イブにバイトも悪くない
結局イブは、バイトをすることになった与える男と梓。
彼らが働くテーマパークはクリスマス仕様の
飾り付けで、大きなクリスマスツリーまでそびえたつ有様。
また、客層もほぼ若い男女のカップル。
みな、思い思いにイブの夜を楽しんでいる。
園内にはクリスマスの定番ソングが流れる中、
与える男は、吉田君のいない厨房に立つ。
一方梓も、案内所でバイト中。
普段と変わりない表情、態度。
イブにデートできなくてすねた様子は、少しもないように見える。
「すいませーん!!ツリーはどこにあるの?」
若い男女が案内所にやってくる。
「いらっしゃませ。クリスマスツリーですか?」
梓がにっこりその男女に笑いかける。
「ツリーでしたら目の前の広場にありますよ。
目ん玉ついているんですか?お客様?」
、、、わーんこのおねえさんこわーいと言いながら
若いカップルは案内所から逃げていく。
やっぱりその営業スマイルの下には
やりきれない心情が隠されているらしい。
梓が売店を見ると、与える男が必死で梓に向って手を振っているのが見える。
梓は与える男に向かって少し手を振り返すと
物憂げな表情を浮かべ
ため息をひとつ
ついた。
「やっぱり、、イブに仕事はいや、、、」
売店では、相変わらず忙しく働く与える男。
その姿をじっと見る店長。
「よし!30分ほど休憩してこい!」
「え?いいんですか?今忙しいのに、、、」
恐縮する与える男。
店長にっこり笑って
「いいよ、遠慮するな!今日はありがとな!
お前も彼女と遊びたかっただろうからな、、
それに、、
案内所の子がぶすっとしていると、うちとしてもちょっと困るんだよなあ
行って慰めてきてくれんか?」
みるみる笑顔になる与える男。
店長に一例をする。
「ありがとうございます!行ってきます」
走り出す与える男。
案内所の扉を開けると、梓に向って叫ぶ。
「梓!今からちょっとツリーまでいかないか?」
「ツリー?」
「そう!ツリーだよ!すいませーん!ちょっとこの子借りまーす!!」
そういうと与える男は強引に梓の腕をつかみツリーの下まで連れてくる。
「どうしたのよ?急に、、なんでツリーなの?」
与える男は、制服姿の梓をじっと見る。
さまざまなイルミネーションに照らされた梓は、
赤に、青に、緑にと、刻々と色を変えていく。
「昨日ね!吉田から聞いたんだけど、このツリーには伝説があってね
イブの日にこのツリーの下でキスをしたカップルは一生結ばれるんだって!!」
「ほんと?なんかうそっぽいわね、、
でも、ダメもとだし、、、してみる?」
そう言うと梓は与える男の腰に手を回す。
与える男も梓の腰に手をまわし、
2人はキスをした。
「伝説が本当ならいいわね、、ありがとう、、
出会って最初のイブに少しだけどいい思い出ができた、」
「来年は必ずすばらしい思い出を作るよ!!」
「うん!もしまだ付き合ってたらね!!じゃあ戻るね!」
そう言い残し、梓は案内所へと走っていく。
「らら、、、、来年も付き合ってたらなんて、、、
付き合ってるにきまっている!!」
梓の最後の言葉に不安になる与える男も、ぶつぶつ言いながら売店へと戻っていく。
また、案内所に立つ梓。つんとしてた表情が少し和らいでいる。
「あのーすいません」
また案内所に客が来る。よく見るとさっきの若いカップルだ。
「あのー機嫌直ってると思ってまた来たんですけど、、、
トイレどこですか?」
梓は最高の笑顔をみせる。
「はい!トイレでしたらそこの角を右に曲がったところです。」
すると若いカップルは2人でこそこそ話、、
「な!機嫌直ってただろ!なんたっていまそこでキスしてたんだから!」
「ほんとだー」
、、、梓はそれを聞いて真っ赤になる、、
「あ、、あんたたち見てたの?」
「うん、あの広場にいてた人全員見てたよ!だって案内所の制服着て目立ってたから、、」
若いカップルが案内所を出て行ったあとも、梓の赤い顔が戻らない。
はあ、、やっぱり今年のイブは散々だ、、、
そう考える梓だった。
、
嫁がこれを読んでいるらしい、、、、、、、、、