第九話 自由
少し楽になった気がする。
人のことを考えなくてよい。
品行方正である必要がない。
つまり、決まりを守る必要もない。
ルールなんて関係なくなった。
あれこれうるさい奴らは相手にしない。
これからは、自分のやりたいように
生きれる。
そんな気がした。
押しつけられた、考え方から
解放された与える男は
それからも毎日パチンコ屋へ通った。
学校もバイトもたまに行く程度。
ほとんど一日をパチンコ屋で過ごしていた。
資金はバイト代がまだたくさんある。
それにたまに勝つ時もある。
今日も朝からパチンコ玉を
はじく与える男。
昼間のパチンコ屋は
暇なおばちゃん。
何の仕事をしているかわからない怪しい人。
与える男と同じような学生。
で、あふれかえっている。
今日は与える男、ツイているようだ。
足元にあふれかえるドル箱の山。
上機嫌で打ってると
隣のおじさんが話しかけてくる。
「おお学生さん、よく出すね!」
年は40過ぎくらいだろうか。
短く刈り込んだ頭に鋭い眼。
いったいそのおじさんは、何の仕事をしているか
与える男には見当がつかない。
なぜか、右手薬指に大きな指輪を
している。
「いやあ、、たまたまですよ、、」
「いいねえ、若いとヒキも強いからなあ!
うらやましいよ!」
そのおじさんは屈託なく笑う。
「いやあ、、パチプロにでもなろうかなあ?」
与える男、おどけながら言う。
しかし、パチプロという言葉を聞いた瞬間
おじさんは顔を少し曇らせる。
「学生さん、、それは冗談でも言っちゃいけねえな
世の中にパチプロほどケチくさくて
悲しい稼業はないんだぜ、、
見てみろよ
ほら、そこに汚ねえおっさんがいるだろ?」
おじさんが言う方向には
年は60ぐらいの老人がいる。
老人は何かとツイている客に話しかけ揉み手をしている。
そして忙しくコーヒーやタバコをその客に持って
行っているようだ。
「あのおっさんはああ見えても昔は
この辺を肩で風切って歩いていたんだぜ
そこらじゅうのパチンコ屋を荒らしまわって
店におっさんが入ってきただけで
店員はいやな顔をしてたものさ、、、、
それが、時代には勝てず落ちぶれて
今じゃ、パチンコも打てず
勝っている客の使いをして
100円200円もらってその日をしのいでるんだぜ、、、
だいたいあのおっさんが死んでも誰も引き取り手もない、、
あいつの棺桶は間違いなくゴミバケツだ、、
学生さんはその覚悟はあるのかい?
ところで、、
パチンコで勝つにはどうしたらてっとり早いかわかるか?」
「え?釘を読むとか、、、ですか?」
「釘を読むなんてめんどくさいことをするよりも
店から聞き出すんだよ、、、直にな」
「そんなことできるんですか?」
おじさんはにやりと笑い煙草を揉み消す。
「バイトとかでもいいから
話しかけて仲良くなっておく。
そしてちょっと飲みにでも連れて行ってやる。
ぬるい店だったら
釘を触る台だけバイトにガラスを開けさしてから帰らすなんて
馬鹿なことしている所もあるからな、、
そんなちょっとした情報を聞き出して
台を絞り込む。
それだけでもライバルとは大きな差がつくのさ、
雑誌とかで書いているみたいに
パチプロはスーパーマンじゃない
みんな似たようなことをしている
ケチくさい連中なんだ。
それよりもっと手っ取り早いのは、、
ゴトだ、、
要はいかさまをして当たりを引くってことだ。」
「そ、、そんなことできるんですか?」
「ああ、、世の中に人間の言うことをきかない
機械なんてないからな、、、
詳しくは言えないが、、、」
おじさんは頭をたたき照れ笑いをする。
「いけねえ!説教臭くなっちまったなあ!
年食った証拠だなあ!!
学生さん!
おっさんの長話につき合わせて悪かったな!」
与える男はおじさんの頭をたたく左手を思わず凝視する。
その左手小指は第一関節からなくなっていた。
ホールでは相変わらず老人が愛想笑いをふりまいている。
その哀れな姿を見ながら
与える男は少し考え込むのだった。
北斗2チェ復活!!
ユリア付き2チェだとほぼ確定らしいですねえ
面白そう、、
パチンコに興味ない人、、、
おいてけぼりでごめんなさい!!