消えた与える男
いったいどこが良かったんだろう?
今まで何をしていたのだろう?
あんな精気のない姿をさらして
それでいて開き直って
これが本当の僕だなんて、、、、
あんな奴だとは思わなかった。
何事にも精一杯努力して
自分をかえりみず人にやさしい。
馬鹿がつくほど正直で
まっすぐな人。
笑顔が抱きしめたくなるほどかわいい。
そんな人が好きだったのに
今は別人。
どこにいったの?与える男
出てきて私に姿を見せて
梓は上を向き、下くちびるを
かみしめながら歩く。
梓の足取りがあやしくなる。
そして
とうとう道端に座り込む。
一粒、二粒と
アスファルトに落ちる涙。
下唇をかみしめて
泣くのを我慢してもダメだった。
座り込んだまま携帯をとりだし
薫に電話する。
「か、薫ちゃん?
いないの、、与える男がいなくなったの、、」
「え?吉田が言ってたあのパチンコ屋で
会えなかったの?」
「いたけど、、いたけど
違う、、あいつは私の好きなあの人じゃない
別人になっていたの、、」
「おう吉田やけど!梓どないしたんや」
薫の電話に吉田君が出る。
梓は吉田君に一部始終を話す。
「なんやて、、、、
金貸せってぬかしよったんか、、あいつ、、」
「そうなの、、、まるで人が違ってた、、、」
吉田君はうーんと唸って梓に言う。
「でもな、、梓
今のだらしない姿もあいつの一面やとは思わんか?
あいつはいつもいつも、真面目で正しいことばっかりする
訳やないで。
そういえば、おまえら結婚するとか言ってたなあ、、
ずっと一緒にいようと思ったら
いい所も悪い所も、相手を認めてやらな」
「でも、、、今の彼とはもう会いたくない、、」
「そうか、、それはお前ら二人の問題やから
好きにしたらええけど、、、
人間ってええとこばっかりのやつなんかおれへんし
だいたい、いつもいつも品行方正で
人はおられへんって、、
そこらへんのことよう、考えたりや、、」
与える男を好きになったのに
与える男ではない部分を認めなければならない、、、
まだ若く、夢見がちな梓にとって
それは難しい問題だった。
広島東洋タイガース、、、、
カープファンの人ほんとごめんなさい!!