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「空」 第14話

(・・・やっぱり鋭い・・・)




「・・・で、話とは?」



感心している事を、あまり気取られないように話しを進めた。



「はい。 昨日の晩なのですが・・・」



茜の話とは、宇宙〈そら〉の捜索を俺に依頼した事を皆に話した事だった。


茜の判断だが、“話をした方が、宇宙坊ちゃまの捜索がスムーズにいくのではと思ったからです”と。


皆の反応としては、会長は目を瞑ったまま表情を変えなかった。


守社長は、一瞬驚いた感じだったが、笑顔で“解った”と言った。


葉子夫人は、“勝手な事を”と怒った。


ハツさんはニコッとした。


で、その後、会長とハルさんだけに“不動さんに昔の事から全てを話した”と言った。


流石の会長もハルさんも、それにはビックリしたらしいが、“お前が良いのなら・・・”と、解ってくれた。


東城には、その時屋敷に居なかった事もあり、話をしていないという事だった。



「不動さん・・・。 その依頼について、会長が不動さんと話したいと仰っているのです。 今日の3時にお屋敷に来て頂けませんか?」


「時間を変えてくれ。 3時にはやる事がある」



間髪入れずに答えた。



「えっ!? あっはい。 では何時なら・・・」


「4時に行くと伝えてくれ」


「解りました。 4時と伝えておきます。 私の用件は済みましたけど、不動さんの頼み事とはなんでしょう?」



俺は茜に頼み事を話した。


学校に電話をして、一昨日の朝、宇宙が何時に登校をして、何時に下校したのか、葉子夫人も確認していたが、今一度茜自身で確認して欲しいという事。



「これは、すぐにでもやって返事をくれ。 それから・・・」



楠木の人達から話を聞くのはもう少し後だと思っていたが、今日会長に会うのなら今日中に皆に会っておこうと、今日の皆の行動を解る範囲で良いから教えてくれと頼んだ。



「今日の4時までに調べておけば良いですか?」


「それで良い」


「解りました」



茜の話の最中にウェイトレスが持って来た、俺はジンジャーエールを、茜は紅茶を飲みながら話をしていた。


茜には、お茶よりも紅茶が似合うと思った。



「それにもう1つ・・・」


「・・・はい」


「君と俺との間に時間は関係無い。 朝早いとか、夜遅いだとかだ。 君が必要だと思った時点で連絡をくれ。 気遣いは無用だ」



俺は、恰好をつけて言った。



「はい。 これからはそうします。 今回の会長の話は、お昼過ぎでも間に合うかと思っていました。 それに・・・」



茜は言い辛そうにした。



「・・・? 気遣いは無用だ」


「・・・はい。 ・・・不動さんに昨日事務所でお会いした時は寝起きかなと思って、今日もまだ起きてはいらっしゃらないかと思ったものですから・・・・・」



(・・・バレてる)



茜は笑顔で話してくれたが、俺は恰好をつけた分、恥ずかしかった。


茜は屋敷に戻り、俺は明治通りまで戻って、哲さんに電話をした。



「珍しいな探偵! 婦人でも行ったか?」


「いや・・・」



昨日1日の出来事を、簡潔に話した。



「・・・ほぅ。 事件になりそうなんか?」


「まだ始まったばかりだ。 何も解らん」


「じゃっ何だ!」


「見て欲しい物がある。 それと聞きたい事も少し・・・」


「俺は午前中署にいるが、ここにおめぇが来ると上役が五月蠅ぇ。 外で会ってやる」



会いたい気分が一遍に失せたが、これも仕事だと言い聞かせた。



「ガード下で待っている」



返事を待たずに電話を切った。


俺は、ビジネスマンやOLで賑わい始めている明治通りを突っ切り、靖国通りのガード下を目指した。




                    ・・・つづく


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