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「空」 第5話

俺は、セオリーも作戦も無視して、普通に質問を開始していた。




(塩沢〇きを、どう説明すればいいんだろう・・・)



キンピカバリバリとも言えず、装飾品の展覧会みたいな人とも言えず、悩みに悩んだ挙句に発した言葉がこれだ。



「御家の方々の写真ありますか?」



俺もまだまだだ。



「あのー、あります・・・」



彼女は、ハンドバックから1枚の写真を取り出した。



「この写真は?」


「今年の夏、あのー、会長の誕生日なんですけど、あのー、8月の11日に写真屋さんに、あのー、撮って貰ったものです」



その写真にはでっかいお屋敷と、恐らくそのお屋敷の庭だろうと思われる青々とした芝生が、写真の下一面に広がっていた。


その写真の中央に、1人の腰かけた老人と、老人を中心に女性3名と男性3名、計7人の面子が笑顔で写っていた。


その中の3人は知っている。


1人目は、学生服を着て老人の左隣に立っている宇宙〈そら〉、2人目は、その宇宙の両肩に両手を乗せ後ろに立っている塩沢〇き似の派手なおばさん。


そして3人目は、1番左端に写っている小林 茜だ。



(宇宙は背が伸びたな。 だが、顔はあの別れ際に見せた笑顔のままだ・・・、間違いない、宇宙だ!!)



俺は、茜に写真の説明を求めた。


茜は、さっきまでの冷静で丁寧な態度とは全く違い、身を乗り出して聞いてくる俺の態度に戸惑いながらも、説明してくれた。



「まずあのー、真ん中に写っていらっしゃる方が、あのー、このお屋敷の当主であります楠木 一郎様です・・・」



(ちょっと待て・・・、その名前、聞いた事があるぞ。 確か・・・、戦中に土地成金から金融屋になった“クスクスレイク”の会長の名前ではないのか・・・)



クスクスレイクとは、合法でかつ良心的。


いち早く法律の抜け穴グレーゾーンを見つけ、"これはいかん!! いつかしっぺ返しが来るぞ!!"と、即座に金利を下げた金融屋である。


2005年の法改正とともに、取り過ぎた金利は全て返しなさいと国から言われ、周りの金融屋があたふたする中、クスクスレイクは一人、難を逃れた。


因みにグレーゾーンとは、100万円借りると普通年利で15%しか掛けられない。


それが、法律の書き方の解釈によっては、27%まで掛けられた。


その15%~27%までの間を、グレーゾーンと呼んだ。


2005年の法改正は、そのグレーゾーンを無くし一番低い金利に設定したもので、今まで借りていた人達の金利を計算し直しその差額を返せと言われたのだから、金融屋は堪ったものではなかった。



「楠木 一郎?・・・ あの金融屋の?」


「あのー、ご存じなのですね・・・」


「あぁ、知ってる。 取り立てに暴力団を使わない、神様みたいな人だと聞いている」


「あのー、とてもお優しい方です・・・」



茜は、ニコリと笑った。


彼女が見せた、初めての笑顔だった。




                    ・・・つづく

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