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「空」 第25話

狙われている理由が解らなかった。




「この間の日曜日の事だ。 私と宇宙〈そら〉は、天気が良かった事もあって散歩に出かけたのだよ。 その時に宇宙が突然変な事を言い出した。 “最近ね、よくあの白いベンツを見るんだよ”・・・えっ!? と思い、宇宙が指指した先を見ると、確かに白いベンツが発進しようとしていた。 あれはヤクザ者の車だよ。 後部座席の窓ガラスにフィルムを貼ってて顔は見えんかったがな。 運転手は紫の派手な服にパンチパーマをかけていた。 こちらに気づかれたと思ったのか、我々から離れていった。 私の取り越し苦労かもしれんが、宇宙は私の宝だ。 遺言書の件もあって、私は宇宙を黒岩組に預けたのだ」


「その運転手の顔に見覚えは?」


「・・・いや、無い・・・」



一郎氏は、俯き加減で首を横に振った。



「・・・で、会長はもしそのベンツが宇宙を狙っていたんだとして、奴らに捕まったら宇宙はどうされると考えている?」


「最悪は・・・、 殺されるのではないかと・・・」



俺の後ろの方で、ハッと息を飲む音がした。


俺は視線をうしろに向けてはいたものの、顔、体は一郎氏の正面から離さず話を続けた。



「・・・なるほど。 では、今この3人がここに居てこの話をしたという事は、今ここにはいない守氏や葉子夫人が怪しいと会長は思っているんだな?」


「・・・解らん。 ただ宇宙は護ってやらねばならんのだ!」



目を見開いて俺の目をジッと見た。


自分の家族を疑いたくはない・・・、察して欲しいと訴えているようだった。



「遺言書の在処を知っているのは?」


「・・・弁護士と私、そして東城だけだ」


「東城・・・? 秘書の東城 仁・・・」


「そうだ・・・。 私の秘書を2年近くやっている・・・、あっ!? もしかして東城が?」



一郎氏は、新しい大陸でも発見したかのような驚き顔を作っていた。


「・・・そうあって欲しいと思うのは勝手だが、まだ何も解っていない。 結論を焦らない事だ」



(唯一、楠木家の血と繋がっていない人物だからな。 気持ちは解らんでもないが・・・)



「あっ、あぁ申し訳ない。 そうだな・・・」



(気になる・・・、会長が東城を可愛がっていれば、会長は今の考えを捨てただろう。 俺が鎌をかけた意見も、否定しないで誤った・・・。 そう思っていたとみて、間違いないだろう。 となると、会長と東城は上手くはいっていないと見るべきか・・・)



「・・・会長、会長は東城氏をどう思っている? ここ半年ぐらい屋敷にも近づいていないようだが?」


「・・・どうと言われても・・・。 私は今まで秘書というものを雇った事が無かった。 それなのに守が“親父も歳をとったのだし、記憶もあやふやになってきているだろうから、秘書を雇おう”と言い出し、私は“要らん!!”と、言ったのだが、どうしてもと押し切られ東城を紹介された。 無理矢理というのもあって、私はあまり東城に仕事を任せてはおらんのだ・・・。 好きとか嫌いとかの感情は特にない」



(会長の話している姿を見る限り嘘ではないようだが、茜は東城に“知っているぞ! お前の秘密”と、言われている。 会長がこの事を聞いていたなら、もう少し感情が入っていてもおかしくない・・・)



暫く沈黙が続いた。


重苦しくはなかった。


俺は、宇宙をどうやったら護れるかを考えていた。



「内容は大体解った。 身辺警護は基本的に俺の仕事ではない。 武術の有段者でもなければ、喧嘩がもの凄く強い訳でもない。 ただプロレス好きぐらいなもんだ」



茜がクスッと笑った。




                    ・・・つづく


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