下手な大阪弁
緊張してしまった。
己の股に伝わる
図太い振動に吉田君は圧倒されてしまった。
バイクの教習を初めて受けた吉田君。
いままでまもバイク好きだったが、改めて魅了されてしまったようだ。
コーヒーを一口。
「ええなあ、、バイク」
呟きを一言。
うっとりとした表情を浮かべ
バイクへ思いを馳せる吉田君。
教習所の休憩所で一人コーヒーを飲む吉田君。
そこへと迫る
人影がひとつ。
ゆっくりと近づいてくる。
「はじめての教習どうだった?
緊張してたでしょ、、、、、」
薫だ。
「まあな、、、
薫はどうやった?」
「途中で教官に教習放棄されたわよ!
教官が私を襲ってきてね、、
その人連行されちゃった!」
吉田君は笑う。
「ほ、、ほんまかあ、
そいつは傑作やなあ、、、その教官って
松岡やろ?」
「うん、、ほんと傑作やった、、」
吉田君と薫は二人で笑う。
2人で笑う声と声が重なり合う。
「こらー俺の薫ちゃんと2ショット
になってるのは誰だー?」
2人が振り向くと松岡が立っていた。
「もう!薫ちゃんが叫ぶから
俺、捕まっちゃたじゃないかあ!!
先輩にものすごく怒られたよ!」
松岡の白い歯がきらりと光る。
「ちわーっす先生!」
「おお吉田君か、こんにちわ!!
教習はどうだい?
順調に行ってる?」
「緊張しっぱなしですわ、、
ついていくのに精いっぱいで、、、」
松岡はさわやかな笑顔を浮かべる。
「所で、、、、君にどうしても聞いておきたいことが
あるんだけど、、いいかな?」
吉田君はコーヒーをもう一口。
「なんすか?聞きたいことって?」
「君も知っての通り、俺は薫ちゃんを狙ってる。
そこでだ、、君に断っておきたいんだけど
俺、、薫ちゃんと付き合っていいかな?」
薫の眉がぴくりと動く。
しかし薫は無言のまま。
吉田君は少し困惑の表情を浮かべたが
すぐ真顔に戻る。
「先生、、なんで俺にそんなこと聞くねん
好きにしたら、、、、ええやん」
とぎれとぎれの言葉でしゃべる吉田君
ふてくされたような声。
松岡は会心の笑み。
してやったりの表情だ
「聞いたか?今の聞いたよね?
薫ちゃん!!
俺も薫ちゃんの彼氏候補に加えてくれよ!
いいよね?」
薫は、、、、
薫は話など聞いていなかったかの様に
休憩所の窓から、空を眺める。
秋の空。
筆で描いたような飛行機雲が空を横切っている。
窓の方を向いたまま薫は口を開く。
「吉田、、、
吉田には別に関係ないことだもんね
松岡さん、、
まずは友達からってことで、、いい?
それに絶対に迫ってきたりしないって
約束して下さい」
松岡は飛び上がって喜ぶ。
「いいよ!!いいよ!
まずは友達から、、そして、、ぐふふ
絶対に迫ったりしないって約束するよ!」
「吉田!あんたには関係あらへんけどなあ
松岡さんと付き合わせてもらいます!!」
「下手な大阪弁やなあ、、、」
吉田君は一言いうと
秋の空を眺めた。
「ええ天気や、、、、、、」
真夜中の雨は嫌いです