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「空」 第33話

「・・・楠木家の為じゃない。 金の為だ・・・」




「フフフッ」



茜は軽く笑いだした。



「? 何か変な事言ったかな?」


「いえ・・・フフッ」



チョイ悪で格好をつけていたつもりが、藪蛇になったようだった。



「じゃっ、早速仕事を頼もうかな。 守氏と東城氏の今日の予定が知りたい・・・」


「はい」



茜が紙を差し出した。



「えっ!!」


「これに書いておきました」



(・・・恐れ入った。 ここまで気が利く娘だとは・・・)



「有難う。 了解した。 ・・・そういえば、葉子夫人の件はここにいては無理だな」


「それでしたら、ハツさんと旦那様にお願いをしてきました」


「会長に!?」


「そうです。 全部はっきりと話した訳ではありませんが、葉子奥様を見守ってあげて下さいと・・・。 それから、ハツさんからは定時に毎回連絡を頂ける事になっています」


「・・・・・すべて完璧かぁ・・・・・」


「完璧だなんて・・・」



(流石だ・・・)



「俺は出かけて来る。 今日は帰れないかもしれない。 これは事務所の鍵、こっちは部屋の鍵」


「えっ?」



今度は茜が驚いた。



「俺は昨日、白いベンツに襲われた。 茜さんもだったね・・・」


「はい」



空気が多少重くなった。



「まだ警告のうちで済んでいればいい。 済まなくなった時、茜さんも俺も今度はもっと過激な状態で狙われる。 俺たちは“車で轢くぞ”という警告を無視するんだからね。 ここも安全だとは言えない。 俺の事を襲って来た以上、この場所もばれている可能性が高い。 なので、居住区の鍵も渡しておくよ。 ここはね、元々ヤクザの事務所でね、造りがしっかりしていてある程度安全だと思う」


「ありがとうございます」


「じゃっ、行ってくるよ。 あっ! 戸締りはしっかりね」



軽くウインクをする素振りを見せ、外に出た。


扉が閉まる際に、“いってらっしゃい”という、聞き慣れない言葉を背中に受けた。



(・・・悪くない)



こんな事は初めてだったが、この1日の始まり方は、良き日になりそうな予感がした・・・。


今はまだそう思っていた。


区役所通りを大久保方面に折れた。


朝だというのに、バッティングセンターからは轟く快音が響いていた。


職安通りを突き抜け、大久保のホテル街に入る。


入り組んだ細道を抜けると、和風というよりも昭和一桁に建てられたような屋敷に出る。


楠木家の屋敷の方が、まだ近代的に見えるぐらいだった。


門先に着くと、すぐさま黒服の男達が出てきて“何用か?”と尋ねられたので、“黒岩に呼ばれた”と告げた。


組長を呼び捨てにされた事に腹が立ったのか、胸座を掴まれて凄まれた・・・と、その時、門の横にある木戸が開いて、若頭の大門寺が姿を見せた。



「よっ! 大門寺! 久しぶりだな。 こんな格好のままですまない・・・」



胸座を掴まれたまま、軽く左手を上げ笑顔を作った。


この状態を見た大門寺は、目をまん丸く見開きすかさずその黒服の脇腹に思いっきり蹴りを入れた。



「ゴフッ!!!」



黒服は即座に蹲り、唸りを上げた。



「てめぇ!!! なにしてやがんだこの野郎!!! この方は組長の客人で古くからの御友人だぞ!!! その方に手ぇ上げるたぁ許せねぇ! ぶっ殺してやる!!!!!」



大門寺は、蹲っている黒服の後頭部を踏みつけるように蹴りを入れようとした。



「待て! 大門寺。 奴は俺が誰か知らなかったんだし、許してやれ。 第一、俺と黒岩は仲良くも無ければ古くからの友人でも無い。 そこは何回も言っているだろう。 間違えるなよ・・・」


「はい! 不動さん。 すいやせんでした。 こいつにぁよーく言い聞かせやすんで!!」


「暴力は無しでな・・・大門寺。 言えば解るよ」




                    ・・・つづく

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