表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

眠れない夜

作者: 柿原 凛

 翌朝6時のバスに乗ることを考えて、起床は4時。それを考慮すると21時半には完全に寝ておきたかった。床についてから3時間。一向に瞼が重たくならない。無理やりに瞼を閉じてみるも、ありとあらゆる想像や妄想が次から次へと浮かんできて、それだけでなくどんどん深まってゆく。普通ならこれが夢の世界への入口となるはずなのだが、僕にとっては逆効果。どんどん脳が活性化してゆく。前日や前々日に早めの時間に寝られるよう訓練しておけばよかった。大事があるときほど修学旅行前の小学生のように興奮状態に陥ってしまうものである。まるで哲学者にでもなったように脳内で議論は白熱し、辞書の海に飛び込んだように活字が目の前を通り過ぎて行く。ダメだ。今日は絶対に寝られない。

 そもそもとしてこの寝苦しい蒸し暑さが元凶なのではないだろうか。北枕だろうがなんだろうが向きを変えてもそのどんよりと生ぬるい空気が重くのしかかるように充満していて、風は無い。エアコンはリモコンの電池が切れ、扇風機は押入れの中でくすぶっている。というより出すのが面倒なだけだが。余るほどの保冷剤はみんな昨日ゴミに出したし、窓を開けても風が通り抜けていくことはない。

 この状況を打開しようとスマホで“眠れない”と検索してみる。すると検索結果がどっと目の前に現れた。真面目に見てしまうと画面を記憶して目を閉じても浮かび上がってきてしまうので、さらさらと小川を流れる笹舟をイメージしてスクロールしてゆく。炊くようなアロマは生まれてこの方買ったことなど無い。ホットミルクはこのクソ蒸し暑い中で飲みたくなんか無い。呼吸法は試してみるも、まじめにカウントして目が覚める。どれもこれも5分で寝られると謳っているが、もう既に2時間は経過している。検索した際に出てきた“入眠障害”という言葉が、自分には当てはまるのではないかと思いはじめた。

 深夜3時半。床についてからもう既に6時間経過している。だんだんイライラが募り始める。頭を掻きむしって解消しようとするも、どうにもならずに更にイライラしてくる。蒸し暑さは一向に変わらず、作りおきの氷をそのままおでこに乗せて朝を待った。すると急激な温度差のせいなのか頭痛がしだし、しかも溶けて顔面を伝って床まで滴り落ちていくと、更に湿気を誘っているような気がして、氷が溶けてびしゃびしゃになっているのか汗でそうなっているのかもわからず、不快感は増すばかり。さっさと寝てしまいたいのに、そう思えば思うほど頭が冴えてくる。早く寝たい。早く寝たい。眠たいではなく寝たいと本気で思ったのは初めてだ。30分でいいから。眠ったという実感と事実がほしい。もうどうせ起床してからの頭痛はひどいものだというのはわかっているのだから。心の満足のためにも、寝たい。

 僕のことを馬鹿にするように、タイムアップの鐘が鳴った。目覚まし時計を蹴り飛ばして、部屋の電気をつけた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 結局……て感じでしたね。 そんな夜ありますね。 まさに昨晩がそうでした。 今、うつらうつらしている感じです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ