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両片想い
「お前さあ、好きな人いんの?」
「あんたには関係ない」
「あるよ」
「何で」
「からかうため」
「殴るよ?」
暴力はんたーい!
わざと大きな声で叫んで廊下を走っていく。
そんな背中を必死に追いかける。
「待ちなさい!」
「待たない!」
また始まったか。
周りは呆れながら二人のために道を開ける。
暑いのに走り回って元気だなと誰もが思う。
男子高校生は履きつぶした上履きを気にしながら、逃げている。
女子高生はめくれ上がりそうになるスカートなんて気にせず追いかける。
早く気づけっつーの。
私が、
俺が、
好きなのはーー。