「空」 第41話
「良く聞け!!! 今、東城は誘拐犯となった。 隠し事をすれば、お前も同罪となる。 奴の居場所を教えろ!!! 立ち寄りそうな所でも良い!!! 言え!!!」
「あんた誰!? やっぱり警察なの!?」
山岸 礼子は、自分の勘違いに上塗りをしていた。
「そんな事はどうでも良い!! 言え!! 奴は何処だ!!!」
俺の剣幕に押されながら、山岸 礼子はおずおずと話し出した。
「・・・彼の家は高田馬場にあるの。 でも、そこにはいないと思うわ。 ・・・誰を誘拐したか知らないけど、きっとあそこだわ・・・」
「何処だ!!!」
「・・・・・あんた、警察でも取り立てでもないみたいね。 ・・・誰でも良いけど、情報が欲しければ、誠意を見せることね」
(・・・どうやら、どちらでも無い事に気付かれたらしい・・・)
山岸 礼子は、やっと優位に立てたと思ったらしく、薄笑いを浮かべながら俺を見上げた。
「金か? 面白い・・・。 払ってやろう・・・」
(こういうすぐにつけ上がる駄目女は、お灸を据えてやろう・・・)
片手に携帯を取り出し、あいつにかけた。
「・・・俺だ。 不動だ。 話を聞くのに金が要るんだと。 大門寺、悪いが金持って上がって来てくれ」
「何!? 1人じゃないの!? 誰が来るのよ!?」
ピンポーーーン
部屋に呼びベルが鳴った。
俺は、オートロックの解除スイッチを押し、大門寺を中に入れた。
山岸 礼子は、上目遣いにジーーーッと俺を見ている。
コンッコンッ
扉をノックされたので、鍵を開けた。
すると、大門寺が茹で上がった蛸のように、顔を真っ赤にして入って来た。
「オラッ!!! 何処のどいつじゃ!!! 不動さんにたかっている奴ぁぁぁ!!!」
山岸 礼子は、優位に立てた事に執着していたかったようだった。
「あっあんたこそ、だっ誰よ!?」
「こんのクソアマァァァ。 良く聞け!!! 俺が黒岩組の若頭ぁぁぁ!!! 大門寺 卓様だぁぁぁ!!!」
「えぇ!?」
とうとう出てきた本物だった。
山岸 礼子の優位は一挙に飛び去り、青ざめた顔だけが残った。
「大門寺・・・、このお嬢さんが、話を聞きたければ金をよこせと言っている」
「いっいえ・・・、私はただ・・・」
「ただ???」
大門寺が、言葉を被せて山岸 礼子を覗き込むように尋ねた・・・?
いや、脅した。
「!? あの・・・、話します。 野方に彼の行きつけの店があったんですけど・・・、この間閉まっちゃって、彼はそこを買ったんですが、店はやる気は無いようなんです・・・」
「野方の何処だ?」
山岸 礼子から、詳しい場所を聞いた。
「大門寺、後を頼むぞ! 黒岩にも連絡して、平井の自宅をあたってくれ。 俺は、野方へ向かう。 それから、車、借りるぞ」
大門寺は、“へぃ”と一言言って、車のキーを投げた。
車に乗って、すぐに携帯をかける。
「・・・哲さん、俺だ」
「!? なんだ探偵? なんかおめぇ、あっちこっち嗅ぎまわってるようだな。 そういやぁ、あれは事件になったんか?」
「あぁ、なった・・・」
「なにぃ~!? てめぇ、また隠してやがったな!? そんで今、どうなってやがんだ!!!」
俺は、哲さんに今までの出来事を、掻い摘んで話した。
「てめぇ~、どうしてそんな事になるまで、連絡してこねぇんだ!!!」
「悪ぃ。 忘れてた・・・」
「わす・・・って、この野郎!!!!!」
「悪かった。 で、哲さん。 野方まで来て欲しいんだ」
哲さんに理由を話し、野方で待ち合わせをした。
“俺らが行くまで動くな”と言われたが、そうはいかなかった。
・・・つづく




