03.小さい頃のはなし
グランツ家とレラルド家の現当主は学生時代から仲がよかったらしく、そんな理由からか公爵家と侯爵家、異なる身分にも関わらず互いが当主になってからも家族ぐるみの付き合いがあった。
自分の前世を思い出してから半年が経ったある日、私は気がついてしまった。
家族ぐるみで仲がよく、生まれたときから一緒にいるであろう幼馴染み。隣りで楽しそうに積み木で遊んでいるが、よく見れば5歳のくせに顔が整っている。これは明らかに成長していくにつれ、その美しさには磨きがかかるはず。
(絶対私の苦手なタイプになる)
だから私は考えた。今のうちから少しずつ距離を置いて、早めに関わりを断ってしまおうではないかと。我ながらいい作戦だと思い、慎重に結構していたのに、1週間も経たずにその作戦は失敗に終わる。
理由はリン。地味に作戦を開始し、1日目・2日目は特に何もなかった。しかし3日目に事は起きた。
その日もリンと2人で遊んでいた私はどうしてもトイレに行きたくなった。リンは何かに集中していたので、特に声も掛けずにその場を離れた。そして、すっきりとした私が戻ると、何故かリンが大泣きしていた。
「ぐすっ。ソ、ソフィっ・・ソフィィィィ」
リンの泣き声が聞こえたのか、お母様がやってきて、リンに「どうしたの?」と聞けば、
「ソフィぼくのこときらいになっちゃったのかなぁ。ぼくきらわれちゃったの?」
と、泣きながら言っていた。
そして、それを聞いていた私は「気付かないだろう」とリンのことを舐めていて、作戦を実行していたことを反省した。
しかし、この出来事は私が気付いていなかった盲点を気付かせてくれた。
家族ぐるみの仲の時点でこの先もリンとは付き合いが長いだろう、ということを。
このリンの大泣き。本人が覚えているかは知らないけれど、これが今も一緒にいる理由であり原因だったりする。