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「空」 第2話

(虫の知らせ・・・まさかな・・・そんな事ある訳がない・・・)



と、考えを振り払うが、到底消えるものでも無かった。




不動 武 40歳 歌舞伎町の外れ、雑居ビルの2階で探偵業を営む。


従業員は1名。


そう俺だけ。


マル暴の哲さんとは、ある事件で知り合い、それから冗談も嫌味も言える間柄になった。


そのある事件とは・・・、長くなる。


また今度話そう。




暫く黒電話に手を置いて考え事をしていた俺を、黒電話が手が邪魔だと言わんばかりに叱咤した。


ジリリリリリーン!!

ジリリリリリーン!!



(わかったよ)



受話器を上げた。


ジリッ



「はい・・・」



何か嫌な予感がしたので、あえてこちらからは名乗らなかった。



「・・・・・・・・」


「もしもし・・・」


「・・・あのー、不動探偵事務所の方でしょうか・・・?」



(!! 女の声・・・それもちょっと若く感じるが・・・)



頭の中に塩沢〇きをイメージしていた俺は、拍子抜けした感じになった。



「そうですが・・・、ご依頼ですか?」



ここですぐには名前は聞かない。


相手は迷ってる節がある。


迷っているうちは、嘘を吐かれる恐れがあるからだ。


特に電話なら尚更の事。


相手と会った時に聞けばよい。


相手に会えなければ・・・、それまでだ。



「あのー、あのー、そちらに伺おうと思ったのですが、あのー、場所がよく解らなくって・・・」



緊張しているのか、それとも病気なのか、言葉を選んで喋っている・・・。



(今回は断っておくか・・・。 塩沢〇き似の婦人の方が気にかかる・・・)



「ご依頼であれば、今、お受けする事ができません。 手が離せない物件がありますので・・・」



あえて冷たく事務的に言ってみた。



(俺も警察の事は言えないな・・・)



歯に噛みながら煙草に火を点けた。


と、その時!!



「あの!! それでは困るんです!! それでは!! 取り敢えず会って下さい!! あのー、会って話しだけでも・・・、で、ないと・・・あのー・・・私・・・私・・・」



煙草を落としそうになったのを唇で堪え、目を白黒させながら咄嗟に受話器を耳から離して、相手が見える訳でもないのに受話器のスピーカーを眺めた。



「#$%&¥+*<>?!!」



耳がキーンとしている。


耳の穴を塞ぐように叩いて、聞こえるかどうかを確かめてから、気を取り直して話してみた。



「落ち着いて喋ってくれ・・・。 そのトーンでいかれると、俺の耳がもたない・・・」


「あっ! あのー、ごめんなさい・・・」



少し沈黙が続いた。



「・・・解った。 話は聞こう。 事務所の場所が解らないと言っていたな。 今、何処にいる?」


「今?・・・えーっとあのー、歌舞伎町の一番街通りの入り口の電話ボックスです・・・」



今時、黒電話も珍しいが、電話ボックスも珍しい。


携帯があるだろうに・・・とも思ったが、相手に電話番号を知られない方法としては最適だ。


今、固定電話でも番号通知をするものがある。


携帯で非通知にして掛けると、警戒されて出ない可能性が高い。


彼女の場合、どうしても俺と話したいらしいから、それでは困る。


公衆電話だと“公衆電話”と、表示されるので、警戒も薄れる。



(結構彼女は、頭の切れる用心深い人物かもしれない・・・。 でも、うちは黒電話だけどな・・・)




                    ・・・つづく

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