寄ってこない。
「お前が吊られてる状態の時に見えただけだ」
少女は顔を赤くしてポカポカと殴ってくる。
自分はいけないことをしたのだとこの時理解した。
数分後、少女が疲れたところで許してもらえた。
「開けるよ」
コインを入れ、ドアを開ける。
ドアの向こうは前の部屋と同じく真っ白で、アマノともう一人が先にいた。
「やっぱり、君なら来ると思ったよラビット」
アマノも同じことをして来たのだろうか、そういえば縄は四つなんて中途半端な数なのは一つ使ったからか。
手を差し伸べられるがとる前に少女が別の部屋に連れ込んだ。
「そろそろ名前を教えてよ、そんなメルヘンな名前じゃないでしょ?」
「こっちのセリフだ。俺は親に捨てられた、だから名前は自由だ」
少女は驚いた顔をしていた、ベットに座ると質問に答えた。
「私はアテナ、本名よ」
アテナ⋯⋯女神の名前だったか、名前なんてどうでもいいが。
『クリアした皆おめでとう! これから本戦のメダルゲームの説明をするよ!』
ルールの祝いの言葉の次の言葉がおかしかった。
「まて、ゲームは終わりじゃないのか?」
『今のはオープニングゲームだよ? これからが本番!』
まだまだこのデスゲームは始まったばかりだった。
本戦が見たいとゆう人はぜひ、ブクマや評価をしてくれると次に繋がります。