理屈はええねん!
「俺ってな、恋愛ドラマとか恋愛小説とか
嫌いやねん」
あの、地獄の厨房も冬を迎え
快適な空間となっていた。
与える男と吉田君が厨房に立っているが
少しもつらそうではない。
あの夏のつらかった日々がうそのようだ。
「女の子の気持ちも、分かろうとも思わへんし
わかりたくもないなあ、、
要は俺を受け入れるか
受け入れないかだけやから、、
俺にとっては向こうの都合なんて
どうでもええねん
そんな俺が、相手の気持ちがどうこうっちゅう
恋愛ものを見て、面白いと思うわけあらへん」
吉田君はさっきから厨房で1人で
しゃべりっぱなしだ。
「吉田君、、さっきから何いってんの?」
与える男、心ここにあらず的な言い方。
「そこでや、、ここに恋愛映画のチケットが2枚ある、、
よかったら誰かといったらええんとちゃうかなあ、、と思って」
与える男
仕事を中断して吉田君を見る。
「いらない、、、1人で行ってもつまんないし」
「いやあ、、誰かを誘えばええんちゃうかなあ、、、」
そう言うと吉田君はおおきく被りを振る。
「あああ!俺に回りくどい話はやっぱりでけん!!
与える男!!
何で梓にひどいこといったんや!!
なんでお前はそんなに変ってしまったんや!!」
手を止めた与える男が
仕事を再び始める。
忙しく手を動かす与える男。
「梓が僕を完璧ないい人だと勘違いしていたから
それは違うよと、教えてやった。
そうしたら梓が怒ってね、、
いわば、、、
彼女は「与える男」が好きであって
僕のことが好きではないんだ。」
それを聞いた吉田君。
わなわなと震えだす。
がしゃーん!!!
吉田君が不意に持っていたフライ返しを
床にたたきつけた。
「理屈はええねん!理屈は!!ねちねちした男やのう!こら!!
おれが聞きたいのは向こうがどう思っているか
ちゃうねん!!
向こうがどう思ってるかなんて俺は
まったく興味ないんじゃぼけ!!
おまえはどう思ってるかや!!
どうやねん!まだ好きなんか?」
「、、、、、、」
難しい顔をしている与える男。
一言も言葉を発しない。
すると、何を思ったか吉田君は
レジ袋の中にさっき揚げたポテトを
ザクザク詰め始めた。
袋いっぱいにつまったポテト。
もう食べ物には見えない。
「当店の新商品、メガポテトや!!
これ持って案内所行ってこい!!
すんませんでしたって、言えよ!
もしかしたら許してくれるかも知れんぞ!!」
ははは、、、
苦笑いをする与える男。
「そんなポテト誰も食べないよ、、
ビニールが溶けてて体に悪そうだし、、」
「だから理屈はええっちゅうねん!
頭で考えるな!!ちOこでものを考えろ!!
おっ立てたほうに歩いていけば間違いあれへん!!」
あはっはは
笑い出す2人。
与える男は
こんなに笑ったのは久しぶりだと思った。
ここに久しぶりに来て
少し心のモヤが晴れた、、、、
来てよかった、、と思う
与える男であった。
寒い、、家の裏の雪がまだ溶けていません、、、