先生の言う通り
「まじか……」
起きて早々私は頭を抱えた。
夢に見るほどあいつのこと好きだったか、私。
恥ずかしすぎる。
いや昨日、遅くまで一緒に課題してたからだ。
だから出てきただけだ、多分。
「次、古典だね」
「伊勢物語だっけ?」
「そうそう」
退屈な授業中。もう少しで眠りそうになった時
先生の言葉で目が覚めた。
「昔の人は自分が好きだから夢に出てくるって
考えではなく、相手が自分のことを好きだから
夢の中まで会いに来てくれるって考えたんだ」
ーーほんとに?
じゃああの夢はまさか。
なーんて、さすがにそれは夢の中でもまた
夢見すぎだろうと思って机に伏せた。
あともう少しで眠れるって時に頭に何か当たる。
起き上がると机にはくしゃくしゃの紙。
『おれ、昨日夢にお前が出てきたよ!
てことで俺のこと好きなの?』
「アホか……」
呆れながらも返事を書いて投げてやった。
『それなら、私だって昨日あんたが夢に出てきたよ。
私のことそんなに好きなの?』
読むのを見守っているとふいに目があった。
アホみたいに笑顔であいつは大きく頷く。
やっぱ、アホだな。
口パクでそっちは?ときいてくるから次は自分の
ノートを千切って返事を書いた。
『先生のいう通り』