vs.ブラコン女
「ごめん、別れよう」
「え、ど、どういう」
「妹を虐める人を彼女にはしておけない」
「え? え?」
頭が混乱する。私がいつ、彼の妹を?
一度しか会ったことないのに?
「とにかく帰ってくれ」
「は?」
「帰れよ!」
最終的には怒鳴られて追い出された。
本当に心当たりがない。
けど、一つ可能性があるとすれば。
「やーっと別れてくれたんだあ」
セーラー服のスカートをはためかせ、細い指で毛先をいじりながら、彼の妹が立っていた。
「お兄ちゃんに近づく方が悪いんだよ、バーカ!」
キャハハ! と高い声で笑いながら近づいてくる。
やっぱりこいつか。
「あなた、いつもこういうことしてるの?」
「えー? なんのことぉ?」
この後に及んでシラを切るつもりか。
「嘘ついて、あなたのお兄さんに近づく人を?」
「だって邪魔なんだもーん。それに、あたしとお兄ちゃんって昔から超仲良しだからー。あんたらみたいな女よりあたしの言葉信じるよ?」
勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「じゃあねー!」
手を振って彼女が通り過ぎていく。
なるほど、行き過ぎたブラコンらしい。
同時に彼も行き過ぎたシスコンのようだ。
「馬鹿はそっちだっつーの」
心の中でそうつぶやいて、私はスマホのボイスメモの録音をストップした。
笑ってられるのも今のうちだからね。