親父の言葉
「ああ、心配かけたな、、大丈夫だから、、」
親父だ。
母親の携帯からかけてきたらしい。
「車で走ってたらな、バイクで事故ってる人がいて
道で伸びてるもんだから、急いで助けようとしたら
あとから来た車にひかれちゃって、、
まあ事故ったっていっても
転んだ程度だけどな、
その時、頭打っちゃって
今でも痛むんだよ」
「大丈夫?元気そうだから安心したけど
気をつけてくれよ!
親父も年なんだから、、」
おやじの元気そうな声に
ひとまず安心する与える男。
「それよりも、バイクの人が心配だよ、、
肩を押さえてうめいていたから
骨折でもしてるんじゃないだろうか、、、
それから、、
梓さんいるんだろ?
誕生日楽しみにしていると伝えてくれ、、
そして
この、どうしようもない息子を
どうか見捨てないでくれと、言っといてくれ。」
「どうしようもないとはなんだよ、、、」
「おい!おまえは人様の迷惑にはなってないだろうな
日ごろから言っていることだが
おまえは与える男になるんだぞ!
梓さんにすべてを与えて、
そして抜け殻になって、おまえは死ね!
わかったか!」
「電話で説教はやめてくれよ、、」
「幸せになるんだぞ、、じゃあな」
親父からの電話は切れてしまった。
そして、2人はレストランから出て
夜の街を歩き始める。
もう2人の携帯は鳴らないようだ。
2人だけの時間が流れる。
それにしても、
さっきの電話、、
何でかけてきたんだろう。
いつもと同じことをわざわざ、
母さんの携帯まで借りて、、
帰って話せば済む話なのに。
年取った証拠かな?
与える男は不思議に思う。
「どうしたの?考え込んで?」
「さっき親父はなんで電話してきたんだろう
と思って。
いつも親父が口癖のように言っていることを
わざわざ、電話までしてきて言うんだよ。」
梓は夜空を見上げる。
「心配なのよ、、あなたのことが、、
気にかかるから、電話してくるんじゃないの?」
そうかなあ、、与える男も夜空を見上げる。
町の光にさえぎられ
数えるほどの星しか見えない都会の空。
そして、2人にとって
この日の夜空は思い出深いものとなった。
寝ます