先を越された??
吉田君たちとこのまえ遊んだ公園にいる、与える男と梓。
冬の寒さがピークになる2月。
公園はかなりの寒さだったが2人は気にならない。
ベンチに座る2人。
与える男の手には預金通帳。残高は30万円ある。
この半年間2人が貯めてきた努力の結果がこれだ。
「あなたがパチンコで使わなければ、50万はあったのよねえ、、、」
梓が恨めしそうにつぶやく。
「ごめん、、、また山にでもこもるか、、、」
与える男はすまなさそうに梓に言う。
いろんなことを乗り越え、梓の父さんの許しも得、与える男には
2人の間には何の障害もないように思えた。
目の前に進む道が見えてきたような感じがする。
「半年間で30万かあ。少ないなあ。卒業する4年後には
300万は貯めたいわね。でもそれでも結婚するには足りないんでしょうね」
梓は言葉を続ける。
「でも私、卒業したら結婚したい!どんなに貧乏でも構わない。
ねえ、そうしましょうよお」
「そうだね、それを目標に頑張りたい。2人で協力すれば
できるんじゃないかな」
2人は楽しそうに将来を語り合っている。
すべての物が僕たちを祝福しているような気がする。
こんな安らかな気持ちになったのは初めてだ。
与える男は梓を見つめながらそう考える。
4年後に結婚。
人生の目標ができた与える男は、なお一層の努力を誓った。
ふと見ると吉田君が公園にやってきた。
重い足取り、暗い表情
とぼとぼと与える男と梓のもとへやってくる。
「吉田君、暗いね?どうしたの?」
「どうしたもこうしたもあれへん、、、おれは元気やで
ところでな、2人に報告があってここへ来たんやけど、聞いてくれるか?」
「なあに?どうしたの?」
梓はやさしく微笑んで吉田君に聞く。
「実はな、、、俺、春に籍入れることにしたんや、、、薫と」
2月の風は3人の周りを吹きまわる。
風に吹き上げられる落ち葉を目で追いかける吉田君を
いつまでも黙って見ている、与える男と梓だった。
第10話 完
よくここまでたどり着いた!
ラストのべたべたな終わり方を考えてから
約半年。
まだありますので最後まで付き合ってくださいね!