コワモテの先輩
「こらぁ! 集中力落ちてんぞー!」
「はいっ!!」
バスケ部の部長は厳しい。
いつも眉間にしわを寄せて、部員の動きを
細かくチェックしている。
毎日毎日怒鳴るもんだから陰では鬼って
あだ名されている。
大変だなーと、隣のスペースでのほほんと
打ち合ってるバドミントン部の私は思う。
「今日はこれで終了! 解散!」
「ありがとうございました!」
下校のチャイムが鳴り、部員たちが一斉に体育館の
出入り口に向かう。
「おつかれ」
「お疲れ様です」
私と先輩は、出るふりをして少しだけ体育館に
留まる。タイムリミットはここから先生が
向かってくるのが見えるまで。
「先輩、もう少しバスケ部の子達にも優しくすればいいのに」
「それじゃ上手くならないだろ」
生意気ながらもアドバイスしたけど、
案の定、先輩は譲らない。
「それより……今日何かあったか?」
「え?」
「いつもより元気がない」
あーあ。隠してたつもりだったんだけどな。
やっぱり先輩は、人の事細かく見てるな。
「……クラスメイトと喧嘩した」
そこからは溜めてたものを吐き出すように
私は話す。先輩は黙って最後まで聞いてくれた。
「明日になれば仲直りできるだろ」
そう言って頭を撫でてくれる。
私は頭を撫でられながら先輩の顔を見る。
眉間にシワが寄ってても、鬼って言われてても
私にとっては優しい先輩だ。
「他の子にもこうして優しくすればいいのに」
「お前だから優しくしたいんだ」
じゃあ今のままでいいや。
ニヤけながら私はそう答えた。