祈り、願う
与える男の家の前。
門の前に立つ梓と与える男。
「ちょっと待って」
チャイムを押そうとする与える男を制す梓。
鏡を見て身嗜みをチェック。
うんうんとうなずく梓。
「チェックよし!さあいくわよ!」
チャイムを押す与える男。
すぐに両親が出迎えてくれた。
「こんにちは。あなたが梓さんね。
噂はこの子から聞いてるわよ!どうぞ中に入って!
満面の笑みで母親が出迎える。
「こんにちは!失礼します!」
元気いっぱいに挨拶する梓。
「こんにちは!お父さん!」
親父にも挨拶する梓だが
なぜか親父はむすっとした顔
小さな声で
「、、、こんにちは」
と言ったきり黙っている。
小さく手招きをして与える男を呼ぶ親父。
玄関の外へ出て何やら二人で
小声で話している。
「む、、むすこよ、、!
お、おまえ本当にあの超美人と付き合っているのか?
あり得ない、、信じられん、、うらやましい、、」
「うん、本当に付き合ってるよ」
「ああーということはゆくゆくは結婚する
可能性も少しはあるってことだよなあ、、、
もしかして結婚して同居したりして、、、
もしそうなったらどきどきだなあ
あーあいいよなあ、おまえ
俺も美人と結婚したかったよ、、
お前も知っての通り
お母さん小太りの
ちんちくりんだろ、、、
おまけに年とって
もう二目と見られない、、、」
「ちんちくりんで悪かったわね!!
くだらない話なんかしてないではやくはいりなさい!」
親父の背後には母さんが仁王立ちしてにらんでいる。
梓は微笑んでその様子を見ている。
家の中に入ると
普段は見たこともないようなごちそうが並んでいる。
梓を精一杯もてなそうという
両親の気持ちがうかがえる
テーブルの上の料理。
テーブルについた4人。
「おおーこうしていると
本当の家族のようだ!!」
親父が開口一番叫ぶ。
「お父さん!なにいってんの!
ごめんなさいねえ梓さん。
でも女の子が一人いると華やかねえ
私、娘が欲しかったから
夢がかなった気分よ」
梓、微笑む。
「こんな楽しい家族になら
私も加えてもらいたいです。
いいでしょうか?」
「いいもなにも、、いいにきまっているじゃないかあ
即OKだよ!明日から家に来なさい!!」
親父が立ち上がり叫ぶ。
「こら、失礼でしょ!」
親父は母さんに耳を引っ張られ
向こうの部屋に排除されてしまった。
「ごめんなさいね、、
ちょっと父さん叱っとくから
あなたたち部屋に上がりなさい。
2人で話したいこともあるでしょうから。」
母親が気を利かせて
2人を与える男の部屋にあがらせた。
階下では母親の怒る声が響いている。
梓は与える男を見つめる。
「あなた、幸せに育ったのね
大切に育てられ
愛情を注がれた。
お父さん、お母さんを見ればすぐわかる。
あなたが愛情を注がれて育ったのが」
「そうかな?実感ないけど」
「もう、、鈍感ねえ、、
そして、、
あの人たちの、、娘に
私なりたいなあ、、
ホント今日はそう思った、、」
「親父が梓の父親になるってことは、、、
僕はもしかして旦那さんになるのかなあ、、」
「それは分かんないかも、、、」
いたずらっぽく微笑む梓。
「えーそれ、わけわかんないよ!
なんで親父が父親になれて
僕はなれないんだよー」
与える男困った顔で叫ぶ。
梓は思う。
本当にそんな日が来るといいな、、、
この家に、、
お父さんと
お母さんと
与える男
私もいる。
赤ちゃんもいたりして、、、、
楽しいだろうなあ、、、
幸せだろうなあ、、、、、
梓は祈り、願う。
痛烈に願う。
本当にそんな日が来ることを。
両親は大切にしましょう