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「空」 第6話

彼女が見せた、初めての笑顔だった。




茜は、他の人達の事も教えてくれた。



「あのー、会長の後ろに立たれていらっしゃる方が、あのー、楠木 守様です。 あのー、会長の御曹司で、今の会社の社長です」


「なるほど、一人息子か・・・。 という事は、隣にいる派手な御婦人が、社長さんの奥様で、宇宙〈そら〉の母親・・・で、社長さんが宇宙の父親。 一郎会長は宇宙の祖父になる訳だ・・・」



茜はまた目をパチクリとして、驚いた顔をみせた。



「・・・そうです。 あのー、よくお解りですね・・・」



(そりゃ誰にだって解る。 真ん中が会長で、その後ろに立っているのが息子なら、その隣に奥さん、会長の隣は孫と大体決まっている・・・)



まぁねと少しニヤけた顔を作り、後は?という感じで写真を見つめ、話しを促した。



「その社長の左隣、あのー、宇宙坊ちゃまの後ろに立たれていらっしゃる方が、今、不動さんがおっしゃられた、奥様、葉子様です」



(“〇き”・・・じゃなかったか・・・)



半分残念に思いながらも顔には出さず、茜の話しを聴いた。



「そして、あのー、社長の右隣にいますのが、私と同じ家政婦の、池田 ハツです。 あのー、ハツさんは戦時中から楠木家に仕えているそうです。 あのー、それから、会長の右側にしゃがんでおられるのが、東城 仁様で、会長の秘書です・・・」



(東城 仁・・・、写真ではなかなかの好青年に見えるが・・・)



「あのー、会長の左隣の宇宙坊ちゃまはもうお解りですよね・・・。 で、あのー、一番左が私です」


「なるほど・・・、ありがとう。 で、依頼を受けるにあたって・・・」


「えーーーっ!! あのー、受けて頂けるんですかーーーっ!?」



(あちゃ・・・)



話しが頭の中でくっつき過ぎていて、依頼を受けると言ってなかった。


俺の悪い癖だ。


推理しててもそうなんだが、話の辻褄が合いだすと、どんどん先に進んでしまう。



(よく哲さんに、「てめぇ!! また大事な事隠しやがったな!!」って言われるが、隠してた訳じゃない・・・、言えなかっただけだ・・・・・・・・・・同じ事だな・・・反省しよう。 今は、取り敢えず誤魔化しておくか・・・)



「まだ受けるとは言っていない・・・。 受けるにあたってと言ったんだ・・・」



(苦しいな)



「ですよね~・・・。 あのー、手が離せない物件があるって言ってましたし・・・」



茜はまた、俯いてしまった。



「・・・人の話しは最後まで聞け・・・」



(さっき、哲さんに言われたな・・・)



「受けるにあたって、聞きたい事が幾つかある。 それから報酬だ。 君は払えるのか?」


「あのー、幾らですか?」



(25、6の住み込みで働いている女の子に払える額じゃないが、これも仕事!! 心を鬼にして言おう・・・、試してみたい事もあるし・・・、これが葉子夫人なら、気使いなく言えるのだが・・・)



「まず、前金で25、成功報酬で25だ。 あと、諸経費がかかる・・・」


「うっ!?」



茜は、少し目を潤ませながら俺の目を見つめ、決死の覚悟をしたかのように言った。



「今、あのー、払えるのは15万しか無いんです。 残りはあのー、何とかしてあのー、必ず後でお支払いします。 これであのー、引き受けて頂けないでしょうか?・・・」



またあのハンドバックから、銀行の封筒を取り出し、俺の前に置いた。


俺が試してみたかった事は、金額を言われて、払えないって帰れば良し。


何とかしてでも払うと言った時、言葉は悪いが、使用人風情が何故そこまでして、御家の坊ちゃんを探そうとするのか?・・・



(何かある・・・)



俺はそう感じていた。




                    ・・・つづく


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