勇者疑惑で熱々ビッグバン☆
風邪ひいたのか、咳と謎の吐き気に苦しみ中……
「……は?勇者、だと?」
フッツメーンか信じられぬものを見るような目で、爺神二柱を見た。
「そんな、馬鹿なことがあるか!!邪神を勇者などと……。また我らを欺く気か!?」
王国軍騎士団長グレッグが、唾を飛ばす。
ルイドートは飛んできた唾を、華麗にバックステップで避けながら言った。
「では、この方々に魔力適正がないのをどう説明するのだ?邪神は魔力の塊のようなもの。魔力が無いなど、ありえぬぞ?」
ドロンズを盾にして唾の射程範囲外から、そう尋ねるルイドートに、フッツメーン達が反論する。
「そ、それは、何かこやつらが細工をしたのだろう!そうに違いない。こんなやつらが勇者であってたまるか!」
「そうだ!勇者は、もっと若く、力強く、魔物を憎むものだ!」
「勇者なら、人前で、尻をさらけ出さない!」
「勇者には、尻穴があるはずだ!!」
尻の話が蒸し返された!
だが勇者とて、クレパスしん君のように尻をさらけ出していきたい特殊性癖のある者くらいはいるだろう。
いや、やはり変態の勇者はどうかとは思う。
穴に関しては、……たまにはイレギュラーなことだってあるさ。
やいやいと喚くフッツメーン達に、ナックが言った。
「ならば、証明しようじゃないか!」
「どうやってだ?」
訝しげに聞いたフッツメーンに、ナックがニヤリと笑う。
「おい、誰か魔法防御に自信兄貴どもはいるか!?」
民衆の中から、「ワイは魔法防御特化やぞ!」「ワイもつかえるで!」と、何人も手が上がる。
ナックは、彼らを呼び、神殿方面に三重の魔法防御壁を張らせた。
そしてその前にフッツメーンとグレッグを立たせ、さらにその前にワクワク顔の勇者疑惑神二柱を据えて言った。
「今からドロンズ様とクリソックス様に魔法をぶつける。勇者なら魔素がないから、魔力が体に作用しないため、魔法は効かずすり抜けて、背後のお前達に当たるだろう。だが、お前達の言う通り邪神ならば、魔法は邪神にぶつかって、お前達の盾となるだろう」
ナックの説明に、ギョッとしてフッツメーンは抗議した。
「な、なんだと!?もし魔法がすり抜けてきたらどうするんだ!」
「ならば、この方達が勇者ということだろ?でも、お前達は邪神だと思ってるんだから、問題ないだろ?」
「も、問題だらけだ!!邪神に魔法が当たっても、場合によっては巻き込まれることだってあるだろう!」
「そうだ!それに何故私とフッツメーン様なんだ!他にも王国の騎士はいるではないか!」
「軍の最高責任者が責任とらないで、誰が責任とるんだよ」
ナックは呆れ気味に、フッツメーンとグレッグに目を向けたが、「仕方ねえな」と魔法防御に自信兄貴を一人呼び、フッツメーン達に防御をかけさせた。
「これでいいだろ。ほら、そこに立ってろ。神様方もそこでお願いします」
「うむ」
「いつでも、どうぞー」
ナックは、ルイドートが巻き込まれぬようにその場から、少し移動したのを見届け、両手を空に掲げた。
「炎よっ、俺のバーニングハートを熱々ビッグバン☆最終奥義、フェニックスフィーーッシュッ!!」
「だっさあーー!!呪文、ださあああっっ!!?」
「鳥なのか、魚なのか、どっちなんじゃああ?!!」
クリソックスとドロンズは、心の底から絶叫した。
ナックは、その凶悪すぎる呪文に似合わず、巨大な炎の鳥を空に出現させるや、ドロンズ達に容赦なく放った。
フェニックスフィッシュ(笑)は、炎を撒き散らしながら、尾びれを震わせ、こちらに突っ込んでくる。
フェニックス以下略は、無事にドロンズ達を通過した。
「「いぎゃああああああ!!!!」」
ドロンズ達の後ろで、フッツメーンとグレッグが熱々ビッグバン中である。
一応、魔法防御が効いているようだが、フェニックスフィッシュ(笑)の威力がそれを上回っているのが丸わかりのバーニングっぷりだ。
「いぎゃあああ!!!」
違う方向から悲鳴が聞こえる。
なんとっ、少し離れた所にいるルイドートが延焼している!
火の粉がルイドートの頭部に飛んで、燃え移ったようだ。
ルイドートの古代遺物であるアデラネイチャー(予備)が、熱々ビッグバンしている。
「あ……」
ナックが、(やっべ……!)という表情を浮かべている。
もしかしたら、明日ナックは、国外追放かもしれない。
彼はおっさんでもあるし、なかなか流行りを押さえた展開である。
オーガニックが、慌てて神殿内からたらい一杯の水を持ってきて、ルイドートに頭から浴びせかけた。
気が利くオーガである。
おかげで延焼は食い止められたものの、ルイドートのアデラネイチャーとルイドートの頭部(真)は焼け野原になってしまった。
え?ルイドートの頭部(真)は、元々焼け野原だったって?
やめてやれ。これ以上、傷口に塩を塗ってはならぬ。
次第に炎は鎮火していった。
後に残ったのは、火傷で真っ赤になったフッツメーンとグレッグ。
そして、焼け野原のルイドートである。
ナックは、可及的速やかに、ルイドートの前で土下座態勢に入った。




