5 集合
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帝都空港は24時間操業中の空港である。
世界中へ行く者、世界中から来る者。じつに様々入り乱れている。
幾人もの人、いくつもの店舗…
もはやこうなると飛行機の発着所というよりも一つの街である。
その街にあって異彩を放つ一行があった。
「株式会社ラダニーク 一行」
紙っきれを高く掲げる男は黒い背広で無愛想な表情だった。センバ氏だ。
センバの隣にはゴツゴツした体躯の男が、これもまた無愛想な表情で立っている。タカダだ。
「センバさーん、なんで空港集合にしたの?」タカダは気怠そうな声をあげた。
「それがさ、手違いってやつさ。ま、たまにはこういう旅行チックなのもいいじゃない」
タカダはその声に反応すらしなかった。時間は朝5時をむかえたばかり。タカダは朝が苦手であった。
「センバさん!!すみません!いやー!やはり帝都空港!大きいですな!」
白髪交じりの大男が満面の笑みで駆け寄ってきた。
体格はタカダよりわずかに大きい。ポロシャツの隙間から見える筋肉は
実に強靭と言った具合である。
「おっと、これはお初…ですかな?」白髪の大男はセンバへの挨拶もほどほどにタカダへ体を向けた
「今回ご一緒させていただくアオキと申します。」
手渡された名刺には株式会社ラダニーク調達部の文字と、竜に携わる者なら誰もが知る名前があった
アオキ隊長。15年前のセセリア機救助隊隊長である。
「あなたがタカダさんですか!センバさんからお話は聞いております!」
タカダ自身もアオキとの邂逅は予想外であった。世間では会見での嗚咽から“弱虫”とのバッシングもあったアオキ隊長だが
森岳地域から生還した人間は、史上わずか…それ故「竜とり」の業界でもアオキは一目置かれており
もちろんタカダもアオキにはかねてから尊敬の心を抱いていた。
「おお…ああ!あなたが!マジかよ…は、初めまして!」タカダから朝の眠気はとうに消えていた。
「老体で森岳に行くのは気が引けますが、若手ナンバーワンの竜とりさんがおれば安心ですな!ガハハハ!」
そう言いながら握手をする大男二人をセンバは無表情で見つめていた。
「ちょっとアオキさん!いきなり走らないで下さいよ!!」また違う声が一行に近づいてきた。
今度の男はやや細見であり、赤ぶちのメガネが知性を演出していた。それでも程よく筋肉がついた健康的な男であった。
「ああ!どうも!製造部門のリンデンです!」
赤ぶちメガネは少し高い声で名乗った。名乗っただけでアオキのように名刺は出さなかった、いや出せなかった。
両手が大きなバックで塞がっていたのだ。バックの中身が少し見えた、どうやら精密機器のような…
「うちから二名出します。ご存知かもしれないがアオキさん。あと製造のリンデンくん。」センバが簡単に彼らを紹介した。
「そして彼が竜とりのタカダ・オルゲイラさん。帝都空港からは我々4人で行きますので…」
大男が2人、背広が1人、メガネが1人。普通でいて普通でない異質な空気感が四人から漂っていた。
「今回は政府公認プロジェクト、大量の竜脳回収こそがスーパーコンピューター製造の要…皆さんよろしくお願いします。」
センバの声に3人が頷くと同時に、飛行船発着を知らせる場内の液晶掲示板が動き出す。
「帝都空港発、中綿京行き手続き開始」森岳地域への最寄り空港の文字が四人の心に静かに火を灯した。