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鈍感系主神公は類友を呼ぶ

独白エッセイを密かにポツポツ書いてるんですが、ぼちぼちな順位(上位ではない)でランキングに載っていてビックリです。

ありがてえ……!感謝!


エッセイ『中二な病』シリーズ、

『中二な病』

『エッセイ『中二な病』から心に浮かんだよしなし事2【前世のお話】』

『エッセイ『中二な病』から心に浮かんだよしなし事2【こじらせた青春のお話】』


良ければ読んでみて下さい。

「なるほど、異界の神様でしたか……」


ハビット公爵宅の応接間にて、クリソックス達はソファに座り直し、ここに至るまでの経緯をルイドート達に説明していた。

だがルイドートと違い、ナックの靴下信仰はまだクリソックスを神と認識できるほどの強さは無かったようで、初めはこの話を聞いても、やはり半信半疑であった。

しかし、クリソックスから靴下ラッピングの叡知を授けられた瞬間、やっと理解できたようだ。


「靴下の神……!」

ナックは膝を折って祈りを捧げた。

「いや、私、クリスマスプレゼントの靴下神であって、靴下の神じゃないんだけど……」

まあ結局、ナックの理解はあと一歩であった。

ただの靴下に、何を祈るというのか。

下手すると、クリソックスに『穴』だの『水虫』だの『異臭』だのといった能力が増えかねない。

『水虫』を操る能力など、地味に嫌がらせである。



「この世界の者でないとすれば、確かにスキルや魔法の素質か無いというのは納得できるな」

ナックは以前調べた二柱の適性検査を思い出したようだ。

「スキルを持っていないはずなのに、泥や靴下を生み出すんだ。意味不明だったが、異界の神様だからだったのか……」

「そうじゃのう。わしらの世界には、スキルも魔法も存在しないからのう」

「スキルも魔法も無くて、どうやって魔物から身を守るんだ?」

「魔物がいないからね。……いや、いたわ。甲子園に住んでるらしい」

「いるのか、いないのか、どっちなんですかね?」

混乱するナックに、ドロンズが言った。

「いるさ。人の心の中に、な」

「ドロンズさん、かっけえ!!」

クリソックスが叫んだ。



「異界といえば」と、ルイドートが切り出した。

「今年は千年に一度の『大祓え』の年。異界から『勇者』を召喚する儀式が行われたのが、先日の事でしたな……」

「ああ、そういえば、大失敗だったとか!国中、いや、下手したら世界中、この噂で持ちきりですよ」

ナックがこの話に反応した。


「「勇者!?」」

それ以上に食いついたのが、ラノベ大好き神達である。

「勇者召喚!!大好物!人の子よ、もっと詳しく!」

「千年に一度の『大祓え』も気になるのう」


興奮して詰めよるラノベ愛好神に、ルイドートは説明を始めた。

「この世界には、ある伝承がありましてな……」



『大祓え』の年。

邪神が生まれ、魔族や魔物の活発化が最も強まるとされる年である。

この世界では、千年に一度、このような年が巡ってくるらしい。なんでも、魔物や魔族を生み出す魔素というものが千年かけて溜まった結果だそうで。


専門家が、独断と偏見で導きだした結論らしい。

うーん。独断と偏見でいいのか、専門家!


結果的に、邪神を奉じる魔族が、やる気ボタンだかスイッチだかを押されて『なんだか、今なら世界征服とかできそうな気がしてきた……うおおお!!』とバーニング。

魔王率いる魔族が、魔物とヒャッハーしながら、人間だの亜人だのの国に攻めてくるという、大変迷惑な事態に毎回なるんだそうな。


で、人間側はある時、神のお告げを受けて、この迷惑な輩を一掃してくれる強い勇者を異界から召喚する事にした。

するとあら不思議!

あんなに倒せなかった魔族も邪神も、勇者一人いれば、あっという間にこの通り、こすらずつるつるピカピカに……!

要は、汚れを落としたように、悪者は一掃されたわけだ。


こうして、世界に平和が戻り、溜まった魔素は邪神誕生や魔族、魔物の強化に使われたために、リセット状態。

いやあ、めでたしめでたし!


そして、千年後、歴史は繰り返される……。




「……とまあ、こんなお話です。所詮神話みたいなものですが、なんと勇者召喚の門がうちの国にありましてな!うちの王族は代々、次の『大祓え』に備えて門に魔力を蓄えさせ、その時が来たら召喚の儀を行い、勇者を召喚しなければならないという言い伝えがあるのです。それで、先日『今時、邪神とか(笑)』と皆思いながら、言い伝え通り儀式を行ったのですよ」

「で、失敗した、と」

ドロンズの言葉に、ルイドートは苦笑で返した。

「私も、国では一番の貴族です。召喚の儀に立ち会いました。門は確かに強い光を放ちましたがね、それだけです。勇者なぞ、出てきませんでしたよ」



クリソックスは、肩を落とした。

「なんだ、勇者は来なかったのかー。でも、勇者いなくて、大丈夫なの?」

その問いには、ナックが答えた。

「まあ、魔物が千年ごとに活発化するのは事実のようです。今ら、確かに魔物が増えて活発化しているようですし。魔族領の動向は不明ですがね」

ルイドートは肩をすくめた。

「ただそれは、兵士や冒険者が対処する問題ですから。まあ、千年も前の話です。勇者だの、邪神だのは神話のお話ですな。一応、万が一本当に勇者が召喚された時のため、どちらの性別の勇者が来てもいいように、接待にあてがう姫と王子を用意していたのですが、失敗に終わって、姫も王子もほっとしていましたよ」

「オークみたいなやつや、性格悪いのが来るかもしれませんしな」

「いや、ナック。その方が、あの方達にはむしろお似合いかもしれんぞ?」

「公爵、不敬ですよ!」

「ナック、顔がにやついておるぞ?」

「公爵こそ」

「「ワッハッハッハッ!」」


どこの世界も、上司は陰口を叩かれるものである。


「勇者、見てみたかったなあ。追放される所……」

「お主、ラノベの読み過ぎじゃ」


二柱は相変わらずだった。



クリソックスは、「王族のくせにケチ」だの「王城のインテリアは趣味が悪い」だの「王様の口臭はゴブリンのケツの匂い」だの、悪口に花を咲かせまくっている不敬貴族二人に、疑問をぶつけた。


「二人は、ゴブリンのケツの匂いを嗅いだことが……?」

「それはわしも知りたいが、ここで聞くべきはもっと違うことだろう?クリソックスよ」

ドロンズの呆れた視線を受けて、クリソックスは質問をやり直した。


「だけどテンプレだと、エルフだのドラゴンだのの長生き『のじゃロリ』が、千年前の事を知ってそうなものだよね。こういう者に当時の話を聞けないのかい?」

「『のじゃロリ』が何かはわかりませんが、エルフは引きこもって人と交わりたがりませんし、知性あるドラゴンなんて、それこそ人の世界には来ませんよ」

「それより、神様方は、異界から来たのだろう?聞いた話、ちょうど、召喚の儀式の時期と同じだし、こちらに来る時に勇者っぽい人を見なかったんですか?」


ナックに問われ、二柱は顔を見合わせた。

「勇者っぽい人……。そんな人、いた?ドロンズ」

「見なかったのう。勇者っぽい人間」

「じゃあ、やっばり、勇者召喚は失敗か、そもそも勇者なんておとぎ話だったってことだな!」

カラカラと笑うナックの隣で、ルイドートはニヤニヤしている。

「ただのおとぎ話のために、光るだけのガラクタに、千年も魔力注いできた王族ときたら……。もう、次、王城で王様に会った時、絶対吹き出してしまう」

公爵様は近々不敬罪で、断罪かもしれない。


「ガアーッ、ガッガアッ」

「え、ニックも勇者に会ってみたいの?戦闘不可避じゃない?」

「ガア……」





さて、もうおわかりだろう。


突如異世界転移した二柱と、全く同じ時期に行われた勇者召喚の儀式。


何故誰も、気付かないのか。

もう、状況からわかれよ!

異界から召喚された勇者は、どう考えても……。



まったく、鈍感な奴らだ。

『やれやれだぜ』である。


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