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「空」 第45話

宛名も消印も無い、真っ白な封筒にそれは入っていた。




封筒を受け取ると、失礼と一言添えて本文を読ませて貰った。



「!? これは・・・・・」



遺書だった。


今までの経緯、計画の内容、人間関係、この誘拐事件の全貌が記されていた。



「・・・この、最後の“全てを清算して参ります”は、死ぬ覚悟・・・という意味だな?」



会長に問うた。



「不動君・・・。 あいつの好きに・・・、させて欲しい・・・・・」



会長の頬に、流れる光の数が増えた。



「・・・会長。 あんたはまた、間違いを犯そうとしている。 一つ目は、自分の子供の育て方。 それは、あんたがさっき認めた通りだ。 二つ目は、葉子夫人の過ちを隠した事。 その事で、夫人は一生罪悪感に苛まれる事となった。 この2つに、また間違いを重ねるのか?」


「!! 貴方に何が解る!? 私がどんな思いで・・・・・」


「解らないし、解りたくもない。 あんたの子供がどう育とうが、俺の知った事ではない。 しかし、人を殺したとなると、例えそれがチンピラであれ、ホームレスであれ、総理大臣であれ、命の重さは俺は一緒だと思っている。 誰の命でも、殺めれば当然罪を償わなければならない。 でもそれは、相手に対する謝罪と共に、当人の気持ちの中での救済にあたると思う。 その救済の機会が与えられなかった葉子夫人は、罪を永遠に背負う形になったのではないのか? そして、その罪意識が、今回の事件の、この葉子夫人の責任の取り方につながっているのでは? 俺にはそう思えてならない。 ・・・でも、その責任の取り方は間違っている。 自害して、何の責任が取れるのか? 宇宙〈そら〉への責任は? 捜査にあたった人間達には? 世間には? それにも増して、自分に対する責任は、死んでどう取る? 死んだらいけないんだ・・・・・死んだら。 ただ逃げるだけの死なんて、ただの無駄死にだろう。 どんなに辛くとも、どんなに苦しくとも、生きなきゃ駄目なんだ・・・清算するだなんて・・・死んでできる訳が・・・・・・・!?」



話していて、違和感を感じた。



(ちょっと待て。 清算する? 自殺だけなら、死んでお詫びをするとか何とか・・・。 !? 道連れにするつもりか!! 平井を!!!)



俺は、いきなり携帯を取り出し、短縮番号で電話をかけた。


いきなりのその行動に、周りは唖然とした。



「哲さん!! 俺だ! 奴は? 平井はどうなった???」


「探偵!!! てめぇ、何故現場を離れた!? まだ1人寝っ転がってたから良かったものの、誰もいなけりゃ、俺はただの愉快犯になってるところだったぞ!!!」



哲さんは、相当頭にきているらしい。


哲さんの言葉が、携帯のスピーカーから直接俺の脳に突き刺さって、一瞬目眩がした。



「!? そんな事はどうだって良い!! 奴はどうした???」


「そんな事だと!? ・・・平井なら、逃げやがったよ」


「何!? ・・・哲さん、よく聞いてくれ。 平井は狙われている」


「はぁ? 誰にだ!?」


「楠木社長の御婦人・・・葉子さんだ! 葉子夫人は、遺書を残して屋敷から姿を消した。 大至急探して欲しい!!!」


「何!? まったく、てめぇのヤマはいつも面倒臭ぇなぁ」



このヤマは、哲さんが俺にふったヤマだろうと言いたかったが、哲さんにはすぐにでも動いて欲しかったので、その言葉を飲み込んだ。



「哲さん。 時間が無いんだ・・・・・」


「かーーーっ。 わーーーったよ。 探してやるよ。 で、探偵、何か心当たり持ってんのか?」


「・・・いや、何も・・・・・」


「けっ! 良い御身分だな。 探偵! 保障はできねぇかんな!」


「解ってる。 恩にきる」



携帯を、もう一方の連絡先に向けた。




                    ・・・つづく

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