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公国樹立後の芽生え

すごく今さら気付いた。36話のタイトル間違えとる……。

シャリアータ公国→ハビット公国に修正しました。

あれからひと月が経った。


あの後、ハビット公国は、勇者神爆誕のお知らせと共に世界各国に向けて樹立を宣言した。

民衆はフェニックスフィッシュ(笑)の一件で、完全にドロンズ達を『異世界からの勇者神』と認識したようで、その信仰心により二柱は、紫外線にも宇宙線にも負けない強い肌を手に入れた。


フッツメーン達は治癒魔法を受けて火傷を治してもらい、隷紋を入れられて、強制労働兼社会福祉を否応なしにさせられ続けている。

町の人々とのハートウォーミング(怨嗟の声)な接触は、彼らの傲慢な心に反省を促し、フッツメーン達は劇的ビフォーアフターした。



……と言いたいが、全くそんなことはなかった。


人間性は環境が作る、とは誰が言った言葉だったか。

全員が全員そうではないが、彼らの回りには選民意識に凝り固まったろくな大人がいなかったのもあり、フッツメーン達の選民意識も解けぬままだ。

ということで、彼らのボランティアはただひたすらに屈辱的なものであり続けているわけで、それはそれでざまあ感は出ている。

延々と正座して恨み言を聞かされるフッツメーン達の表情といったら、悔しさと怒りと足の限界とで、まさにざまあ好きにはプライスレス。

今日も今日とて、力仕事のマッチョおじさん達の蒸れに蒸れた足裏を、リンパマッサージする依頼が入っており、これはかなりのざまあポイントが期待できそうだ。

うーん、飯がうまい!



一方、ルイドートやシャリアータの領地経営を回してきた文官達は、王国との交渉や、近隣の寄り子だった子爵、男爵領の併合、諸外国との国交開始に、予想される戦争への備えなど、内政フル活動で、全員がゾンビのような顔色をしている。


しかも、想定した以上に公国に属する土地が増えたのだ。

王都から離れ、辺境に行けば行くほど、トールノア王家のやり方を疑問視する貴族が多いのが原因だ。彼らが公国入りを希望したのである。

特に、ギルマスのナックの仲介で、公国に参入したケラーニ辺境伯領は北のロングラード王国と接しており、そのケラーニ辺境伯の仲介で公国に参入したメイクロード伯の領地は、教国に接している。

王国から独立し新たに興った国として、あわよくば領土を広げられるのではないかとこちらを眺めている、隣接する国々との外交問題に、今後対処しなければならない。


肝心のトールノア王国はというと、シャリアータがハビット公国として独立したことで、王家に不満を抱える周辺貴族の動向が怪しくなっているらしく、こちらに軍を差し向ける余裕は無さそうなのが、不幸中の幸いといったところだ。


(見よ、この適当な大陸地図を!)

挿絵(By みてみん)




急な公国化ではあったが、王国軍の侵攻の情報がもたらされてから、密かに独立を想定して構想を練り、本決まりになってからは、短い期間で最大限に下準備をしてきたシャリアータの文官達である。彼らは副都シャリアータの政治を担って回してきた優秀な文官だったが、流石に人手不足。

現在、『管理職募集中。経験者優遇。やりがいのある職場です☆』とゾンビ仲間を増やそうと画策しているが、能力が高く身辺調査にパスする経験者など、なかなかいないものだ。

とにかく、公国に参入した貴族家で使えそうな者をどんどん引き抜き、国の経営を回している状態だ。


まあ、今は変化に戸惑い、慣れないかもしれないが、そのうち軌道に乗るだろう。

いや、乗せるのだ。でなければ、皆が不幸になる。


公国化を決断したルイドートは、その重責を背負いながら持ち前の経営能力をフルに活動させ、馬車馬のように働いていた。



さて、トールノア王国の報復や諸外国の動静、自国のスタートと維持など、様々な不安とストレスに晒されたルイドートには、現在一つの希望があった。


公国国王の執務室、アインクーガ教国教王からの、

「お前、アインクーガ様をさしおいて、何意味不明な異世界神を国神にすえてんの?馬鹿なの?敵なの?」

というお手紙に、

「お前こそ、何言ってんの?うちの神様、そのアインクーガ様が呼んできた勇者でしょ?しかも神様よ?それを敬うのはアインクーガ様を敬ってんのといっしょだから。常考(笑)」

などと返事をしたためたルイドートは、ペンを置いて、ふう、と一息吐き、肩をコキリコキリと回した。


「そろそろ、あの時間か……」


ルイドートはニヤニヤして机上の鏡を覗きこむ。

益々ニヤニヤしている。


そこへ、ノックの音が聞こえた。


(来た!)


「ルイドート様、お連れ致しました」



ルイドートはコホンと咳払いし、「通せ」と渋い声でのたまった。

大きな両面扉が開かれ、その扉を潜るようにして、黒く大きな魔物が執務室に現れた。


オーガのニックである。


「ガガッ」


ニックが声を出した。挨拶だろう。


「では、今日も頼むぞ。報酬の肉は、たくさん用意している」

「ガアッ」


オーガニックは革張りのしゃちょ……国王椅子にゆったりと座るルイドートの後ろに回り込んで、そしておもむろに……。



ルイドートの散らかった頭を舐め回し始めたではないか!!



べろべろとオーガニックに頭皮を舐められ、ルイドートは心地良さそうに寛いでいる。

彼らは、一体何をとち狂ってしまったのか。

それは、あのシャリアータ公国樹立宣言の日、泥ソックス神殿前で放たれたフェニックスフィッシュ(笑)が発端である。



あのフェニックスフィッシュ(笑)の火の粉によって、頭が延焼してしまったルイドートは、オーガニックが水をかけたことによりすぐに鎮火したものの、頭がより焼け野原となってしまった。

静まり返る民衆、土下座するナック、わなわなと震えるルイドート、そんなカオスの中、オーガニックが動いた。

彼は、ルイドートの頭をべろべろと舐め回し始めたのである。


オーガという種族は、頑強な肉体、溢れるパワーを持つ、物理特化型の魔物である。

その代わり、彼らは魔法を使えない。

王を中心に階級制度を敷くほどには知性もあるが、人のようにポーションや医学を扱うほどではない。

そのため、彼らが怪我を負った際は、原始的に舐めて治そうとすることは、冒険者の間ではよく知られている。


だが、実はこれまで知られていなかったことがある。

それは、オーガの唾には、強い治癒の効果があるのだ。

オーガの唾液に含まれる特殊な酵素には、細胞の活性化と増強化を促す特性があり、それが働くことで傷を修復する。


つまり、こういうことだ。

冒険者、オーガに遭遇→戦闘で頑丈なオーガになんとか怪我を負わせる→オーガ傷を舐める→傷がなくなる→オーガ頑丈過ぎ伝説爆誕!!

オーガさん、チート過ぎです。


さて、オーガの唾液であっという間に火傷が治ったのに気付いたルイドートは、手鏡で頭皮を確認した。


すると、驚きの事態が!!


生えていたのだ。

まだまばらに少量の芽生えだが、確かに新しい毛髪いのちが生まれている。


ルイドートは、驚き、オーガニックとオーガニックをもたらした異界の神に祈りを捧げた。

と同時に、オーガの発毛効果については秘匿することを決めた。

今はまだ誰も気付いていない。

もしこれが知られれば、オーガは世界中の薄毛達に狙われるだろう。

人と親しくするオーガニックは、なおさらだ。



そうして、ちょっと姑息なルイドートはオーガニックを一人占めし、数日に一度は発毛治療を受けている。

ルイドートの頭に新たな毛髪が少しずつ芽生えていることを知らぬ周囲は、ルイドートに新たな特性性癖が芽生えたと思い、戦々恐々としているが、彼は非常に満足しているようだ。


発毛の喜びは、何者にも耐えがたいのだ。



このように、ハビット公国は、案外穏やかな日々が続いている。

しかし、歴史の変換期に、嵐はつきものだ。


不穏な気配は、すぐそこまで近づいてきていた。


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