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「空」 第37話

「不動さん、話は聞いてまっせ! 東中野へ向かいまっさぁ」




「東中野?」


「そうですぜ! 東中野に麗香のマンションがあるそうですわ。 電話をかけて、中にいる事を確認済でさぁ」


「了解した。 途中で警察に停められると厄介だ。 程々に急いでくれ」


「合点でさぁ!!」



大門寺は軽く速度を落とし、大久保通りから早稲田通りへと入っていった。



ブゥーーーッ ブゥーーーッ



「・・・電話ですぜ」


「解ってる。 ・・・不動です。 茜さんか?」


「はい。 私です。 頼まれてた事が解りました」


「早いな。 ・・・で?」


「旦那様、ハツさん、奥様はお屋敷においでです。 社長は、四谷の本社の社長室です。 東城さんだけが、所在が解りません・・・」


「・・・守社長も、東城の行方を知らないのか?」


「はい。 今日、朝一に社長室で打ち合わせだったそうですが、姿を見せていないそうです。 携帯に連絡を入れているそうなのですが、電波が届かないのか、電源を切っているのかつながらないそうです」



(このタイミングで姿を消したか。 宇宙〈そら〉は、東城の傍にいるとみて間違い無いだろう。 ・・・しかし、東城と平井は何処でつながっているんだ?)



車は、早稲田通りから山手通りを左折して、駅へ向かっていた。


山手通りは、地下に高速を通すとかで何年も工事をしていて道が荒れ、話す言葉も自然に震えた。



「解った。 ありがとう。 茜さんはそのままそこに居てくれ。 もしかしたら東城が会社へ行くかもしれない。 連絡が来たら教えてくれ」



有り得なかった。


宇宙が消え、東城が消えた。


この事件と東城が関わっているのは明白だった。


その東城が、今更会社へ行く訳もない。


ただ、今にも飛び出しそうな茜を止めておく方便だった。


携帯を切り周りを見ると、線路沿いの桜並木が緑のサマーセーターから、裸の王様のマントに衣替えをしている最中だった。


その線路沿いを走って少し小路に入ると、民間のパーキングに紺のベンツが停まっていた。


大門寺は、ベンツの脇に車を寄せた。



「どうよ?」



大門寺がドアに肘をついて、ベンツの相手に話しかけた。



「いえ、変わりありません」


「よし! 不動さん! 奴は中にいますぜ。 部屋番は501でさ~」


「解った。 ありがとう。 お前達はここに居てくれ。 それからチェーンカッターあるか?」


「うっす、これ・・・あっ!? いえ、あっしもお供させてくだせぇ。 不動さんに何かあったら大変でさぁ」


「相手は女だ。 何も無い。 お前達が来たら、かえって怖がって逃げ出すかもな。 特に大門寺・・・、お前はどっから見てもヤクザだ」



薄紫のダブルのスーツに黒のワイシャツを胸まで開けて、ダボッとしたスラックスに黒のエナメル靴。



(いきなりこんな奴が押しかけて来たら、俺だって逃げ出す・・・)



「・・・・・そぉすかぁ~。 ・・・解りやした。 此処でお待ちしていやす・・・」


「すまんな、大門寺。 そうしてくれ」



カッターをスプリングコートの中で抱え、俺は車から降り、斜め向かいの煉瓦色のマンションへ向かった。


マンションはオートロックになっていて中には入れず、まずは郵便ポストを調べる事にした。


501が山岸、301が田中となっている事を確認。


301のポストには、まだ新し目のアニメのシールが張られていた。


マンションを出て、電話を掛ける。



「・・・はい。 白猫ヤマトで~す」


「すみません。 急ぎで届け物をしたいのですが、取りに来てもらえますか?」




                    ・・・つづく


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