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泣かないようにと唇を噛みしめ、目の前の男を睨む。
泣いても良かったんだ、メイクなんてしていないから。
何なら涙を袖で拭いても良かった。
どうでもいいような服だから。
「……なに」
心底面倒そうにそう一言呟いてわざとらしく欠伸をされた。
どこまで私のことを馬鹿にすれば気が済むの。
「お前みたいなダサイの、本気で相手するわけないじゃん」
嘲笑。
今に見てろと捨て台詞を吐いて私は走って逃げた。
いや、逃げたんじゃない。次のステップに向かったんだ。
見返してやる――それだけを思いながら。
新しい自分になる頃には、あんな奴の記憶はなくなってるはずだ。